神奈川県公立高校志願者倍率を見て、昨年度や暫定倍率と比較してわかった3つのこと
2019年度(h31年度)の「志願者倍率」が出ましたね。
今回公表された「志願者倍率」というのは、上記の表で言うと①の部分です。
「え、俺の志望校高い!」や「おお、私の志望校はまぁまぁ落ち着いている」など、いろんな反応があることでしょう。
中には、この倍率を見て志願変更を考える方もいると思います。志願変更はちょっと方法が面倒ですが、個々人に与えられた権利ですので、使いたければ遠慮なく使いましょう。
さて、言いたいことを言う前に、まずは表の見方の説明をしておきますね。
表のオレンジ色に塗られている部分が、今年度の数値です。今年度は暫定倍率の欄を増やしてみました。
暫定倍率とは10月頃に公表される進路調査結果のことです。
暫定倍率→志願者倍率で見ると、高倍率だった高校はやっぱり軒並み下げていますね。湘南2.35→1.82、鎌倉1.99→1.47、藤沢西1.97→1.56、横浜緑ケ丘2.33→1.99、海老名1.93→1.27などなど。その中で2倍以上の高倍率を維持している横浜翠嵐や神奈川総合はさすがですね。
逆に、人気校なのに暫定倍率が思ったよりも低かったところには、やっぱり流動がありますよね。この辺りの動きはこれからの志願変更においても似たようなことが起こると思います。
表の他の部分についても簡単に説明を。
まず先程も説明した①は、今回公表された倍率。
①は「志願者倍率」。毎年2月1日頃に発表される最初の倍率です。「志願者数」を「募集定員」で割った数字です。ここから変動はあれど、倍率の推移を見ていく上でこれが基本的な数値となります。
②は、志願変更期間を経て公表される倍率です。
②は2月4日〜6日に行われる志願変更を踏まえて発表される倍率です。「変更した上での志願者数」を「募集定員」で割った数字です。1つの高校で多い時には50〜60人の志願変更者が出ますから、けっこう倍率が変動します。
③は、学力検査実施時の倍率。湘南や翠嵐などは私学志望の子が当日受検しなかったりするので、ここでも大きく変動があるんですよね。
③は学力検査実施日後に発表される倍率です。「学力検査受検者数」を「募集定員」で割った数字です。
④が実質倍率と呼ばれる、受験本などに載るものです。
④は合格発表後に発表される倍率です。「受検者から受検後取消者数を引いた数」を「合格者数」で割った数字です。「実質倍率」とも呼ばれ、毎年販売される高校受験案内などに載っているのはこの数字のことがほとんどです。なお、「合格者数」で割るため1.0未満になることはありません。
以上が表についての説明でした。
それでは早速、いや全然早速じゃありませんが、本題に参りましょう。
本日のテーマは「志願者倍率を見てわかった3つのこと」です。どうぞ。
各校の状況について
まず最初のわかったことは、もう見たまんま各校の倍率のお話です。各校の状況について、見た感想をそのままお伝えしていきたいと思います。
一気にいっちゃうと僕が混乱するので、少しずつ区切って参りましょう。最初はこちら。
学力向上進学重点校
- 湘南 1.82
- 横浜翠嵐 2.22
- 柏陽 1.58
- 厚木 1.42
まずは、学力向上進学重点校の4校です。さすが、軒並みの高倍率!
しかも、横浜翠嵐以外は昨年度の同タイミングでの集計数値を上回っています。
特色検査がどうなるかわからない中でこの高倍率というのは、「学力向上進学重点校」への期待の現れですかね。
湘南vs横浜翠嵐は、暫定倍率の時点では湘南が上回っていましたが、志願者倍率では横浜翠嵐が逆転。昨年度人気ランキング1位と2位の2校が、今年も熾烈な闘いを繰り広げています。
共通特色検査実施校
- 希望ヶ丘 1.48
- 平塚江南 1.00
- 横須賀 1.21
続いて、その他の共通特色検査実施校です。
希望ヶ丘と横須賀は昨年同時期よりも若干アップ。
驚いたのは、平塚江南ですね。これは隔年現象?それとも特色検査ショック?新方式を敬遠して、小田原や茅ヶ崎北陵、鎌倉に流れたのかなぁ。きっともうちょっと上がりますね。
湘南地域校
- 湘南 1.82
- 鎌倉 1.47
- 茅ヶ崎北陵 1.59
- 大船 1.15
- 七里ヶ浜 1.25
- 藤沢西 1.56
- 湘南台 1.05
- 鶴嶺 0.99
- 茅ヶ崎 1.41
- 深沢 1.56
- 藤沢清流 1.30
- 藤沢総合 1.03
- 茅ヶ崎西浜 1.13
- 寒川 0.82
- 藤沢工科 0.90
次に、湘南地域。具体的にいえば、藤沢市・鎌倉市・茅ヶ崎市・寒川町の高校たちです。まずは高倍率組から見ていきましょう。
クラス減した鎌倉はやっぱり高倍率。「クラス減&特色検査避け&来年度以降の特色検査実施で偏差値アップ予定!」というトリプルニーズが功を奏したのかどうかわかりませんが、安定の人気です。
そして、そんな鎌倉を倍率的には上回った茅ヶ崎北陵。前述の通り、平塚江南から流れた層もいるのでしょうか。この結果を踏まえ、まだ少し数字は動きそうです。
藤沢西は「魅力は新校舎だけじゃない!」と言わんばかりの高倍率。クラス増もしたんですが、おかまいなしですね。暫定倍率からは少し下げましたが、ここからの変動はどうでしょうか。まさか上がるなんてことはないよね。
