政治資金規正法改正法案について
規制ラッシュ。
6月に改正したばかりの政治資金規正法の再改正案が与野党から9本も衆議院に提出された。10月の衆議院選挙では国民民主党が躍進する一方で自公政権が過半数割れとなり臨時国会では少数与党となっている。自民党には国民が厳しい審判を下したということ。その一要因になったのが自民党安倍派を中心とした裏金疑惑。裏金とは人聞きの悪いこと、要は収支報告書への不記載が明るみに出たことを言う。衆院選での自民党の大敗から政治資金に対する規制が物足りないと多くの国民が考えているのだと各党が認識しての反応であろう。
衆議院に提出された政治資金規正法関連の改正案9本のうち3本が可決し衆議院を通過した。ほとんどの改正案に明記されていた政策活動費の廃止について単独の改正案となった立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、無所属クラブ、日本共産党、参政党、日本保守党による案には自民党、公明党、共産党、れいわ新選組、参政党、日本保守党が賛成した。
改正案には「政治団体の経費の支出は、当該政治団体の役職員又は構成員に対する渡切りの方法によっては、することができないものとすること。」と「政治資金の収支の報告に当たっては、真実の記載をしなければならず、収支の状況を明らかにしないようにするため支出の相手方として政治団体の役職員又は構成員を記載する等政治活動の公明の確保に支障を及ぼすような記載をしてはならないこと。」と明記された。政策活動人は政党が議員に支出する政治資金。党での役職に応じて党勢の拡大や政策立案、調査研究の目的で使われる。政治資金規正法で政策活動費の定義がなく、具体的に何に使ったのかを公表する義務がない。そのことからブラックボックス化していた。6月の同法の改正では項目ごとの使いみちや支出した年月を10年後に公開することとなっていたことから10年間はブラックボックスのままであった。本法案が成立すると政策活動費を充ててした支出の項目別の金額及び年月の収支報告書への記載に係る規定及び政策活動費の使用状況の公開等に関する制度の検討に係る規定を削除することになりブラックボックスに入ってしまう政党の渡切りの支出もなくなる。
自由民主党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、公明党、参政党が共同で衆議院に提出し可決した政治資金規正法改正案では外国人によるパーティー券の購入禁止や収支報告書をデータベース化して検索しやすくする制度などを規定している。また、政党交付金の交付の決定を受けている政党に基準日に所属する衆議院議員又は参議院議員が政治資金又は選挙に関する犯罪に係る事件に関し起訴された場合に議員が当該事件に関し刑に処せられたときは当該額の政党交付金の交付をしないこととする制度を設けることが規定されている。さらに、収支報告書のオンライン提出が義務化された。この法案にはれいわ新選組、日本共産党、有志の会、日本保守党が反対した。れいわ新撰組は政治資金パーティーの開催自体を禁止するべきだとしていることから反対。日本共産党は「日本法人で5年以上上場している外資系企業」を禁止の対象から除外し温存したことを批判し反対。共産党は政党交付金を受け取っておらず政党交付金の廃止こそが腐敗政治を一掃すると主張している。日本保守党は政治資金パーティは必要とする立場であることのみ主張してきたが外国人によるパーティ券購入も肯定していたことが今回初めてわかった。立憲民主党が主張していた企業、団体献金の禁止を含む法案は令和7年3月まで特別委員会で協議を続けて結論を出すことになった。
3本目は国民民主党と公明党が提出した「政治資金監視委員会等の設置その他の政治資金の透明性を確保するための措置等に関する法律案」である。この法案には共産党、れいわ新選組、日本保守党の3党が反対した。委員会は国会議員関係政治団体の収支報告書の記載の正確性に関する監視を行うこと、政治資金の制度に関する提言を行うこと、それらの事務を行うため必要な調査及び研究を行うことを目的としている。両院合同協議会の推薦に基づき両議院の議長が両議院の承認を得て任命することになる。共産党は監視委員会の設置は国民の監視を妨害するものだとし、「政治資金を国民の不断の監視と批判の下に置く」ことが趣旨に正しく沿っているとして反対している。れいわ新選組は泥棒(自民)に泥棒(自民)を監視させる人を選ばせる制度だとして反対し、国家行政組織法第3条に基づく委員会の設置を求めている。いわゆる3条委員会とは国家意思を決定し、外部に表示する行政機関であり、具体的には、紛争にかかる裁定やあっせん、民間団体に対する規制を行う権限等を付与されている機関である。日本保守党の反対理由は不明である。
最後に、公職の候補者がその選挙区に政党支部を設置する場合、支部代表者からの当該選挙区の候補者の政治活動に寄付する場合は寄付控除や特別控除の対象とはならない。
*企業・団体等からの献金についての結論を出さなかった経緯と事情を示されたい。
*外国法人からの政治資金パーティ券の対価の受け取りを禁止する際に、日本法人で5年以上上場している外資系企業を除外した事情を示されたし。現在、過去を問わず禁止とすればシンプルでわかりやすい。
*施行を来年7月から8月に変更する必要性について。参院選で政策活動費を使用したいがためではないのか。
参考
政治資金規正法等の一部を改正する法律案に対する修正案
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/syuuseian/13_8912.htm
衆法 第216回国会 10 政治資金規正法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案
国民民主党案
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21605010.htm
政治資金監視委員会等の設置その他の政治資金の透明性を確保するための措置等に関する法律案
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21605011.htm