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須和間の夕日

山田修 東海村長が,東海第二原発再稼働を容認した

2025.06.11 02:53


今日6月11日の東京新聞トップは,山田修 東海村長が,村議会で東海第二原発の再稼働を必要,と考えを表明した記事である。

タイトルは,次のように打っている。


「『東海第2 再稼働は必要』 / 村長容認,4選出馬へ / 原発周辺6市村で初 / 老朽化・相次ぐ火災・避難計画も未整備」


今年8月,村長選が行われる。原発推進側候補は,山田氏か,それとも村選出の現職議員か,とその成り行きに注目があつまっていたが,現職議員はおろされたようだ,これで山田氏に絞られたと見ていた。その矢先の,今日の記事である。

東海第二原発の防潮堤工事は,2026年12月に竣工予定である。次期村長の任期中に,村長は再稼働判断が迫られる。

山田村長は,次のように考えたのではないだろうか。

まもなく再稼働を判断するときがくる,その判断は,必ず自分がしなければならない,再稼働反対派の村長が出現して,再稼働不同意を表明させてはいけない,そのためには4選目を必ず勝ち抜く,村民意識も再稼働賛成が過半数になっており **,圧倒的な勝ちを引き寄せたい。

山田氏の再稼働容認の明確な意思表示は,村長選出馬の意思表明というべきだろう。表明は,日立製作所(原発メーカー),原電,JAEAといった村内外の原子力権力と,その支持者に向けられている。おそらく,すでに,彼らによる支援体制は相当程度に整えられており,その上で,この再稼働必要性を表明したものと思われる。

振り返れば,山田氏は4年前の村長選で,原発再稼働問題は一言も触れなかった *。まだ,再稼働判断には至らないとして,この問題に触れなかったのだ。いかにも中立を装ってきたが,山田氏が再稼働推進側に取り込まれ,確信犯的な推進論者であることは,ちょっと観察すればすぐにわかることで,少なからぬ村民は知っていた。

山田氏は,選挙で「原子力との共存共栄」を主張するのだろう。しかし,これまでの農業指標,土地利用変化,JCO臨界事故を振り返れば,「共存共栄」などなかったことははっきりしている。

1999年9月のJCO臨界事故を知らない村民も増えているだろうが,この事故こそ,4万人近くの村民が住む村に,原子力施設を置いてはいけないということを強く教えている。いずれ農業にJCO臨界事故がもたらしたものを書こうとも思うが,ここでは,統計数字が示す「共存共栄」は存在しない,ということを示しておきたい。

原子力開発後の村の農業生産指標の茨城県との比較である ***。

 農業粗生産額比: 村=86.3%,茨城県平均=88.1%(1983年に対する1998年の比較)

 生産農業所得(1998年の1戸当たり): 東海村=122万3,000円,茨城県=151万3,000円

 生産農業所得(1998年の10a当たり): 東海村=10.7万円,茨城県平均=11万円

どれを見ても,東海村の農業生産は,県平均と比べて明らかに低い。原子力と農業は共存し得ない。共栄もない。



* 「2021年東海村長選を闘って その3 東海第二原発の再稼働問題」,須和間の夕日,2021年9月30日

** 最新のデータがないが,渋谷淳司さんが行った2023年の調査では,再稼働容認が過半数に達したと読み取れる結果が出ている。 「再稼働問題の視点を再考する(村民の原発再稼働問題に対する意識1)」,須和間の夕日,2023年8月17日

*** 河野直践「原子力施設の立地と地域農業:統計と事例が語る『負の相関』」『茨城大学政経学会雑誌』72,2002,p.3