山城町大和川の伝説
弁財天を祀る神社
【大婆さま】
相川名と政友名に住む二人の大人がいて大和川に住む大婆さまの元へ毎晩お世話に通っていた。
この大婆さまは世間と交流を絶って暮らしていて大婆さまの住んでいた所を村人は「オオバアサマ」と呼んでいた。
【狸の嫁入り】
昭和8年頃、大和川のYさん宅で大師講を兼ねた部落集会を開いていた時、帰りかかった一人が呼ぶので外へ出てみると、府甲部のあたりに15~6個の提灯が人の歩くより早く往復していた。
不思議なことがあるものだと2~30分眺めていたが、いつまでも続くので皆でまた家に入り狸の話や雑談をして別れた。
【弁財天の龍】
道路沿いに立つ鳥居をくぐり、階段を下りた川辺に弁財天が祀られている。
この谷筋で田を作っていた人が、地面が濡れていたので神社の脇の芝を折って尻に敷いて休んだ。
するとこの家に頭が乙姫さんで体が龍の姿に変化した弁財天が現れ、自在鉤にぐるぐる巻きついて怒りをあらわにした。
家の者はお詫びをして家の上に祠を作り、今も丁重にまつり続けている。
【ブランブランしよ】
今から80年も前のこと、ある家の嫁さんが実家へ里帰りした帰り道、大和川から子守神社のあたりへ来たとき、正体のわからないモノが暗い声で誘ってきた。
「ねえさんよ、ええ枝があるけん、ブランブランしよ」
そのモノは首を吊る紐を手に持ち、嫁さんの顔をのぞき込んで言った。
暗い声と怪しい目の光に、身も心も吸い込まれそうになったが、嫁さんは思い直し、耳をふさぎ目をそらしながら家へ向かってよろよろ歩いたが、その後ろ姿を追って
「なあ、ブランブランしよ。なあ、なあー」
と誘ってくる、後ろも見ずになんとか家にたどり着いたが、嫁さんの目はうつろで顔面蒼白、身に起こった事をなんとか説明し、 崩れるにひれ伏して しまった。
「あそこらにゃ人に取り憑く悪い狸がおるけんそれじゃ、お祓いせにゃいかん」
と家族がお祓いをすると、そのうち嫁さんの顔色も良くなりホーッと大きなため息を吐くや急に元に戻った。