涅槃図の絵解き③
阿難(あなん)尊者
阿泥樓駄(あぬるだ)尊者
阿難(あなん)尊者は、お釈迦様の十大弟子の一人です。画面中央よりやや左下、宝台の下で倒れこむようなお姿で描かれています。
出家後、お釈迦様の侍者として25年間の長きにわたりおそばでお仕えした方であり、お釈迦様から最も多くの教えを聴き、またよく記憶していたことから、「多聞第一」と称されます。そのため、多くの経典に彼の名前が見られます。
阿難尊者は浄飯王の弟(甘露飯王)の子であり、お釈迦様とは従兄弟に当たります。温和な性格で、眉目秀麗と伝えられ涅槃図中にも美しいお顔立ちで描かれています。
お釈迦様のご臨終に接し、悲しみのあまり気を失ってしまいました。そんな阿難尊者に冷水をかけ助け起こそうとしているのが、お隣にいる阿泥樓駄(あぬるだ)尊者です。
阿泥樓駄尊者は、お釈迦様の十大弟子の一人であり、「涅槃図」の上方で雲に乗った摩耶夫人を先導している阿那律尊者とは同一人物です。このように時間的に異なる二つの場面を一つの画の上に同時に描く手法を「異時同図法」といいます。
阿泥樓駄尊者は嘆き悲しむ阿難尊者にこう言われたといいます。
「阿難よ、たとえ仏は涅槃されても無上の宝法がある。仏弟子は精進して衆生を救い、如来の恩に報いようではないか」
この言葉を聞き、阿難尊者は正気に戻ることができたといいます。
迦葉童子(かしょうどうじ)
迦葉童子は画面の中央やや下、お釈迦様の宝台の下に描かれています。
双髻の童子の姿で十二歳といいます。涅槃経の会座で悟りを開きました。また、お釈迦様の問答の相手を務め、涅槃経を受持する大役を担っています。
十大弟子の一人、迦葉尊者と混同されがちですが別人です。
<参考文献>
WEB版新纂浄土宗大辞典
WEB版 絵解き涅槃図 - 臨黄ネット
『よくわかる絵解き涅槃図』 竹林史博著 青山社
心行寺の涅槃図は縦270センチ×横160センチの絹地に肉筆で描かれた巨大な涅槃図です。軸心に延宝七年二月十二日(1679)十一世弁誉保残和尚代に、「芝・田町・札乃辻・表具師庄兵衛」と記録があります。