芍薬の句
https://blog.goo.ne.jp/tsuji2020/e/ea50c61b162cc87905e17cf02359766d 【や 棚に古りける 薬箱】より
昨日は母の日でしたね♡小庭では日本芍薬(にほんしゃくやく)が満開を迎えました。いつも母の日のころに綺麗に咲いてくれます。球根から育てて七年目になります。今年は5月に入ってから白と薄いピンクが咲きはじめまして・・・その後、濃いピンクが咲きはじめ、一昨日に満開となりました。
「芍薬や 棚に古りける 薬箱」
大正時代から昭和時代に活躍された俳人「水原 秋桜子(みずはら しゅうおうし)」が詠んだ句です。
◎芍薬(しゃくやく)→夏の季語芍薬の花は、開花から三日程度で花が終わります。我が家の日本芍薬は、花が終わりに近づくにつれて薬のような香りがします。芍薬は、古くから薬草としても活用されておりまして、現在も漢方薬に使用されているとのことから、なんとなく漢方薬の匂いに似ているようにも思います。
この句を詠まれた水原 秋桜子は、名前に秋桜(コスモス)の花の名前が入っておりますが、男性の俳人です。本業は産婦人科医で、ご実家の病院が皇室御用達の産科であったことから、秋桜子もたくさんの皇室の赤ちゃんを取りあげられていたそうです。
芍薬は、昔から漢方薬として極めて重要な植物とされておりましたので、医師としても大切にされていた植物の一つだったことと思います。また、「ホトトギス四S(シイエス)」の一人としても知られています。ホトトギス四Sとは、水原 秋桜子、山口 誓子(やまぐち せいし)、
阿波野 青畝(あわの せいほ)、高野 素十(たかの すじゅう)の四人ことで、共通のイニシャルをとって四Sと呼ばれていたそうです。ちなみに四人とも男性の俳人です。
当時、俳句雑誌「ホトトギス」の黄金時代を築いていた四Sの方々が詠まれた俳句は、
現在もたくさんのファンの方々に愛され続けています♡
https://ameblo.jp/yujyaku/entry-12902098806.html 【芍薬(しゃくやく)】より
芍薬や着物姿の異邦人 しゃくやくや きものすがたの いほうじん
ご承知の方も多いと思うが、昔から、美しい女性の容姿や立ち居振る舞いを形容する成句として、以下のものがある。
立てば芍薬(しゃくやく) 座れば牡丹(ぼたん) 歩く姿は百合(ゆり)の花
すなわち、「芍薬」は草本なので真っすぐに立ち、茎の先端に花を咲かすため、すらっとした感じに見えるが、「牡丹」は木本(樹木)であり、横向きの枝に花を咲かすため、ゆったりと座っているように見える。更に、百合は茎の先に俯き加減に花を咲かせ、風に揺れる様子は、優美に歩いているように見える。
掲句は、これら花の中でも特に「芍薬」の花姿を、外国の女性が着物を着てポーズをとっている姿に重ねて詠んだ句で、2年前に詠んだ。最近はアジア系だけでなく、欧米系の人も結構見かける。よく言われることだが、着物を着ると背筋がまっすぐに伸びて、その立姿が非常に美しく見える。「芍薬」は夏の季語。
「芍薬」の自作句
芍薬の茎の長きに花一つ 芍薬や噂たがわぬ立ち姿 芍薬は噂通りの美人顔
立ち並ぶ綺麗どころや芍薬園 芍薬も牡丹も百合も夏女
https://yujyaku.blog.fc2.com/blog-entry-1245.html?sp 【芍薬 二句】より
■芍薬 二句
○ 立ち並ぶ綺麗どころや芍薬園
( たちならぶ きれいどころや しゃくやくえん )
○ 芍薬や噂たがわぬ立ち姿
( しゃくやくや うわさたがわぬ たちすがた )
昔から、美しい女性の容姿や立ち居振る舞いを形容する言葉として、「立てば芍薬(しゃくやく) 座れば牡丹(ぼたん) 歩く姿は百合(ゆり)の花」という言葉がある。
これは、牡丹は木本で枝分かれし、横向きの枝に花を咲かすため、ゆったりと座っているように見えること、一方、芍薬は草本でまっすぐに立ち、茎の先端に花を咲かすため、すらっとした感じに見えること、更に、百合は茎の先に俯き加減に花を咲かせ、風に揺れる様子は、優美に歩いているように見えることなどの印象から言われるようになったとのこと。(異説あり)
