ショートショート 381~390
381.あなたと別れたのは、あなたに飽きたわけではなく、この程度にしか愛されない私が可哀想だったからです。
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382.身体が重かったので、友人や知り合いのSNSを切ったのだが、
今度は逆に身体が軽すぎて、
少し自分を持て余している。
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383.親戚の管理しているその小屋には古い幽霊が出る
そこは一面以上が本棚の小さく、しか密な図書館だ
「ここは僕が作ったのさ」
その幽霊は生粋の読書家で、私の本も嬉しそうに読んでいた
だからより沢山の本を友人と読みたくて、この小屋を古本屋にしたのさ
彼?今君の後ろ…
の本を読んでるよ
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384.「すぐに冷えるのね」
冷え性の私の手を握り温めてくれた貴女の熱を、私は一緒忘れないだろう。
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385.落ち込む僕を見ていた彼女が唐突に服を捲り上げた。
露わになった腹部を驚いて見ていると、横っ腹にチャックが付いていた。それを慣れた当然と言うように開け、真っ白な綿を取り出した。
「ふわふわでしょう?貸してあげる」
少し平たくなった彼女はそう言った。
その綿は暖かく、彼女の匂いがした。
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386.それは決定事項である。
この世の理の一ページ目の、しかも一行目に書いてあるものである。
揺るがない。慈悲はない。
平等に確実に、そして残酷に私達が躙り寄り、そして動かず私達を迎えるものである。
『死について』
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387.「ママ、今までありがとう」
おととい亡くなった、息子ののインコが夢に出た。
夢だとどうも理想通りに体を動かせるらしく、生前より遥かに流暢に喋っていた。「夢だからね」との事だ。
夢での彼の声は息子によく似ていた。
ああ、確かにあの子は家族だった。
息子と声を分けた家族だった。
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388.街外れの謙遜な路地にて、長細い生き物を見つけた。
それはまるでロープのように細く狭い室外機の裏を己の道だと言わんばかりに突き進み、手を上品に動かし障害もなんのその。毛並みを日に輝かせ、既に頭はずうっと先に行ってしまった。
猫はここまで伸びるのか。
やっと目の前を尻尾が通った。
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389.最近よく達磨を見る。
中位の真っ赤なそいつは何処にでもおり、だが何故か不気味ではなかった。
仕事で大失敗をした。
トボトボ歩いていると、先に赤い丸が見える。─達磨だ
そいつは突然ググッと横になったかと思えばゴロンとまた向き直った
「元気をお出しよ」
愉快に転がる達磨はきっとそう言った
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390.友人らと福笑いをした。
完成したのは額の端に口、斜めの鼻、左右逆の目が頬についたおかめだった。
四人全員が終わる頃には、私達は重く黙っていた。
全員同じ顔になったのだ。
私は確かに、口を下に付けたはずなのに。
「私の顔ォ」
いつしか増えた5人目が酷くくぐもった声でそう言った。