ZIPANG-2 TOKIO 2020「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産推薦に係る推薦書 ユネスコへ提出!
はじめに 記事をお届けするに当たり、先の北海道における地震災害、関西地方ならびに中国四国・九州地方における大雨・地震災害で未だ行方不明、並びに亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
推薦地を含む琉球列島は、九州と台湾との間に位置し、北東から南西方向に弧状につながる長さ約 1,200 ㎞の島嶼群です。推薦地である「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、中琉球の奄美大島、徳之島、沖縄島北部、南琉球の西表島の4つの地域を構成資産とする「連続性のある資産」として、世界自然遺産への登録を目指しています。
本資産の主要な価値は、琉球列島の地史を反映して大陸からの隔離期間の異なる中琉球と南琉球において独自の生物の進化、種分化が起きている過程を明白に表す顕著な見本になっている点です。また、推薦地は、イリオモテヤマネコ(CR)、ノグチゲラ(CR)、アマミノクロウサギ(EN)、ヤンバルクイナ(EN)など IUCN レッドリストの絶滅危惧種 88 種を含む陸生動植物にとってかけがえのない生息・生育地となっており、生物多様性の生息域内保全にとって極めて重要な自然の生息地を包含した地域となっています。
推薦地が位置する奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島はいずれも小規模な島嶼であり、有人島として住民生活が営まれています。固有種・希少種等が生息・生育する環境と住民生活や産業活動の場が非常に近接し、また一部は重複する場合もあるが、地域の自然資源を利活用した文化や産業が育まれており、その中で顕著な普遍的価値が維持されてきたことが特徴でもあります。
したがって、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産推薦地の保全・管理に当たっては、地域社会との連携や持続可能な利用との両立が重要となります。また、「連続性のある資産」を構成する4つの地域は地理的に分離しており、2県 12 市町村という多くの行政区にまたがっていることから、個々の構成資産の保全・管理を連携して行うための管理体制の確立も不可欠です。
このように、世界的にみても類いまれな価値を有する奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の自然環境を人類共通の資産と位置づけ、地域特性を踏まえつつ、より良い形で後世に引き継いでいくため、ここに奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産推薦地包括的管理計画を策定。
環境省・林野庁・文化庁、鹿児島県・沖縄県、奄美市・大和村・宇検村・瀬戸内町・龍郷町、徳之島町・天城町・伊仙町、国頭村・大宜味村・東村、竹富町 。
Introduction
The nominated property is part of the Ryukyu Chain to the south of Kyushu Island of Japan, a chain of islands extending from northeast to southwest in an arc over a length of approximately 1,200 km. The natural property, “Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island”, is nominated for inscription on the World Heritage List as a “serial property” consisting of four component parts: Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, and the northern part of Okinawa Island of the Central Ryukyus and Iriomote Island of the South Ryukyus
.The essential value of this property consists in being an outstanding example representing unique biological processes in the evolution and speciation on the Central Ryukyus and South Ryukyus, which have different periods of isolation from the continent, reflecting the geological history of the Ryukyu Chain. Also, the nominated property contains extremely important and significant habitats for in-situ conservation of biological diversity, providing irreplaceable habitats for terrestrial species of flora and fauna, including 88 endangered species on the IUCN Red List such as the Iriomote cat (CR), the Okinawa woodpecker (CR), the Amami rabbit (EN), and the Okinawa rail (EN).
Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island, which constitute the nominated property, are all small islands, inhabited by people who have been leading their daily lives up to the present. The natural environment inhabited by endemic species, endangered species, and so on are extremely close to, or in some cases partially overlap with, places of people’s daily life or livelihoods. Yet, this has given rise to cultures and livelihoods that harness local natural resources, and it is characteristic of this property that the Outstanding Universal Value has been maintained therein. Therefore, it is important to ensure both coordination with local communities and sustainable use for the conservation and management of Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island, which are collectively nominated as a natural property for inscription on the World Heritage List.
In addition, the four regions comprising this “serial property” are geographically separated from one another, extending over many administrative territories involving two prefectures and 12 municipalities. Therefore, it is essential to set up a management mechanism to ensure coordinated conservation and management among individual component parts.
“The Comprehensive Management Plan for Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the Northern
Part of Okinawa Island, and Iriomote Island, Nominated for Inscription on the World Heritage List”
(hereafter referred to as “this plan”) is hereby presented to recognize the natural environment of
globally outstanding value on Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the northern part of
Okinawa Island, and Iriomote Island as heritage of common importance for all humanity and to pass it
on to future generations in even better shape in light of specific local characteristics.