このうち牡丹の方は既に盛りが過ぎたようだが、それに代わるかのように芍薬が今最盛期を迎えつつある。先日行った植物園の芍薬園にも、いろいろな種類の芍薬が植えられていたが、色、形、大きさなど、いずれも美花という感じである。掲句は、そんな芍薬を見て詠んだ句である。
第一句は、芍薬園一帯に花開く芍薬を見て詠んだ句。第二句は、個々の芍薬を見て詠んだ句である。尚、牡丹は春の季語だが、芍薬、百合は 夏の季語。因みに、芍薬に関しては数年前以下の句詠んだ。
芍薬は噂通りの美人顔
掲句の第二句と趣向は変わらないが、改めて吟味してみると、この句は上五に牡丹を持ってきても成立する。先に挙げた成句を元にするならば、本日の掲句の方が立ち姿を詠んでいる分、要を得ていると言えるだろう。
芍薬は、ボタン科ボタン属の多年草。アジア大陸北東部の原産で、日本には薬用植物として平安時代頃に渡来したそうだ。
芍薬の名の由来は、姿がしとやかで美しいという意味の「綽約(しゃくやく)」からきたとの説がある。漢字の方は、漢方で使われる「芍薬」という文字が当てられたとのこと。
尚、巷間では、牡丹が「花王」と呼ばれるのに対し、芍薬は花の宰相、「花相」と呼ばれているそうだ。王と宰相では、やはり王の方が上ということになるのだろうか。この辺はよく分からない。
花期の方は、牡丹が4月から5月で、芍薬はその後の5月中旬~6月末頃というように時期がずれる。百合の方は更にもう少し後の6月から8月頃。
【芍薬の参考句】
芍薬の蕾の玉の赤二つ (前田普羅)
芍薬にはねたる泥の乾きゐる (富安風生)
芍薬や棚に古りける薬箱 (水原秋桜子)
芍薬の赤き花辮白き蕋 (高野素十)
芍薬の咲ける井ありて水を乞ふ (篠田悌二郎)
https://www.longtail.co.jp/~fmmitaka/cgi-bin/g_disp.cgi?ids=20020522,20150602&tit=%E4%89%96%F2&tit2=%8BG%8C%EA%82%AA%E4%89%96%F2%82%CC 【季語が芍薬の句】より
芍薬や枕の下の金減りゆく
石田波郷
季語は「芍薬(しゃくやく)」で夏。花の姿は牡丹(ぼたん)に似ているが、芍薬は草で、牡丹は木だ。牡丹が散りだすと、芍薬が咲きはじめる。療養中の句だろう。病室から見える庭に芍薬が咲いているのか、あるいは見舞客が切り花で持ってきてくれたのか。「立てば芍薬」の讃め言葉どおりに、すっと背筋を伸ばした芍薬が咲き誇っている。対するに作者は横臥しているので、この構図からだけでも、病む人のやりきれなさが浮き上がってくる。さらに加えて、「金(かね)」の心配だ。長期入院の患者は、売店で身の回りのものを買ったりするために、いくばくかの現金を安全な「枕の下」にしまっておくのだろう。その金も底をついてきた。補充しようにも、アテなどはない。そんな不安のなかでの芍薬の伸びやかに直立している様子は、ますます病気であるゆえのもどかしさ、哀れさを助長するのである。枕の下の金で、思い出した。晩年はほとんど自室で寝たきりだった祖母が亡くなった後、布団を片づけたところ、枕の下から手の切れるような紙幣がごそっと出てきたそうだ。紙幣はすべて、何十年か以前に発券された昔のものばかりであったという。『俳諧歳時記・夏』(1968・新潮文庫)所載。(清水哲男)
芍薬の蕾のどれも明日ひらく
海野良子
芍薬はしなやかでやさしい姿を表す「綽約(しゃくやく)」に由来するともいわれ、美人のたとえである「立てば芍薬」はすらりと伸びた茎の先に花を付ける様子を重ねている。咲ききった満開の美しさもさることながら、「明日、咲きます」のささやきが聞こえるほどのほころびは艶然と微笑む唇を思わせ、やわらかなつぼみの隙間から幾重の花びらがほどかれるきざしに、詰まった襟元をゆるめるようななんともいえない色気を感じさせる。約束された満開という幸福を待つ、このうえない幸せの時間。芍薬はつぼみの頃から蜜をこぼし、虫たちを招くという。これもまた芍薬のあやしい魅力のひとつなのかもしれない。『時』(2015)所収。(土肥あき子)