Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

観光列車「只見線レトロ満喫号」乗車 2025年 春

2025.05.10 11:23

ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)の“前年祭”「プレDC」」(今年4月1日~6月30日)期間中に、JR只見線に臨時運行されることになった観光列車「只見線レトロ満喫」号に乗車した。

*下図出処:東日本旅客鉄道㈱ 東北本部「春の臨時列車のお知らせ」(2025年1月17日)

*参考:

・福島県 :只見線管理事務所(会津若松駅構内)

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF)(2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)

・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書「復興事業に係る事務の執行について」(PDF)(令和2年3月) p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ -只見線の春- / -観光列車-

 

 


 

 

今朝、自宅から郡山駅に向かった。昨夜からの雨は止んでいたが、上空には鼠色の雲が広がっていた。 

改札を通り、1番線ホームに待機中の磐越西線の列車に乗り込んだ。

6:52、会津若松行きの列車が郡山を出発。

 

 

沼上トンネルを抜けて会津に入っても、空模様は変わらなかった。猪苗代を出てまもなく、右車窓の正面に見えるはずの「磐梯山」(1,816.0m、会津百名山18座)は、すっぽりと雲に覆われていた。

 

8:08、会津若松に到着。小雨が降っていた。

駅舎の出入口の脇には、会津の各自治体などの公式キャラクターの陳列棚が置かれていた。両側には幟が立てられ、「プレDC」に合わせた展示のようだった。

下段の左には只見線の「キハちゃん」、右にはJR東日本・会津エリアの「ぽぽべぇ」も置かれていた。

そして、改札前に置かれたホワイトボードには、“只見線運転状況”が記されていた。

今回乗車する「只見線レトロ満喫」号は、会津若松~只見間の運行で設定されていたが、今冬の大雪の影響で会津川口~只見間の運休が続いているため、会津若松~会津川口間に変更された。改札正面の「只見線レトロ満喫」号の列車案内は、注意を喚起するため赤字表示になっていた。

運休区間を上下分離方式で保有する福島県によると、会津川口~只見間の運転再開は5月中旬ということで、次の土日(5月17日・18日)にも運転を予定している「只見線レトロ満喫」号が会津若松~只見間で運行される可能性もある。*下記事出処:福島民報 2025年4月19日付け一面


改札を通り、2-3番線ホームに向かった。列車にはツアー客も乗り込むようで、数人のスタッフが荷物を運んできていた。

ホームの北側、車庫に向けてカメラをズームにすると、「只見線レトロ満喫」号がヘッドライトを点けて待機していた。そして、その後方には、軌道総合試験車(キヤE193系気動車)が停車していた。

只見線の現運休区間(会津川口~只見間)の点検(検測)で走行していると思われ、当該区間の運転再開は今月中旬(15日頃)は予定通りだろう、と思った。

  

8:58、「只見線レトロ満喫」号が3番線に入線し停車した。

今回「只見線レトロ満喫」号として運行された列車は、2022年に“鉄道開業150年記念”として改装された「レトロラッピング車両」で、仙台(東北新幹線)~(陸羽東線)~新庄(山形新幹線)で営業運転を開始した。

車両は、現在只見線でも運行されているキハ110で、1編成(2両)に鉄道開業当時に蒸気機関車に牽引されていた客車をイメージしたラッピングが施されている。*下図出処:東日本旅客鉄道㈱「鉄道開業150年記念 レトロラッピングの運行について」(2022年3月24日)


車内に入ると、旧国鉄時代の特急の雰囲気だった。座席はリクライニング可能で、回転させれば向かい合わせの“BOX席”とすることができ。大きな窓を4人で共有することができるようだった。

座席の背面にはテーブルがついていた。

 

 

9:15、「只見線レトロ満喫」号が会津若松を出発。ホームには会津若松駅のスタッフが「プレDC」の横断幕を掲げ、手を振り見送ってくれた。

 

今回の「只見線レトロ満喫」号は、ツアー用の貸切列車ではなく、通常の快速列車のため乗車券と座席指定券で乗車可能だった。乗車券は、只見線の旅には欠かせない「小さな旅ホリデー・パス」を利用した。

