金山町「おふくろ」/ 呑み鉄 2025年 春
JR只見線で臨時列車として運行された「只見線レトロ満喫」号で金山町入りし、駅前の食堂「おふくろ」で昼食を摂り、折返しの列車の中で地酒を呑んだ。
*参考:
・福島県:只見線ポータルサイト
・福島県・東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社:「只見線全線運転再開について」(PDF)(2022年5月18日)
・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線」
・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)
・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ -只見線の春- / -只見線沿線の食と酒-
11:07、臨時列車「只見線レトロ満喫」号(会津若松9時15分発)が会津川口に到着。駅舎に入り、無料のコインロッカーに荷物を預けた。
駅構内の売店でレンタルサイクルの受付をして駅前から出発。電動アシスト付き自転車で国道400号線を快調に進むと、15分ほどで野尻川沿いに佇む八町・玉梨温泉郷が見えた。
坂を少し下り、広い路側帯に自転車を停めて、「八町温泉共同浴場」に向かった。
八町・玉梨温泉郷の間を貫く野尻川の水量は、雪融けの影響か多く、谷間に大きな水音が響いていた。
共同浴場の手前には祠があり、その脇に立つ布袋尊を振り返って見上げた。
この布袋尊は、野尻川を挟んで立つ「常楽 七福神」の石像の一つ。
布袋尊を背に、さらに下ると、対岸に立つ福禄寿、弁財天、寿老人が見えた。
「八町温泉共同浴場 亀ノ湯」に到着。先客は男性2人だった。
勢いよく流れ落ちる源泉から放たれる新鮮な香りに包まれ、20分ほど湯を楽しんだ。
【八町共同浴場 亀ノ湯】
・源泉名:亀ノ湯
・泉質:含二酸化炭素-ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉
・泉温:41.8℃
・湧出量:68Ⅼ/min(動力揚湯)
・知覚的試験:無色透明、無臭、弱塩味
・水素イオン濃度:ph 6.1
浴後、汗が引いてから「八町温泉共同浴場 亀ノ湯」を後にして、20分ほどかけて会津川口駅に戻り、レンタルサイクルを返却し、昼食を摂るため駅チカの食堂「おふくろ」に向かった。店頭には“営業中”と記された幟が立ち、車も停まっていた。
入口に近づくと、今年1月の訪問時には“臨時休業”と記された木札が、“営業中”となっていた。
引き戸を開けて中に入ると3組の先客が居て、私はカウンター席に座り、さっそくメニューを見た。
注文する品は決まっていたが、一通り目を通した。
食堂「おふくろ」の名物は、「カツカレーミックスラーメン」。8年前に食べた事があるが、これがなかなか旨かった。
「カツカレーミックスラーメン」はトンカツ‐カレー‐醤油ラーメン‐ご飯、という層になっていて、この“食べ方”を記した説明書きがカウンター前にも貼られていた。
メニューは「カツカレーミックスラーメン」を構成する、トンカツ・カレー・ラーメンを軸としたもので、セットメニューが充実していた。
注文から7分ほどで、料理が女将の手により運ばれてきた。醤油ラーメンとカツカレーのセットだ。「カツカレーミックスラーメン」を食べた時にカレーとラーメンそれぞれの旨さが印象に残り、『カツカレーとラーメンを別に食べてみたい』と思っていた。今日、やっと念願を叶えることができた。
まずは、カツカレー。カツは小ぶりだが、サクっと芳ばしく揚がっていて、濃厚なカレーと一緒に食べると良い食感で期待以上に旨かった。
そして、醤油ラーメン。背脂が浮き濃厚と思ったが、意外とさっぱりとしたスープで、中太の縮れ麺によく絡まり旨かった。大盛にすれば良かったと後悔するほど、箸が止まらず、カツカレーより先に完食してしまった。
「カツカレーミックスラーメン」を食べてから、この8年間。食堂「おふくろ」は昼食時間帯の営業のみのため、なかなか利用することができなかった。また、昼に数回行ける機会があったものの、運悪く休業ばかりだった。
今日、やっとカツカレーと醤油ラーメンのセットを食べる事ができ、予想通りの旨さで充実した昼食になった。只見線を利用する観光客が一人でも多くが食堂「おふくろ」を訪れ、この味が只見線とともに長らく続く事を願った。
食堂「おふくろ」を後にして駅に戻り、「只見線レトロ満喫」号が待機するホームに移動した。
ホームで目の前の只見川を囲む景色を眺めていると、まもなく列車のドアが開き、乗車可能になった。
「只見線レトロ満喫」号に乗り込み、国鉄時代のエル特急のようなリクライニングシートの指定席に座った。
そして、さっそく駅前の押部商店が購入した冷えた缶ビールを呑みだした。“呑み鉄”の開始。
13:59、会津若松行きの「只見線レトロ満喫」号が、会津川口を出発。ホームでは幟を持ち法被を着た方々の見送りを受けた。
列車が林道の上井草橋を潜ると、左車窓の前方に只見川に突き出た大志集落が見えた。川面の水鏡に景色がそっくり映り込み、中々の見ごたえだった。
今回の切符も、土日休日の只見線の旅には欠かせない「小さな旅ホリデー・パス」。そして、「只見線レトロ満喫」号は全席指定のため、530円の座席指定券を購入していた。
