アイディアを”ただの連想ゲーム”にしない方法。クリエイティブ集団「前田デザイン室」の長・前田高志のディレクション術。
日本で活躍する方からお話を伺い、茅ヶ崎を盛り上げるアイディアをいただく「EKIUMI SPECIAL TALK」。今回は元・任天堂のデザインチームリーダーであり、オンラインサロン「前田デザイン室」を運営する前田高志さんにご登場いただきます。輝かしいキャリアと実績がありながら、40歳を過ぎて新人漫画家になられた前田さんのお話を、ぜひ最後までお読みください。(全3話)
■東京以外の現場から生まれたオンラインサロン
――― 本日はどうぞよろしくお願いします。
前田 よろしくお願いします。
――― まずは前田さんがやられているオンラインサロン「前田デザイン室」について簡単に教えていただけますか。
前田 もともとの話をすると、「箕輪編集室」という幻冬舎の箕輪厚介さんのオンラインサロンがあるんですね。
――― 箕輪さんはこの出版不況の中でも売れる本を出している編集者の方ですよね。
前田 そうです。箕輪編集室にはいま1,000人以上が入っていて、多くのクリエイターが所属しているんですね。
そのなかでぼくは「デザイン」を圧倒的にやったんです。
そこで「デザインといえば前田高志」みたいになれて、こういうプロジェクト型のオンラインサロンを自分でもやろうと思い「前田デザイン室」をつくりました。
↓前田デザイン室(参照元)
――― オンラインサロンから、別のオンラインサロンが生まれたんですね。
前田 結構そういう流れはあるんですよ。
箕輪さんのも、もともとは堀江さんの「HIU(堀江貴文イノベーション大学校)」からの流れがあったものなので。
――― 2018年12月に公開された宇野常寛さんの「HANGOUT PLUS」では、堀江さんが世に出した「多動力」は、前田デザイン室が成功することがその証明になるというお話がありましたね。
前田 あれは嬉しかったですね。
↓〈HANGOUT PLUS〉前田高志×宇野常寛
前田 堀江さんの「HIU」から箕輪さんの「箕輪編集室」という流れを経て、ぼくの「前田デザイン室」が生まれた。
それが大阪という土地から、しかもデザイナーというクリエイティブの現場から生まれたというのが重要なポイントということで。
――― はい。
前田 インターネットって場所に左右されないはずなのに、結局東京が主戦場になっているじゃないですか。
そこに一石を投じるようなことができたら良いと思っています。
■オンラインサロン×地域活性
――― オンラインサロンって場所を問わないというのが一つのメリットじゃないですか。
前田 うん、ノーボーダーですね。
――― 場所を問わず前田さんに共感している方が集まっているなかで、逆に地域プロジェクトみたいなものってあったりしますか。
前田 ありますよ。大阪の梅田に「お初天神 裏参道」っていうすごいところがあるんですけど、そこでは美味しいお店しかお店を出せないんですね。
――― めちゃくちゃシビアな通りですね(笑)
前田 そこを運営している方から前田デザイン室に「お客さんをもっと楽しませたい」っていう相談をいただいて。
そこで普通なら飲食店なので「食」をどう見せるかっていう話になりがちなんですけど、ぼくはそこに違う要素を入れこんで面白くしたいと思いました。
――― 前田さんらしい発想ですね。
前田 ぼくがというか、裏参道の運営の人と価値観が近くてドンドン「こんなのどうですか?」って言ってくれるんですよ。
たとえばパンフレットだったらゲームの攻略本みたいするとかね(笑)
――― いいですね(笑)
前田 もうこれは仕事じゃないんで、むちゃくちゃやっていいですよ。
そういう前提だからこそ面白いものができるんじゃないかっていう試みなんで。
――― なるほど。クリエイターの遊び心を開放できる場が地域にあれば、すごく色んな可能性がありそうなお話ですね。
■目的がないデザインはただの連想ゲーム
――― ところでこの「エキウミ」は茅ヶ崎のローカルメディアなんですけど、茅ヶ崎にはいらしたことありますか。
前田 茅ヶ崎は友だちがいるので、行ったことがあります。
海岸沿いの道を走っている時のあの異国感っていうか、「ここ日本なの?」みたいな感じがすごくいいですよね。
茅ケ崎って、日本のハワイじゃないですけど、日本の都心から一番近い南国だと思います。
