凸と凹「登録先の志」No.34:門脇真斗さん(NPO法人Since 理事)
学校以外の選択肢を知らず、どれだけ苦しくても行くしかなかった
Sinceの活動を始めた原点として、私自身が学校が苦手だったということがあります。人間関係や自律神経系の不調等、さまざまな苦手の要因がありましたが、学校には通っていました。学校以外の選択肢を知らなかったので、毎日どれだけ苦しくても行くしかありませんでした。
フリースクールという選択肢を知ったのは、大学に入ってからでした。学校が苦手だった中で、教育学部に入学しました。それは、高校までにいろいろな職業のことを学ぶ機会が乏しく、得意だった英語を活かせたらと思い、人に教えることを考えたからでした。
大学でSinceを一緒に立ち上げたメンバーたちと出会いました。それぞれが不登校を経験していたり、学校に苦手意識を持っていました。実体験から、学校は大きな学ぶ場の一つではあるけれど、フリースクール等の学校以外でも学べる場が当たり前にあることが必要だと思いました。
ともやん(現代表の麻生)から呼びかけがあって、学生の時にSinceを立ち上げ、フリースクールを運営しています。就職して働きながら活動を続ける選択肢もありましたが、仕事に時間を割かれて、メンバーの気持ちも冷めてしまうだろうと思い、卒業後も他に就職せずにSinceの活動を続けることにしました。
社会との接点がなくなり、孤立してしまうのは子どもも大人も同じ
不登校の子どもの中には、不登校からそのまま家に引きこもってしまい、社会とのつながりを断絶してしまう子もいます。学校に通っていない子は社会との接点がなくなり、孤立してしまいがちです。私たち大人も、例えば会社に勤めている人がある日突然、仕事や人間関係等が原因で心身の不調をきたし、会社に行けなくなってしまうことがあると思います。そうすると、社会との接点である会社から離れ、孤立してしまうのは同じではないでしょうか。
学校に行っている子も行っていない子も、フリースクールに通っている子も通っていない子もいますが、共通しているのは、将来はどの子も社会に出て、これからの社会を担っていく人材であるということです。一人の子ども、一人の人間として、社会の中でより支えの少ない子どもたちにアプローチしていく必要があると思っています。
年々増え続ける不登校児童生徒の受け皿が足りない
不登校の児童生徒は年々増加していて、最新のデータでは27人に1人が不登校となっています。不登校になることは特別なことではなく、日常で起こりうることです。不登校になることが問題なのではなく、学校というコミュニティから離れ、孤立してしまうことが問題だと捉えています。孤独感につながるし、引きこもりや、最悪の場合は自殺等もありえるからです。不登校の子どもたちと社会との接点が必要だと考え、Sinceでは「ナイトステイ」という、誰もが無料で参加できるセーフティーネットとなる居場所をつくっています。
次の課題は社会的自立です。不登校の子どもたちに対して「学校に行っていないけれど、将来は大丈夫?」という声をよく耳にします。学校だと職業体験等の将来の自立に向けたプロセスが確保されていますが、フリースクールだと学校に比べて体系化されていないことも多いため、フリースクールにおいても体験できる機会が当たり前に確保されていることが、自立の側面からは必要だと考えます。
不登校の子どもが年々増えている背景には、社会全体として学校以外の場が増えてきていることも関係していると思います。フリースクールやオルタナティブスクール等の選択肢が増えており、不登校の増加は必ずしもネガティブなことではないと思います。一方で、子どもたちの受け皿はまだまだ足りていません。教材や教具等を国や自治体からの税金で賄える学校と比較すると、フリースクールを運営するNPO等は自分たちで財源を確保するしかなく、限界があります。その限界が子どもたちの体験機会の減少につながってしまうため、地域のみんなで支えてもらいたいです。
取材者の感想
学生時代に団体を立ち上げ、卒業後そのまま活動を続けることに不安はなかったのかお聞きすると、「不安はあったけれど、若気の至りがあったと思う。若いからこそできること、今だからこそできることをやろうと思った」とおっしゃっていました。
学校という大きな居場所をなくした不登校児童生徒が直面する、社会との接点の喪失や体験の機会の乏しさに危機感を持ち、そこに向き合い続けていらっしゃるのは、子どもたちの成長が待ったなしだからだと思います。メンバーのみなさんの覚悟を聴いて、応援したいと思う方はたくさんいらっしゃるのではないかと感じました。(長谷川)
NPO法人Sinceは、凸と凹「マンスリーサポートプログラム」の登録先です。