枯凋性~落ちない枯葉
https://yamaburabura2018.sakura.ne.jp/ForestInstractor/KochouSei/KochouSei.html 【枯凋性~落ちない枯葉】より
■ 枯葉と落葉を考える ■
冬に森を歩いていると、ふっと違和感を感じる時がある。 愛知県は気候区分だと暖温帯になり、常緑樹と落葉樹が混生している。
なにげない山道で、緑を眺めていると、景色に違和感がある時がある。時々茶色が混ざっている・・・枯葉だ。
そう、常緑樹に枯葉のついた落葉樹が混ざって、同じ目線にあると、違和感を感じるということ。
枯葉だが落葉していない状態を「枯凋性(こちょうせい)」という。
草木が「枯れて凋(しぼ)んで勢いがなくなる」こと。
クヌギの樹、ブナ科コナラ属。本州から九州の暖温帯、低地から丘陵地に普通。
葉っぱが特徴的で、細長く鋸歯が荒々しい。クリやアベマキもこんな感じ。
完全に枯れているが落葉していない。
これだけ、たわわに枯葉が枝にあると違和感があるわけだ。
一般的にいう、枯凋性の点は3つ。
(1)冬の寒風や潮風から冬芽を守る。(樹木医の尾関さんにこれを教えてもらった)
(2)シカなどの枯食動物に冬芽を食べられないようにする。冬芽と一緒に食べるとマズイらしい。食べたことはない(笑)
(3)冬に樹上に保持して、春に落葉させると葉の分解効率が高まり、栄養や塩分吸収に有利に作用する可能性がある。
盛岡城跡でカシワの黄葉を見たことがある。
その後、飛騨の位山で「落ちないカシワ葉」を見た!
カシワ(柏)、ブナ科コナラ属。北海道~九州の温帯に自生、海岸から山地の明るい林。特に北海道に多い。
黄葉しているのに、足下に落葉していない。
不思議な木だなアとおもしろがっていたが、この樹は枯凋性の代表らしい。
新潟に柏原市という街があるが、どうもこの樹から来ているようだ。
日本海からの潮風、塩分から冬芽を守っている訳だ。
柏餅のカシワはこの葉っぱだが、芳香があり、新芽が出るまで冬を通して落葉しない、「縁起の良い葉っぱ」ということで関東地方などで使われたのだそうだ。
なるほど、「代々つながる」という意味を見出したのか、なるほど、なるほど、実に面白い。
今時なら、持続可能な社会(=SDGs)の世界観というわけか。
普段はあまり気が付かないが、冬だからころナラガシワを発見!?した。
ナラガシワ、ブナ科コナラ属。本州から九州の主に温暖帯に自生。コナラやアベマキと混生する。
葉っぱはミズナラに似ていたが、ここはブナ林ではなく、常緑樹林帯でコナラもある・・・ということでナラガシワ。
それにしても、見事!?に枯葉が残っている。
「ブナ科、カバノキ科、クスノキ科などにその傾向がみられる」
「カシワは葉を落とさない、アベマキは秋早く落とす葉と春まで落とさない葉に分かれる、コナラはその中間」(日本植物生理学会QA2012年)
科学的な理由は、離層の形成か早いか遅いか、維管束の構造によるということ。
離層の形成は樹種によるし、維管束の構造は樹種と老木と若木でも違う。
当然、若い方が維管束は丈夫だ。写真のナラガシワは若い。
クスノキ科で有名なのは、ヤマコウバシ。クスノキ科クロモジ属、関東から九州の温帯に自生する落葉小高木。
山香・・・と書いてヤマコウバシ。枝葉を折ったり揉み解すとショウガの香りがする。秋にはオレンジ色の紅葉が美しい。
最大の特徴は冬に葉が落ちない。
「落ちない」ことにかけて、受験生用に葉っぱをお守りとして使われる。
確かに山を歩いていると見事に残っている。
なぜに、樹種によってそんな特性がでるのか!?
「これらの植物の祖先は常緑性だったので,その性質がこのような型で保たれたまま温帯域まで分布をひろげて種分化をとげた。」(大阪大学 寺島教授 2009年)
むむム・・・本当か
もともとは常緑性だった、それが何故、熱帯?から四季のある温帯域に広がってきたのか、気候変動で高温と低温時代を繰り返す自然史と関係があるのか
なぜなぜ? いろいろ知りたくなる。
きっと億年単位の進化の歴史だろうから、自然史や考古生物学の世界になるのか。
分かれば分かるほど、知りたいことが増えてきて、夜も眠れなくなる(笑)
https://www.alpico.co.jp/shikinomori/news/2021/11/post-603.php 【落葉しない落葉樹】
四季の森だより
(前略)
四季の森周辺は木々の葉がだいぶ落ちて、残すは遅く色づいたモミジなど少し残っているだけです。スタッフも落葉の清掃に忙しい毎日です。
紅葉が一番遅かった駐車場のモミジも色褪せて葉も落ちてきました
上を向くと、風で飛ばされた葉がシャワーのように落ちてきますそんな中、茶色くなった葉を落とさない木があります。
葉がしっかり残ったままですこれはどうしたことでしょうか。
樹木の落葉現象は葉の光合成能力が低くなるため起こります。
夏緑性の樹木の葉は、低コストで薄いため長期間の光合成能力を維持できません。
夏の期間の光合成能力はとても高いのですが、葉が薄いのですぐに能力が低下し、寿命が短くなります。一方常緑性の葉は分厚くて、光合成能力は低いものの、葉の寿命は長くなります。
木は、葉柄の基部に離層を形成することで葉を落とすのですが、離層は、日照時間が短くなり葉への水分供給量が少なくなることで形成されます。
その他、大気の環境条件や植物ホルモンの供給量などでも離層が形成され、葉が落ちていきます。しかし、葉が褐色になるのになかなか落葉しない樹というのがあって、コナラ亜属(コナラ・クヌギ・カシワなど)がこれに当り、晩秋の森の中で、茶色の葉を残しているのが観察できます。
センター横の「からまつの小径」にて コナラでしょうか
コナラ属の葉柄の基部には、この時期になっても緑色の生きた組織が残っているため
離層が形成されないので、落葉しにくく、多くの葉が枝に残ったままになっています。
1月~2月になりようやく離層が形成されると、水分や養分の輸送パイプが切断されるため、葉が落ちていきます。
つまり、離層の形成が他の木より遅く、冬の間はまだ葉が落ちないといった感じでしょうか。
葉が落ちないのは、コナラ属だけでなくても栄養成長が盛んな樹齢の若い木、日当たりの悪い木などでも見られることもあるようです。
葉が落ちない性質は、「枯凋性(こちょうせい)」と呼ばれます。
離層が作られにくい理由は、先祖が常緑性だったためではないかとも言われています。
午後も穏やかな陽気が続きました。
販売管理センター 13℃ 15:30現在
こけもも平(標高1500m)観測データ 8.9℃ 15:30現在
明日は、夕方から天気が下り坂となるようです。