ノって踊ろうぜ
(メンフィスのプレスリーの邸宅「グレイスランド」:現在は記念館になっている。)
プレスリーは〝人種や音楽のジャンルを超えて評価された初めての白人アーティスト〟であった。
片足を「白人の音楽」(ヒルビリー )へ、片足を「黒人の音楽」(R&B)へ乗せ数多くのヒット曲を生み出した。それは彼がたった一人で音楽の歴史を変えたということでもある。彼の音楽は、多様性に富む。彼の23年間に及ぶキャリアのなかでのレパートリーは、ロカビリー、ゴスペル、バラード、カントリー、フォーク、ジャズなど多岐にわたっている。その豊かな声が聞き間違えられることはないが、典型的なエルビスの声というものもない。
彼ほど多くのレコードを売ったミュージシャンはいなかったし、彼ほど他のミュージシャンに影響与えたミュージシャンもいなかった。
1977年エルビスはわずか42歳で死んだ。
その時のジミー・カーター大統領の弔辞。
「エルヴィス・プレスリーの死は、我が国から大事な一部分を奪いとったようなものだ。彼の音楽とその個性は白人のカントリー音楽と、黒人特有のリズム・アンド・ブルースのスタイルを融合させ、永久にアメリカの大衆文化の様相を変えてしまった。彼は、祖国アメリカの活力、自由、気質を世界の人々に植え付けるシンボルだった。そして、ジェームス・ブラウンは『彼は白人のアメリカ人に目線を下げるということを教えた』という言葉を書き残している」
おいおい、「目線を下げる」って日本語があるのか?はて?意味もわからない。
原語ではHe taught white America to get down.のget downのところだ。
アメリカの友人に聞いてみた。
このget downは意味の広い言葉だ。だが、とりわけ黒人ミュージシャンが使う場合は「踊る」「ノっている」「リラックスする」などになるという。
その途中で気がついたのだが、「上から目線で」という俗語があるよね。最近では「マウンティング」ともいうが、自分が優越的な立場を誇示する態度だが……。その反対の「身を屈めて」「謙虚に」という意味合いで誰かが「目線を下げて」という変な日本語にしたんだね、きっと。
とにかく、カーター大統領は、「プレスリーは世界に向かってこのアメリカという国のバイタリティ、自由、ユーモアを発信するシンボルだったが、加えてJBが言うように、白人のアメリカ人に(黒人の音楽で)ノリのいいダンスをすることも教えた」と最後にふっ!と力を抜く意味で使っている。
これって、プレスリーの〝腰振り〟が「Elvis the Pelvis(骨盤のエルビス)」と韻を含んだニックネームになったのだが、これをJBはおちょくっているのかも知れないなって思う。
https://www.youtube.com/watch?v=uvGvmsLQaHA
https://www.youtube.com/watch?v=sire_XjCQjI
実を言えばこの「ソウルの帝王」ジェームス・ブラウンと「キング・オブ・ロックンロール」のプレスリーは〝ソウル・ブラザー〟だったらしいのだ。秘密裏に二人だけで会い、ゴスペルの歌合戦をやっていたということが『俺がJBだ!』という本には書いてある。