会津中川を通過した列車は、会津水沼手前で「第四只見川橋梁」を渡った。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス「歴史的鋼橋検索」
三島町に入り早戸にさしかかると、観光和舟の船着き場の先に、川霧が見えた。*只見川は、東北電力㈱宮下発電所の調整池・宮下ダム湖
川霧は、只見川の蛇行部を覆い、幻想的な風景を創っていた。この中を観光和舟が漂えば、“霧幻峡の渡し”の名に違わぬと思った。
川霧を見て、日本酒を呑み始めた。今回選んだのは、宮泉銘醸(会津若松市)の「会津宮泉」の純米酒。酒器は、会津本郷焼「閑山窯」の盃を持参した。
「会津宮泉」は、今朝開店間もない渡辺宗太郎商店「會津酒楽館」で購入していた。
ツマミは、押部商店で見つけた「柿の実」という米菓子と...、
会津川口駅構内の売店で購入した赤べこ堂(柳津町)の「杵つき餅 あんこもち(つぶ)」。
「会津宮泉」は香り良く、口に入れた瞬間に濃厚さを感じさせながら、のど越しはさっぱりとし、旨かった。この芳醇さは予想通りあんことの相性が良く、「杵つき餅」は最高のアテになった。
早戸を通過した列車は、早戸トンネルと滝原トンネルをたて続けに抜けて、「第三只見川橋梁」を渡った。*只見川は・宮下ダム湖
会津宮下で停車した列車は、発車後に会津西方手前で「第二只見川橋梁」を渡った。*只見川は東北電力㈱柳津発電所・ダムのダム湖
そして、名入トンネルを抜けた列車は「第一只見川橋梁」を渡った。*只見川は柳津ダム湖
上流側、駒啼瀬渓谷の右岸上方の鉄塔の下にある「第一只見川ビューポイント」に向けてカメラをズームにすると、最上段Dポイントとその下のCポイントには、“撮る人”がそれぞれ1人居た。
会津桧原を出た列車は、滝谷の直前で「滝谷川橋梁」を渡り柳津町に入った。
橋梁区間を終え、「会津宮泉」をチビチビと呑みながら、読書をすることにした。今回持参したのは宮部みゆき著「希望荘」。
「只見線レトロ満喫」号は、郷戸を経て会津柳津に停車。そして会津坂本の直前で会津坂下町に入り七折峠の登坂を開始した。四連トンネル”手前にある“坂本の眺め”からは、まだ雪を多く残した飯豊連峰の山稜の様子が見られた。*参考:公益財団法人 福島県観光物産交流協会「ふくしま30座」飯豊山
登坂を終えた列車は、ディーゼルエンジンの出力を落とし軽やかに下りながら塔寺を通過し、左に大きく曲がりながら会津平野に入っていった。前方には「磐梯山」(1,816.0m、会津百名山18座)が見えた。
会津坂下を出て、右に大きく曲がり列車の進路が東から南に変わる頃に陽が差し始めた。田植えの準備が進んでいる会津平野の広大な田んぼが大きな窓越しに見え、春の情緒を感じ日本酒が一層旨く感じた。
若宮が近付くと、水が張られ、代掻き作業中のトラクターが動いている田もあった。
会津美里町に入り新鶴、根岸を経て会津高田が近付くと。「明神ヶ岳」(1,073.9m、同61座)と、その後方に雪を多く残した「博士山」(1,481.7m、同33座)が見えた。
会津本郷の手前で会津若松市に入った列車は、大川(阿賀川)を渡った。上流側には「大戸岳」(1,415.7m、同36座)の山塊が見えた。
15:49、西若松で停車した後、七日町を経た「只見線レトロ満喫」号は終点・会津若松に到着。「宮泉」の四号瓶は2/3以上が無くなっていた。
ホームでは駅のスタッフが「ふくしまディスティネーションキャンペーン(DC)」の小腹を振り、列車を出迎えてくれた。「只見線レトロ満喫」号は「ふくしまDC」の“プレDC”(2025年4月1日~6月30日)の企画として運行されている臨時列車の一つになっていて、そのための演出のようだった。
会津若松からは磐越西線の郡山行きに乗り換え、帰途に就いた。途中、猪苗代では「磐梯山」よく見えた。
(了)
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*参考:
・福島県 :只見線管理事務所(会津若松駅構内)
・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF)(2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)
・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書「復興事業に係る事務の執行について」(PDF)(令和2年3月) p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業
【只見線への寄付案内】
福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。
①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金
・只見線応援団加入申し込みの方法
*現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/
②福島県:企業版ふるさと納税
URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html
[寄付金の使途]
(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。
以上、宜しくお願い申し上げます。