管理体制
4地域にまたがる世界自然遺産推薦地の適切な保全・管理を進めるためには、関係する行政機関(以下「管理機関」という。)や地元団体等が協力して取組むことが重要です。そのため、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産推薦地においては、連絡調整、合意形成の場として、地域連絡会議や4地域ごとの地域部会を設けるとともに、各事業の推進等にかかる共通の目標や管理方針を示した「包括的管理計画」、具体的な取組内容を定めた「行動計画」を作成し、管理機関や地元団体等が十分に連携できるような管理体制を整えています。また、取組の推進に際しては、有識者からなる科学委員会や地域ワーキンググループ(奄美ワーキンググループ、沖縄ワーキンググループ)を設置し、科学的な知見からの助言を得ることとしています。
推薦地の特徴
世界遺産に推薦された地域は、奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島の4地域です。推薦地の特徴は、次のとおりです。
推薦地は、日本列島の南端部に位置する琉球列島のうち、中琉球の奄美大島、徳之島、沖縄島北部と、南琉球の西表島の4地域で構成され、面積37,946haの陸域です。
推薦地は黒潮と亜熱帯性高気圧の影響を受け、温暖・多湿な亜熱帯性気候を呈し、主に常緑広葉樹多雨林に覆われています。
琉球列島は、新第三紀中新世中期以降に生じたフィリピン海プレートのユーラシアプレート下方への沈み込みによる沖縄トラフの形成・拡大と、それに伴う激しい地殻変動による隆起や沈降で形成されたと考えられています。
そのため、琉球列島は島嶼間の深い海峡で北琉球、中琉球、南琉球に分断されました。その後、第四紀更新世の初期以降の海面変化により、近隣島嶼間で分離・結合を繰り返し、このような地史が、中琉球と南琉球の陸生生物に種分化と固有化の機会をもたらしました。また、中琉球と南琉球は大陸からの距離や分離時期の違いにより、陸生生物相の種分化と固有化のパターンが異なります。
推薦地は幅広い生物群で特に多くの固有種・亜種が生息する代表的な4地域で構成されており、これらを併せて俯瞰することで琉球列島全域の地史を反映した種分化・進化系統の多様化の進行中の過程を理解することができます。 また、推薦地は維管束植物1,808種、陸生・陸水性脊椎動物740種、昆虫類6,148種、淡水甲殻十脚類47種、IUCNレッドリスト記載の絶滅危惧種88種にとってかけがえのない貴重な生育・生息地なのです。
このように推薦地は、長期の隔離を伴う大陸島としての形成史を反映した進行中の種分化と固有化の過程の好例であり、多くの固有種や国際的な絶滅危惧種の生息地など貴重な自然環境を有する地域であります。
琉球列島の古地理と生物の動向の推定図
A:中期中新世以前(~1,163 万年前以前)
推薦地を含む現在の琉球列島は大陸の東端に位置し、大陸と共通の陸生生物相を有していたと考えられる。
B:後期中新世~更新世初期(1,163 万年~約200 万年前頃)
沖縄トラフが拡大を開始。トカラ海峡、慶良間海裂が形成される。後期中新世(1,163 万年前~533 万年前)には中琉球が大陸から分断されアマミノクロウサギ、トゲネズミ類、トカゲモドキ類、ハブ、ハナサキガエル類などの陸生生物相が、また、鮮新世(533 万年前~258 万年前)に南琉球が台湾・大陸から分断され、ヤエヤマセマルハコガメやキシノウエトカゲ、サキシマハブ、ハナサキガエル類などの陸生生物相がそれぞれ隔離されたため、中琉球と南琉球で独自の進化が始まったと考えられる。
C:更新世初期~現在(約200 万年前頃~)
大陸では中琉球と共通の祖先種をもつ陸生生物が絶滅してゆき、中琉球は遺存固有な陸生生物相が形成されたと考えられる。 気候変動(氷期―間氷期)に伴う海面変化で、近隣の島嶼間で分離・結合が繰り返され、生物の分布が細分化され、島嶼間の種分化が進行した。氷期の海面低下で南琉球と台湾・大陸の間の距離が極く小さくなった際に、イリオモテヤマネコが南琉球に進入してきた(9 万年前頃)と考えられる。
続く・・・
協力(順不同・敬称略)
環境省 〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館 TEL 03-3581-3351
林野庁 〒100-8952 東京都千代田区霞が関1-2-1電話:03-3502-8111
文化庁〒100-8959 東京都千代田区霞が関3丁目2番2号電話番号 03(5253)4111
一般社団法人 奄美群島観光物産協会
〒894-0023 鹿児島県奄美市名瀬永田町18-6 TEL 0997-58-4888
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」の明和町観光大使
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