どんでん返しの人生
サティシュ・クマールがラッシュ (Lush) 創業者の伝記をレビューします。
「親愛なるジョン:ペリンダバへの道 (The Road to Pelindaba)」ジェフ・オスメント著
Lush, 2018. ISBN:9780992708269
これは、動物実験をしないことを社是とするラッシュ (Lush) 創設者、マーク・コンスタンティン (Mark Constantine) の物語です。父なしで育ち、学校の試験は失敗、大学にも行かず、その若き日は一文無しのホームレスだった男の驚くべき伝記です。これら全ての困難は姿を変えた恵みであったと分かり、それらが彼を強くしたのです。
転期は、コンスタンティンがボディショップ (The Body Shop) の設立者アニータ・ロディック (Anita Roddick) に出会ったときに訪れました。ふたりは似た者同士ですぐ意気投合しました。ふたりはビジネスで協力し合い、共に社会的環境的価値を形にした香水や化粧品作りに情熱を持っていました。ボディショップの売却、ロディック早逝の後、コンスタンティンは同様の精神で自らのビジネス、ラッシュを設立しました。ラッシュは多くの点でボディショップを継承していると言えるでしょう。ラッシュは全製品が100%植物由来で、その多くが無包装です。「無駄は最小に、再利用は最大に」がコンスタンティンがラッシュで確立した原則と実践です。 さらに、ラッシュのキャンペーン活動は、ビジネスが社会運動の支援者にもなり得ることを示しています。最近では、覆面警官による性的虐待を明るみにしたラッシュのキャンペーンを目にしました。半分警官、半分民間スパイの男を描いたポスターを作ったのです。キャプションは「PAID TO LIE #SPYCOPS」でした。これは多くの論争を引き起こしましたが、ビジネスには社会的誠実さを求めて立ち上がり直接的な行動をとる力があることを示しました。ラッシュは、社会問題、環境問題、政治問題への意識を高めるため、他にも数多くのキャンペーンを展開してきました。 コンスタンティンは、香水業者、社会活動家であることに加え、熱心なバードウォッチャーです。彼の、鳥の暮らしやさえずりの本やCDは、自然への心を込めた賛歌です。彼は「プールハーバーの鳥たち (Birds of Poole Harbour)」というウェブサイト作りに多くの時間とお金、愛情を注ぎましたが、今や、イギリスの最も美しい場所のひとつ、プールハーバーにいる鳥たちの豊かな暮らしに興味ある人々への素晴らしい情報やインスピレーションの源になっています。
「Dear John( ディアジョン)」は、コンスタンティンの父親ジョンがどこにいるのか、生きているのか死んでいるのか分からない状況で書かれました。コンスタンティンの竹馬の友で物書きのジェフ・オスメント(Jeff Osment) は、ジョンの捜索をかって出ました。そのおかげで、58年間離れ離れだった父子の感動的な再会がありました。ジョン・コンスタンティンは南アフリカのペリンダバという町に移住していたのでした。 これは共感を誘い、概ね客観的に語られる感動的な物語です。マーク・コンスタンティンの物語は、成功は苦難から生まれ、また粘り強さや打たれ強さの先には行方不明の父親とさえ再び繋がれることを語っています。
サティシュ・クマールの自伝「No Destination」は、Green Booksより出版されています。
An Unexpected Life Story • Satish Kumar
Review of Dear John: The Road to Pelindaba
312: Jan/Feb 2019