――― まさに茅ヶ崎はホノルル市と姉妹都市だったりします(笑)
前田 やっぱりサザンオールスターズさんの存在もあるので、海のイメージですよね。
――― 前田さんから見て、茅ヶ崎はどうデザインしたら面白くなりますか。
前田 やっぱり海というのはキーワードになりそうだけど…ただ、こういうのって連想ゲームだけで街をデザインしようとすると結構ひどいことになったりするんですよ。
――― 連想ゲームですか。
前田 「AといえばBだから、とりあえずBの絵を描こう」みたいな中身のないやつですね。
オンラインサロンの運営でもそうなんですけど、みんなが好き勝手デザインをし始めちゃったら全然良いのって生まれなくて、どこかでディレクションは必要なんですよね。
まず「どうしたい」っていう目的や感情があるからデザインができる。
――― なるほど…そういう意味でいえば、雄三通りという駅前通りがありまして。そこは車や自転車が多いので安心して通れる道にしたいっていう思いがあります。
前田 車や自転車が多い…つまり、それは歩行者目線ですね。
たとえば「散歩したくなるような道にしたい」っていうことであれば、「自然いっぱいの木漏れ日」とか「清々しい朝の散歩」みたいなのをデザインすると良いかも。
――― まさに「歩きたくなる道」というのは私たちの中でも出てきたキーワードです。
前田 いいですね。そういうコンセプトが決まれば、あとはそこに茅ヶ崎らしさ、それこそ海とかを絡めていくと「らしく」なっていきますよね。
「〇〇散歩道」みたいなネーミングをしたらより理想に近づけるかも知れないとか、歩道に砂まいちゃってビーサンで歩きたくなる道にするとか(笑)
――― (笑)
前田 さっきの梅田の話もそうですけど、面白がることで化学反応を起こせるような、そういう実験ができると地域も面白くなりそうですよね。
ちなみに前田デザイン室では「マエボン」という雑誌をつくったんですけども、これも9割が本づくり初心者という中で挑戦したんですね。
そうしたら銀座の蔦屋書店さんのような素敵なところに置いてもらえるという面白いことになっていて。
↓マエボン(参照元)
――― はい。私も買いましたが、遊び心の塊のような本でした。
前田 あれはもし仕事だったら絶対できないことだと思っているんです。
ぼくは前職の任天堂でもいろいろ挑戦はさせてもらいましたけど、やっぱりオンラインサロンは全然別の挑戦の仕方ができて面白いですよ。
地域のデザインも、「目的があること」と「面白がること」の両面を持ってディレクションできると良いかも知れませんね。
――― とても勉強になりました。ありがとうございます。次回はかつて任天堂でデザイナーをされていた頃のお話を中心に伺いたいと思います。
(次回につづく→「良いデザインはある。」任天堂に14年半勤めて見つけた前田高志の”プロの条件”。)
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【EKIUMI SPECIAL TALK】前田デザイン室の前田高志さん
・第1話 アイディアを”ただの連想ゲーム”にしない方法。クリエイティブ集団「前田デザイン室」の長・前田高志のディレクション術。
・第2話 「良いデザインはある。」任天堂に14年半勤めて見つけた前田高志の”プロの条件”。
・第3話 デザイナーあらため“41歳新人漫画家”の前田高志が遺したいメッセージとは。
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。東海岸商店会の公式サイトの運営や、ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。
▼編集アシスタント 権藤勇太
エキウミインタビュー担当。平日は都内で法人向けの業務改善提案を行う営業マン。休日は緑に囲まれた茅ヶ崎で畑をいじったり、キャンプしたりフットサルをしたりのんびり生活をしている。消防団に入ったことをきっかけに、自分が使うお金がどこに流れて回っていくのか興味をもち商店街の活性化に2018年参加。
▼動画編集 野口裕貴
「エキウミ」の動画・文章編集班。Web関連企業にてエンジニアとして従事。技術講師として教育事業も行う。現在は都内在住だが、何らかの形で茅ヶ崎に拠点を置きたいと思っている。