『募集定員について各高校が話してみた』で今年度クラス増で弱気だった深沢が、見事高倍率ゲット。場所が場所だけに、近隣の小中学校の人数増の影響などもあるんでしょうか。
七里ヶ浜や藤沢清流も、今年度クラス増したのに高倍率。七里ヶ浜は、海と神奈川県で一番駅に近い公立高校という圧倒的なロケーション、藤沢清流は、単位制普通化という武器がありますからね。人気が固まってきている感があります。
続いて、低倍率組。
おい、湘南台。どうした、湘南台。今年もまた暫定倍率から一気に下がってしまいました。ここは藤沢市よりも横浜市からの流動が大きい高校なので、あながち湘南エリアでのSOFTSの人数取り合いだけが影響しているわけではなさそうですが、完全に藤沢西や七里ヶ浜に食われていますね。
あ、そういえばSOFTSってちょっとずつ流行ってきているらしいですよ。
はい、余談でした。ただ、昨年もお伝えした通り、SOFTS内部でも神奈川全体の所感としても、近年は元気系や自由系の学校が人気だという傾向が強い気がするんですよね。「真面目」というイメージが強い大船や湘南台は苦戦が続きそうです。
そして、こちらも驚いたのが、鶴嶺。どうしたんでしょう。ここから深沢や座間に流れたのかな。調査中です。情報求む。
藤沢総合も昨年までの調子を維持できなかったですね。ぐんぐんレベル上がってましたからね。同じエリアでいえば、茅ヶ崎西浜に志願先を変更した子も多いのかも。志願変更期間で、小田急江ノ島線つながりで、深沢や清流からの流動があるかもしれません。
寒川や藤沢工科については次の項で触れますね。
湘南エリアに関しては、概ね、暫定倍率からは想定内の変動という感じでした。ただ、鶴嶺は意外でしたね。しかし、まだここでは落ち着かないと思います。
次はちょっと全体的なことについて書いてみます。
上位校と下位校の格差
全体を眺めながら気になったのは、人気校の高倍率と、そうじゃない高校の低倍率。つまり、高校間の格差です。昔よりも広がっている気がするのですが、気のせいでしょうか。
そういえば、昨年、神奈川県公立高校人気ランキングというものを勝手に実施しました。
その時に俗に言う「人気校」を色々調べたのですが、やっぱり人が集まる高校にはそれなりの理由があるんだなぁと感じました。
立地だったり、実績だったり、イベントだったり、伝統がつくった雰囲気だったり。選ばれる学校には選ばれる理由があるんですよね。
それは逆に、選ばれない学校には選ばれない理由があるということ。
例えば、湘南地域でいえば、数年連続で低倍率が続いている湘南台高校や寒川高校などが「選ばれない高校」に当たります。
そういった高校は、「選ばれない理由」を把握し、手を打つ必要がありますよね。そこで、各々がより魅力的な高校づくりをしていくことが、子どもたちのHAPPYにもつながっていきます。
また、人気校への集中は、無償化などの事情から、併願私立進学への抵抗感がなくなったことも大きいのかなと。併願先でもいいということであれば、高倍率でも安心してチャレンジできますからね。
人気下位校の中にも、藤沢工科のようにギリギリまで説明会などを実施し、募集活動に尽力していた高校もあります。
色々と起死回生の手を探しながら、ゆくゆくは各々が特色溢れる魅力的な高校になり、生徒たちの「自分にあう成長の場」の選択肢が、数多に増えていくといいですよね。
期待しています。
公立高校進学希望者の減少!?
気になるのは公立高校内での格差だけではありません。暫定倍率の際もそうでしたが、全日制公立高校希望者自体が減っているのです。
昨年同時期の全日制公立高校志願者は51793人。今年は50911人です。少子化だからそりゃそうでしょと思うかもしれませんが、定時制の課程は335人から341人と増えています。私立も含めたらもっとでしょう。
そう、少子化に加えて、定時・通信制や私立高校の進学希望者の割合が増えたことが影響しているのは間違いなさそうです。授業料無償化の効果もあるのでしょう。
既に公立高校の統廃合などの話がいくつか出ていますが、今後その動きが加速するかもしれませんね。クラス減少する高校も増えそうです。
とまぁ、長々と語ってきましたが、今更のセリフを吐きましょう。
色んな情報を踏まえて、「志願変更しない」と決めたなら、もう倍率なんて気にせずに、どうにかこうにか点数を上げる努力に時間を使いましょう。
倍率を気にしている時間があるなら、その時間を自分の成長に使ったほうが合格しやすいですからね。
倍率によって変動する細かいあれこれは、結局志願変更によっても変わってきます。今はどこを受けるにしても、余裕を持った高めの目標設定をしておきましょう。
まだ15日あります。昔の人だったら、神奈川から京都まで歩いていくことのできる時間です。え?長いか短いかわからないって?失礼しました。
まだまだここから人は変わっていきます。知識はつながりを広げ、今までの努力が実を結ぶ瞬間が訪れやすくなり、勉強にハマる子が増える期間でもあります。
この時間を、この日々を、自分の成長のために最大限に有効活用しましょう。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
「倍率高いってことは人気校ってことでしょ。ますます入りたくなった」と生徒の一人は言った。