Spooners
どうも今季は湖の釣りが不調だ。
釣れるには釣れるのだけど、35㎝前後とどうにもこうにもおちゃっぴい過ぎる。かと言って数多く釣れる訳でもないから困ったものだ。
このサイズを釣るためのパターンは掴んだが、それは本望ではない。
せめて40オーバー、やっぱり50アップを釣るためのパターンを確立したい。
言い訳がましいけど、昨年まではそれがあった。
決まった時間にいつものポイントに行って、あのレンジで、あのスピードでスプーンをリトリーブすれば40アップは大抵ドンピシャで釣れた。
個人的に50アップから上のサイズは、メンタルの状態がかなり絡んでくると思っているが、それにしたって現場をよくよく観察し、思考したうえでの戦略と戦術を持っていないとこの湖ではなかなか結果が出ない。
やっぱり40アップをコンスタントに釣るプランを持っていないと、その上にはなかなか出会えないのだ。
しかし、つくづく自然の力はすごい。
去年の夏、九州を襲った台風24号は地上の木々をなぎ倒しただけでなく、湖の中の地形をも大きく変えてしまった。
岸から40メートルくらい沖にあった湖底のストラクチャーは、おそらくもう砂で埋まっているだろう。
なぜそんなことが分かるかと言うと、11gのスプーンにしてボトムまでカウントダウン8秒分も以前より早く着底するようになってしまったからだ。しかもピンポイントではなく、エリア全体が。
一体これだけの土砂がどこからやってきたのか全く分からないが、現実は現実。
また、このせいかどうか分からないが、決まった時間に水中で発生していた湖流も今年はそのポイントでは起きない。海の沖釣りでいう潮止まりのような状態で、スプーンの引き抵抗がスカスカしてどうにもよろしくない。
しかし、逆に捉えるとこれは新しいメソッドを模索するチャンスだ。
やっぱり釣れている間はその方法を変えることは難しいし、その必要もない。
このブログを始めて、前のようにスプーンオンリーの釣りはしなくなったが、それは源流、渓流、本流でヤマメを狙うときのみの話し。
やはりヤマメには圧倒的にミノーが有利だと思う。ただ、これも5年くらいスプーンのみでとことんやってきた結果分かったこと。
また源流、渓流域では目からウロコが落ちるような素晴らしいミノーイングを教えてもらった。それはまるで「スライドミノーイング」とでも言いたくなるような美しい釣り。タックルを新調し、今年からは本格的に取り組んでいこうと思っている。
しかしそれ以外、この九州で釣ることが出来るレインボーやイワナに挑むときは前と変わらずスプーンだけで通すつもりでいる。
スプーンは全てのルアーの元祖だと言われている。その作りはいたってシンプルで、金属片1枚にカーブを付けられているのみ。
生物の進化に例えるとまるで原生生物、アメーバのような存在だろうか。
フラッシングやアクションなど、スプーンの持つ要素を発展させ、ボディを持ち、リップを付けるとミノーに、ブレイドの役割に特化させるとスピナーに、フォールスピードを増加させるとジグにと、それぞれスプーンをベースに進化していった。
逆に、進化をさかのぼるように考えれば、スプーンはミノーにも、スピナーにも、ジグにもなれる。それぞれ特化されたルアーにその部分ではかなわないけれど、試行錯誤すればそれぞれに近い働きを持たせることが出来る。
何より、ルアーフィッシングの原点とも言える「こんなので本当に魚釣れんの!?」というオトコノコ心をワクワクとさせるという意味ではスプーンが1番ではないだろうか。
昨年までの調子が良かった時、私の釣りは例えるならスプーンをジグミノーのように操る釣りだった。
比較的小粒で肉厚なサトウオリジナルのアンサー11gのヘッド部分にスイベルを付け、大きめのシングルフックを付けることでローリングアクションを強調できるようにしていた。
沖合の湖底にあるストラクチャー周辺をリトリーブするために、フルキャストしてボトムまで沈ませ、フリップアクションを7~8回行い、ラインスラックを取り、湖底でその存在をアピールさせ、ステディリトリーブ。
おそらくあまり太陽光が届かないであろうボトムでは暗がりの中で「ギラッ、ギラッ。」というアンサーのフラッシングと、グネグネというなまめかしい波動がレインボーの目と測線を刺激していたに違いない。
ところがこの釣り方が今季は通用しない。そこで、以前から機会があれば追求してみたかった釣りを試してみた。
それは、表~中層にかけてのデッドスローリトリーブ。スプーンがギリギリ動くか動かないかのスピードで巻く釣り。キャスト後、テンションフォールでカウントダウン5秒くらいからスタートし、10秒、15秒と刻んでいく。
レインボーはレンジが1つのキーポイントということは知っていたし、他の湖では当たり前に行われていることだろうが、ここではそんな釣りよりもボトムをやや速めに巻く釣りの方が圧倒的に結果が出ていたので、今まで真剣には取り組んでいなかった。
デッドスローの釣りに使ったスプーンは、アンサー、スカジットデザインのディンプルスプーン、そしてあのバイトシリーズ。いずれも7g前後。
やり始めてすぐに大事なことに気が付いた。
それは、デッドスローで巻くとスプーンはアクションしながらもレンジキープはせずに少しずつ斜め下に潜行していくということだ。
つまり、カウントダウン5でリトリーブを開始しても数十メートル巻けば、例えば10くらいの層を泳いでいるということ。
これは面白い発見だった。同じスプーンで同じポイントにキャストしても、デッドスローで巻けば緩やかに潜り、調整してやや早く巻けば一定の層を泳がせ続けることも出来る。
大事なことは、いきなり釣りを開始せずに、浅場に軽くキャストして、リトリーブスピードを調整し、アクションの変化を確認してから釣り始めること。
それと、ギリギリアクションするデッドスローのスピードを、レンジキープできる適正スピードを確認すること。
この釣りを始めてから、サイズこそ出ないものの、友人たちも釣果を出してきている。
最近、あの福岡のプロショップ、カスケットでモデルデビューを果たしたフェス男改めトラウト・オールドマン。
メッシュバイトの7g、デッドスローリトリーブでの1匹。
そしてMURAに至っては、なんとあのオリジナルバイトのパールピンクで。
ちなみに、私はまだこの湖ではバイトシリーズで釣ったことがない。ちょっとうらやましい2人の結果。
デッドスローリトリーブは一見退屈なメソッドだけど、スウッスウッと泳いでくるスプーンの動きを感じつつ、徒然なる時間を過ごすことは激しくルアーをアクションさせるよりも、いかにもトラウトフィッシングをやっているという風情があってとても楽しい。
それだけではない。MURAが実際に目撃したとあるアングラーは、スプーンをまるでポッパーのように水面で暴れさせ、トラウトの活性を上げてその直後に表層のファストリトリーブで釣ってみせたらしい。この難攻不落の湖で。
スプーンがポッパーにも成り得るなんて、すごい話しじゃないか!
ある日それを冗談半分で試してみると、実際に「ガッ」というバイトがあった。
釣れはしなかったが、その日はずっと上機嫌で過ごせた。釣れないなら釣れないなりにも得るものがある。
さて、もうすぐ解禁。3月中は色んな止水エリアで腕試しをしてみたいとワクワクしている。
1枚の鉄片が紡ぎ出す妙なるストーリーを味わい、メモリアルフィッシュと出会いたいと思っている。