プライマリーバランスについて
かねがね金がねえ。。
石破政権が岸田政権時代の財政政策を継承しているとすると令和7年度には基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を実現する路線を堅持するということになる。現在の見通しによると黒字化を達成できる見込みである。その背景として、企業の好業績や物価高を背景に税収が増え、社会保障費抑制などの歳出改革が進むことなどが挙げられる。達成幅は8000億円程度。GDPの0.1%相当に当たる。
これまで特例公債法を繰り返し制定することで先延ばしを続けてきたが、本来は財政法で赤字国債の発行は禁止されている。太平洋戦争末期に当時の政府が赤字国債や戦時国債を濫発したことで過度のインフレを招いたことから財政法第4条で赤字国債の発行が禁止された。第5条では日本銀行に引き受けさせることも禁止している。よって、公債は市場を受け皿とした上で日本銀行が長期国債を買い入れている。財政法の規定には但し書きで例外的に公共事業費等の為の財源調達に国債発行を認めている。建設国債がこれにあたるが建設国債を発行しても尚財源が不足する場合に公債を発行する為の特例法が特例公債法である。
現在、コロナ禍明けの輸入物価高、コストプッシュ型インフレに見舞われている。物価高で国民生活は苦しめられるが税収だけは上振れて好況を博している。実質賃金は賃上げが物価高に追いつかずマイナスで推移している。それだけではない。賃上げに伴い税額も上がる。累進課税制度によって所得税も上がる。物価高と累進課税分が賃上げ以上になっている、所謂ブラケットクリープの状態に陥っている。インフレ局面では税額の調整は必須である。岸田政権下ではこれを放置したことから実質的に増税している状態に陥っている。
現状を踏まえて手を打つべきは積極的な財政出動に方針を転換するべきである。基礎的財政収支の黒字化などという何の意味も成さない呪縛を解消するべきだ。プライマリーバランス(PB)の健全化は支出を税収の範囲内に縛ることを意味しており、歳出を制限することになる。歳出の制限は明らかなデフレ政策であり国民を貧困化させる。デフレは財政を悪化させるので負のスパイラルに突入してします。市場のマネーが減少すると税収だけでなく企業の収益の悪化も招く。消費の冷え込みは企業の投資意欲を削ぎ生産性が向上せずGDPも落ち込む。諸悪の根源であるPBの健全化など意識すべきではない。なにより、今は戦後でも戦中でもない。財政法制定時とは経済環境が大いに違う。特例公債法の延長を主張しているのではない。財政法第4条自体が不要である。
アメリカも20年以上、PBは赤字である。積極的な財政出動を維持して経済成長を続けている。イギリスも同様に20年以上、赤字が続いている。それでもコロナ禍以外は経済成長を維持してきている。イタリアはPBの黒字を維持してきたことで経済成長は20年にわたり抑制的であった。日本はPBの黒字化はしないものの緊縮財政を続けてきた結果、他の先進国の経済成長から取り残される結果となった。国債残高を人口で割って「国には国民一人当たりの借金がこんなにもある」なんて的外れな危機感を煽り、国民の貧困化を進める国家運営を行っているのは日本くらいのものだ。さしあたり、国の借金ではなく政府の負債である。そして、政府の負債は国民の資産でもある。
参考
プライマリーバランスとは 財務省
https://www.mof.go.jp/zaisei/reference/reference-03.html
世界の政府債務残高対GDP比 国別ランキング・推移 Global Note
https://www.globalnote.jp/post-12146.html
建部正義著「国債問題と内生的貨幣供給理論」中央大学学術リポジトリ(出典)
全国銀行協会 作製「図説 我が国の銀行」(出典)
L Run Dull Rei著「現代貨幣理論入門」東洋経済新報社(参考)