財政破綻した夕張市の医療改革
北海道の夕張市は2007年財政破綻をした元炭鉱の町、夕張メロン等で有名なところです。
以前ブログで「スウェーデンの医療改革に学ぶ」で紹介した事例の日本版が夕張市の医療です。
財政破綻して市の総合病院が無くなって医療崩壊している中で、夕張市自体は高齢化率45%の高齢化自治体です。全国平均は25%ですから全国トップレベルの高齢化です。 普通に考えれば医療費が減る要素は考えられません。夕張市の医療費が削減されています。
財政破綻のため197病床のあった総合病院から19病床しかない診療所に変りました。今まで入院していた高齢者は大変な状態、医療難民になったのではと考えられますが、実際は逆の現象が起きました。 当然今まで入院していた方々は入院できない状態になっています。では何が変ったのか。
それは「治す」医療から「支える医療」へと転換しています。『支える医療』とは「病気と長く付き合う医療」、「病状をコントロールする医療」です。要するに病院にあまり入院させない医療です。
先日のブログ「スウェーデンの医療改革から学ぶ」の中で、医療費は病床数に比例していると述べましたが、夕張市は病床数が減ったため医療費も減ったことになります。 患者を見捨てることでなく、逆に医師や看護師、患者の連携や意思疎通、通院や訪問医療の努力があってのことです。
高齢者の死亡率は変っていませんが、死因では自然死が増えたそうです。病院で亡くなる人が少なくなったことを意味します。
成果として夕張市の医療現場では、市民の死因上位の胃がん標準化死亡比(SMR)は2006年134.2から2010年では91.0、肺炎については125.0から96.4にまで低下しています。
また高齢者の医療費は83.2万円から73.9万円に減っています。因みに全国平均の高齢者の医療費は100.3万(2006年)から104.7万(2010年)と増加傾向があります。高齢化率全国トップレベルから考えると奇跡です。
救急車の出動回数は全国ではここ10年で1.5倍に増えていますが、夕張市では半分以下に減っています。
「スウェーデンの医療改革に学ぶ」の結論として「死」への考え方を変えることの重要性を訴えました。「死んいく自由」「自宅や住み慣れた場所で死んでいく自由」「病院で死なない自由」に切り替えることでスウェーデンは病院での寝たきり老人がほとんどいない状態となっています。
夕張市の医療破綻からの奇跡の医療費削減と医療改革、実にいい事例だと確信しています。夕張市の医療破綻を端に発しながらもスウェーデンと同じような改革をしたことになります。日本の医療改革・医療費節減の希望が夕張市の実例にあります。