 

七日町を通過し、西若松で時間調整の停車をした後に動き出した列車は大川(阿賀川)を渡った。、上流側には、中腹に雲が掛かった「大戸岳」(1,415.9m、同36座)の山塊の稜線が見えた。

 

会津本郷を出発直後に会津若松市から会津美里町に入ると、列車は田植え準備の進む田園の間を進み、左車窓から会津総鎮守である伊佐須美神社の第二山岳遷座地「博士山」(1,481.9m、同33座)、その右側には同最終遷座地で同社の奥ノ院が置かれている「明神ヶ岳」(1,074m、同61座)がそれぞれ見えた。「博士山」には残雪多くあるようだった。

*参考:伊佐須美神社「御由緒・歴史

 

会津高田を出て、“高田 大カーブ”で進路を北に変えた列車は、代掻きが終わった田が目立つようになった田園の間を進んだ。根岸を経て新鶴を通過すると、右車窓からは雲の間に山頂をのぞかせる「磐梯山」も見えた。

 

若宮手前で会津坂下町に入った列車は、左に大きく曲がり会津坂下に停車。上り(会津若松行き)列車との交換を行った。

 

会津坂下を出た「只見線レトロ満喫」号は、七折峠を登坂した。塔寺手前では、木々の間で右車窓から会津平野の一部を見渡せた。


“七折登坂”を終え、下り坂に入り“坂本の眺め”から飯豊連峰を眺めるが、冠雪した山頂尾根は雲に覆われていた。*参考:公益財団法人 福島県観光物産交流協会「ふくしま30座」飯豊山  https://tif.ne.jp/yamafuku/mt30/18.html

 

会津坂本を通過した際、貨車駅舎(待合室)に描かれた「キハちゃん」が見送ってくれた。*参考:会津坂下町「只見線応援キャラクター誕生!!」(2015年3月13日) https://www.town.aizubange.fukushima.jp/soshiki/2/3337.html / YouTube「キハちゃんねる」URL: https://www.youtube.com/channel/UChBGESkzNzqsYXqjMQmsgbg

 

柳津町に入った列車は、会津柳津に停車。向かい側の廃ホームには昭和村を含む奥会津の只見線沿線自治体(4町1村)を代表する景色の写真が並ぶ看板があり、その前には鮮やかなチューリップが並んでいた。

 

会津柳津を出た列車は、“Myビューポイント”通過。「飯谷山」(783m、同86座)は、山頂の先端だけが雲に隠れていた。

 

郷戸を経て、滝谷を通過した「只見線レトロ満喫」号は「滝谷川橋梁」を渡って、三島町に入った。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス歴史的鋼橋検索

 

会津桧原を通過し、桧の原トンネルを抜けると「第一只見川橋梁」を渡った。*只見川は、東北電力㈱柳津発電所・ダムのダム湖

反対側、左車窓から上流側の駒啼瀬の渓谷を眺めた。新緑の色合いは多様で、見応えがあった。

また、狭隘部は、均整の取れた川霧で覆われていた。

この狭隘部の上方、右岸の送電鉄塔の下にある「第一只見川橋梁ビューポイント」に向けてカメラをズームにすると、最上段のDポイントとその下のCポイントともに“撮る人”の姿は確認できなかった。

 

会津西方を通過すると「第二只見川橋梁」を渡った。上流側に見えるはずの「三坂山」(831.9m、同82座)は、すっぽりと雲に覆われていた。

下流側に目を向けると、ここも、狭隘部に川霧が発生していた。町道に架かる歳時記橋上には車が停まり、人影の見られた。

 

会津宮下手前では、県道の次男・宮下橋を見下ろしながら、長男・大谷川橋梁を渡った。*参考:三島町観光協会(観光交流館からんころん)「『みやしたアーチ3橋(兄)弟』のビューポイント」(2013年6月16日) URL: https://blog.goo.ne.jp/mishimakankou/e/e93620f5690ee4e3adf6d1124b2f46e5

 

