山田発言をめぐる東海第二原発周辺6市長のコメント
10日,東海村長・山田修氏が,村議会で,東海第二原発の再稼働容認を表明した。これをめぐって,15日の東京新聞茨城版が,周辺6市長のコメントを載せた。
自治体が避難計画作成に着手してから10年以上たち,この間,国内では熊本地震,能登半島が起きた。世界では,ロシアによるウクライナ侵略が起き,今月にも,イスラエルがイランの核関連施設を攻撃した。私たちは,大地震が原発を襲う怖さ,戦争や紛争の当事者たちが原発や関連核施設を攻撃に利用する事態を目の当たりにしている。
人間の定住環境に置く原発は,人類破滅の脅威だ。私たちはこう理解しないといけない。
ところが,上述6自治体首長は,避難計画作成に取り組んで以来,ずっと同じ気の抜けたようなことを言い続けている。現実の危機に目を向けず,市民,県民に安心の言葉を届けようとしない。誠意と努力のひとかけらもない。
まずは,コメントを見てみよう。
大井川県知事: 再稼働の是非については引き続き,安全性の検証と,実効性ある避難計画の策定に取り組んだ上で,県民や市町村,県議会のご意見を聞きながら判断したい。
高橋靖・水戸市長: 施設の万全の安全対策,全市民が安全に避難できる実効性ある避難計画,そして市民の理解がなければ(再稼働は)あり得ないと考えている。
小川春樹・日立市長: 関係自治体は広域避難計画の策定を進めていることから,引き続き動向を注視し「原子力所在地域首長懇談会」の6市村で連携し,協議を継続しながら対応したい。
先崎 光・那珂市長: 最優先に広域避難計画の策定を進めていく。再稼働の可否は,市民や市議会の意見などを踏まえ,市民の安全を第一とし,慎重に判断していく。
藤田謙二・常陸太田市長: 新安全協定に基づく事前了解の仕組みなどが変わるものではない。これまでと変わらず首長懇における協議などを続けていく。
避難計画をめぐる大井川知事のコメントは,2020年1月のNHKインタビューと変わらない *。高橋水戸市長のコメントも 2019年4月の市長選時と変わらない **。
計画をつくるとは,計画対象について実態を明らかにし課題解決のために,制度や対策を具体化することだ。しかし,原発事故時の避難計画策定は簡単ではない。すでに明らかなように,避難計画は,起こりうる状況を予想も予測もできないこと,避難者数の規模が巨大すぎること,被ばくを避けるための避難が被ばくを前提とした避難であるなど,どう考えても,できない計画であり,つくってはいけない計画なのである。
県知事はじめ市長らは,避難計画作成をつづけているなどと言うが,計画論から言えば,これは科学ではない。「計画」に値しない計画である。原発事業者に奉仕する事業計画である。市民はそのことをすでに見抜いているが,首長たちは,誠実に避難計画作成に取り組んでいるというポーズをとりつづける。10年以上も!
ただ,高橋氏については,「『全市民が安全に避難できる』実効性ある避難計画」として,避難計画に「全市民が安全に避難できる」という説明をくわえた。水戸市民27万人が安全に避難できるわけがないから,避難計画は困難だということを言おうとしているように見える。
来年12月,東海第二原発の防潮堤が竣工する予定で,市長は自身の任期中に,再稼働事前同意をするかしないかの判断が求められることになりそうだ。その時を念頭に,「全市民が安全に避難できる実効性ある避難計画」の策定が困難だったという事実をつくろうとしているのだろうか。真意はどこにあるか,まだわからない。
10年以上も避難「計画」を作りつづけ,なお完成しない避難計画。計画論の立場からすれば,もういい加減に諦めろというしかない。
* 「新春インタビュー 大井川知事 今後の課題 ②東海第二原発再稼動どう判断(2020年1月6日,NHK水戸)」,須和間の夕日,2020年1月9日
** 「東海第二原発の再稼働了解に条件は必要か」,須和間の夕日,2019年5月13日