清水真一氏のハガキ(22)
2025.06.02 05:51
1939年と1940年の年賀状
「頌新正 己夘(つちのとう)元旦 静岡県島田町 清水真拝」
(ハガキの左下を拡大したもの)
「夘歳新春漫語 兎と望遠鏡
兎と月とは店子と大家の間柄で 相当古くからの事でしようが 兎と望遠鏡はそれとはずっと新しく 時は徳川の末期 處は江戸愛宕山 其山上にささやかな茶店を営む老婆が居りました そしてそこに一臺の望遠鏡が据へられました 一日そこへ遊びに来ました大田南畝の蜀山人をとらへて其老婆は 大田先生でございましたか 誠に恐れ入りますが今度ここに遠眼鏡を据へましたので 先生に一つ看板をお願ひ致したうございますと一枚の板を持ち出しました 先生は快諾され直に筆をとって 兎といふ一字を大く書かれました 老婆は驚いて 先生これが看板になりますかと不審がりました 先生は笑ひながら 兎は十二支では夘であらう 夘から数へて 夘辰巳午未申酉戌亥子で 十目が子(トウメガネ)であろうがな これは私が学童時代に読んだ蜀山人物語の一節ですが 近頃私が時々使用します菟庵といふ別号の出所も 實は此笑話であります 菟は兎と同字ですが カモフラージするのに 昔も今も艸(くさ)を用いるのも面白いではありませんか 呵呵 (かか) 妄言多謝 昭和十四年己夘元旦 菟盦隠士 尚此星野写真は短焦点レンズで撮影した兎星座であります」
「龍頭 事此歳 蛇尾敬々 朋年星 象眼歬(ぜん) 在鞠躬(きくきゅう)
須(すべからく)順天 庚辰 新春 題 龍蛇ニ星座図菟盦」
「賀正 昭和15年1月7日 静岡県島田町 清水真一」
(資料は伊達英太郎氏天文写真帖より)
*年賀状(1940年)の崩し字解読は、柴田哲男様(古文書勉強会)にしていただきました。