会津宮下を出ると、東北電力㈱宮下発電所の裏、宮下ダムの脇を駆け、ダム湖(只見川)の右岸縁を進んだ。

そしてまもなく、「第三只見川橋梁」を渡った。下流側、左岸を覆った緑は瑞々しく、多様な色合いで良い眺めだった。

反対側に目を向け、車窓越しに緑の風景を眺めた。「只見線レトロ満喫」号の窓の大きさはキハE120と同等のようだったが、一枚窓ということで良い借景となっていた。


滝原と早戸の2つ長いトンネル抜けた列車は早戸を通過。眼前の只見川の上流には、うっすらと川霧が出ていた。*只見川は宮下ダム湖

川面に出現している水鏡の上に漂うその川霧は美しく、停泊している観光和舟とともに良い絵になっていた。


会津水沼を通過すると「第四只見川橋梁」を渡った。*只見川は宮下ダム湖

 

国道252号線と交差し只見川沿いを進んだ列車は、右に東北電力㈱上田発電所・ダムを見て、上田ダム湖となった只見川沿いを再び進んだ。木々の間から見えた右岸の雪食地形の山肌にも新緑が萌えていた。*参考:国土交通省北陸地方整備局 阿賀野川河川事務所「雪崩によって作られる地形~奥只見

 

会津中川を通過し、大志集落の背後を駆けた列車は只見川に近づいた。右に大きく曲がり始めると、前方の林道の上井草橋が徐々に迫ってきた。

そして、このカーブの中ほどで右車窓から振り返ると、只見川に突き出た大志集落が見えた。奥会津(雪食地形)、只見線沿線(ダム湖)を象徴している良い風景だと、改めて思った。*只見川は上田ダム湖

 

 

11:05、「只見線レトロ満喫」号は、今回の終点・会津川口に到着。向かい側には12時29分発・会津若松行きの列車が待機していた。

列車を降りた客の大半は、ホームで目の前の流れる只見川を眺め写真を撮るなどした後、駅舎に向かっていった。

そして、駅頭に付けられた2台の代行バスに乗り、只見に向かっていった。

私は代行バスには乗らず、八町温泉に行き、その後会津川口駅前で昼食を摂った。

 

今回「只見線レトロ満喫」号に乗車し、リクライニングシートに座りゆったりとした気分で見る只見線沿線の景色は良いものだった。

只見線は長大(135.2㎞)で、列車交換が可能な駅が少ない単線ということもあり乗車時間が長い。全線乗車で最大4時間56分、会津若松~会津川口間で約2時間、会津若松~只見間で約3時間となる。現在只見線で運行されているキハE120やキハ110は座面が固定されているため、今日リクライニングシートに座ってその快適さを実感し、『只見線が“観光鉄道「山の只見線」”を目指すのであれば、リクライニングシートは必須』と思った。

また、大きな一枚窓は車内が明るくし、車窓から見える景色を堪能できたばかりでなく、風景との一体感を得られることができた。

 

只見線では、上下分離で一部区間(会津川口~只見、27.6km)を保有する福島県が「只見線利活用計画」を策定し、第二期期間中(~2027年度)の観光列車の導入を目指している。この列車は只見線専用とならず、第三セクター・会津鉄道(福島県が筆頭株主)との併用となる予定だが、“会津らしい”列車となるようだ。

ただ現状費用の問題で新造とはならず既存車両の改造となるため、リクライニングシートや大きな一枚窓など、観光列車として必要と思われる設備がどこまで実現されるかは分からない。“只見線・会津鉄道 観光列車”の導入を進める関係者は、多くの観光列車に乗車するなどし知見を積み県民の意見を聞き、素晴らしい車両を誕生させてくれるだろうと思うが、乗客が“観光鉄道「山の只見線」”を堪能できるものにして欲しい、と今日の「只見線レトロ満喫」号乗車で思った。



(了)

 

 

・  ・  ・  ・  ・

*参考:

・福島県:只見線ポータルサイト

・福島県・東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社:「只見線全線運転再開について」(PDF)(2022年5月18日) 

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

 

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。 

①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金

・只見線応援団加入申し込みの方法

*現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/



②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。


以上、宜しくお願い申し上げます。