三代目❤夢小説 『NAOTO編55』
直人はハンドタオルを出してまりあに渡した。
「まりあと一緒にいたら、タオルが何枚あっても足りない」
「…なおちゃん」
「俺と付き合ったら、まりあが泣くこともなくなるけどね」
ピコン…
まりあのスマホが鳴った。
「メール見ていい?」
「碧先生?」
「うん…」
「なんだって?」
まりあがメールを確認する。
「今、どこにいる?…って」
「いつもなの?」
「保育園にいる時以外は大抵そう」
「そっか…」
直人はもう一度まりあの手を取って、ギュッと握りしめた。
「まりあの笑顔をずっと見ていたけりゃ、どうしても超えなきゃいけない壁があるね」
「…なおちゃんとの事あの人が知ったら、なにしでかすかわからない」
「俺がいなかったとしても、なにしでかすかわかんない人だろ?」
「…」
「まりあは自分だけが我慢すればいいって、ずっと一人で耐えてきたんでしょ?」
「どうしてもほっとけなくて…」
「やっぱ彼の事愛してるの?」
「…よくわからないの」
「恋愛とかそういう感情も超えて、まるで義務のような…」
「まりあは彼の恋人じゃなくて、お母さんの代わりになってるんじゃないかな」
「いつもそばにいるのが当たり前。自分の思うようにいかなかったら駄々をこねて暴力を振るう」
「イヤイヤ期の幼児よりタチが悪いね」
普段は温厚で優しいイメージの直人が、あからさまに嫌悪感を表に出している。
女性に暴力を振るうなど、直人にとって考えられないことなんだろう。
自分のせいで、直人にこんな思いを抱かせている。
自分と出逢わなければ…
光に満ちた場所で、ずっと笑っている人なのに…
ピコン♫
まりあのスマホが音を立てた。
「また、碧先生?」
「ううん、違う!母からよ」
メールを読んだまりあの顔色が変わった。
「ん?どうかした?」
「成田空港が悪天候で、私達が乗る予定だった便が欠航になったって…」
「え⁉︎沖縄はこんなに晴れてんのに」
「那覇で今夜泊まれる宿があるか、あたってみるね!」
まりあはそう言うと、スマホで検索し始めた。
「なおちゃん!一部屋(ひとへや)だったら空きがあるって」
「え⁉︎一部屋しか空いてなかったの?」
「有名なアーティストのライブがあって、どこも予約いっぱいなの」
「たまたま一部屋キャンセルが出たって」
少し沈黙があってから直人が口にした。
「一緒でも…いいの?」
つづく