山城町下名の伝説
山姥神社
【鬼子】
下名日浦に伝わる話し。
産まれた時から歯が生えそろっていて後頭部には目が一つ付いていた。
産まれてすぐに斧をかつぎ近所の2軒の家を回りシメナワを断ち切ると神棚の供え物を食べ塩を一俵ぺろりと舐めると近くにあった沢の水を飲み干すと斧を担いだまま山奥へと消えていった。
シメナワを断ち切られた家は以来今でもシメナワを張らない。
【山姥】
南日浦 I 家の神社祭神。山を開き人に益をもたらすと言われる。
I 家のこの神社には3尺に6尺の掛け軸、開けてはいけないと云われる玉手箱、錦に包んだ鏡13枚、太刀や長刀など国境を守った山伏らしい異物が残されていた。
昔この家の使用人の頭領が山仕事に出かけていたらにわかに雨が降って来たので、外に干した穀物などの干し物を取り込もうと急いで帰ってみると干し物はちゃんと取り込まれていた。
ところが誰に聞いてもそんな事をした人はいないと言う上に何度も同じ事が続いたため
「うちには干し物を入れてくれる山姥さんがおる」
と自慢し、雨が降っても
「なあに、うちには山姥さんがおる」
と、家に戻らなかった。
すると仕事が終わって帰ってみると干し物は雨に叩かれてすっかり流れてしまっていた。
【ヤマミサキ・カワミサキ】
鳥のように飛ぶ妖怪とされ、山や川で遊び過ぎたりしていると突然これに取り憑かれて動けなくなる憑き物とも言われる。
昭和41年、Fさんは番屋の上の尾根で急に目の前が暗くなって見えなくなり、土佐のイザナギ流に祈祷法を習っていたMさんに見て貰うと、ヤマミサキに取り憑かれていると言うので、拝んでもらうとすぐに治った。
【送り狼】
牛ノ首谷ぞいの真っ暗い夜道を歩いていたMさんは庚申さんの上辺りへ来ると体が痺れたようになった。
何か後をついて来るような音がするので立ち止まると音も止まる。
思い切って振り返ると青白い二つの目玉が闇に光っていて、それは山犬の目だった。
震えながら山道を登ったが山犬はどこまでも追いかけて来る、必死の思いで人家に駆け込んで助かったが数日経っても震えが止まらず飯も喉を通らない。
これはどうも山犬が憑いたらしい、と言うことで太夫さんに神さんを勧請してお祓いをしてもらうとようやく普通に戻った。
【明神の主】
下名川成と西祖谷山の榎の間を結ぶ榎津渡しは古来からある渡しで、そこの淀みの明神の淵には大蛇が住んでいて、渡しの管理をしていた西祖谷山の武士、T屋敷の娘さんへ夜な夜な通っていた。