EP25「占い師の罠」
2019.02.11 14:22
アヤさん「さて、突然だがお前さんの人となりを当てよう」
え、本当に突然…
ざきさん「これを見ている君も当たっているか考えてみよう!」
あの、毎回思うんですけど、どこに向かって喋ってるんですか?
ざきさん「んじゃまず、あんたは感受性が豊かで温厚な人だな」
アヤさん「社交的だが、一方で警戒心が強い一面もあるだろうの」
ざきさん「なるほど、好奇心旺盛でピンときたら直観的に動くことがある」
アヤさん「ほぅ。世話好きで、誰かのために動くこともあるか」
ざきさん「へぇ。のびのびと、自由な環境にいることを好むのか」
アヤさん「どうだ、当たっていたか?」
ま、まぁ、当たってるなとは
ざきさん「はい騙されたァー!ハッハッハァー!お疲れ様でーす!」
…え!?
アヤさん「先ほどの言葉はの、占い本に書いてあるものをテキトーに言っただけだ」
ざきさん「生年月日も何にもチェックしてねぇな」
え、でも、なんか当たっているような…
アヤさん「バーナム効果というものだ」
ざきさん「We've got something for everyone.」
…誰にでも当てはまる共通のモノがある?
ざきさん「お、優秀優秀。P.T.バーナムってサーカスの経営者が言った言葉だ」
アヤさん「先ほど述べたものを思い返してみると良い。どれもこれも曖昧だ」
ざきさん「感受性が豊かって、そりゃ生きてれば泣きも笑いもするだろ」
アヤさん「社交的だけど警戒心が強い?要するに人の好き嫌いであろう」
ざきさん「自由な環境って…一から作り上げるってことか?それとも、もう出来上がってる環境で好きにやるってことか?」
アヤさん「このように、曖昧な言い方をすれば誰にでも当てはまるワケだ」
じゃ、じゃあ、二人とも騙していた…?
アヤさん「何を人聞きの悪い。お前さんが勝手に当てはまってると思っただけのことであろうが」
ざきさん「うへぇー、詐欺師みてぇな言い方だなぁ。とりあえずそのゲスい笑みをやめようや」
アヤさん「失礼失礼。そりゃあなぁ、師とつく仕事で資格が要らぬのは釘師に、詐欺師、そして占い師ってところだからの」
な、なんで二人とも…そんなに…
ざきさん「更に畳み掛けるとな、人の悩みや理想ってのは大体が似通ってるもんだ。よほどサバイバルな生活をしてなきゃな」
アヤさん「20代であれば恋愛や将来のことに悩み、30代であれば家庭やキャリアのこと、40代であれば子供や貯蓄のこと、大体はそんなもんだろう」
ざきさん「何かしらのレールがあるわけだわなぁ。欲しいものは色々あっても、結局のところはお金があって人間関係が良好で健康で、そんな所を目指してるわけだ」
アヤさん「その上で人は自分のことを特別な存在だと思いたがる節がある。他人とは違う、自分だけの個性があるとな」
ざきさん「本当にアルんデスかねぇ、ソンナの」
アヤさん「さぁ、問うだけ無駄であろう。人は己の考え方にバイアスをかけるからな。知っておるか?確証バイアス、他には認知的不協和というものを」
………
アヤさん「つまり、自分にとって都合の悪い情報は無視する、または辻褄を合わせるために行動を起こすという働きだ」
ざきさん「どんだけ曖昧な言い方でも、それが外れてるとは思わない。むしろ、その言われた内容に自分への認識を変えてしまう」
アヤさん「何故か。バーナム効果が発揮されるには色んな条件があってな。例えば、個人向けであること、発信者に権威があること、そしてそれを聞くものが『自分のことが分からない』などと言って精神的に弱っていること」
…っ!
ざきさん「占いのってのは一対一の狭い空間で行うな。それに占い師ってのは不可思議なイメージがあるし実際そういった服装をしていたりもする。アヤを見ろ、いかにも胡散臭ぇだろ」
アヤさん「おうおう、いかにも秘術を知っていますってな風貌だものなワシ」
ざきさん「そして依頼者は悩みで頭が一杯だから、目の前の占い師が言うことには一々頷いちゃうわけさ」
アヤさん「後はボロを出さないように、雰囲気を維持しながら、上から目線でモノを言えば、はい占い師の紛い物が完成っと」
ざきさん「楽な商売だよなマジ」
アヤさん「高時給だしの」
もう、…もう結構…です…
アヤさん「お、そうか?」
ざきさん「他にもホットリーディングだの色々と手法はあるんだぜ?」
もう!聞きたくない!
結局、結局全部嘘だった!
星座の話も!貴方たちのことも!
ざきさん「…んー、こりゃいじめすぎたかね?」
アヤさん「はっ。おい、よく考えてみろ。お前さんを騙して俺たちが何か得をしたか?」
得って…得って、その、お金は…別に取られてないというか持ってないし…
信じきってるのを見て悦に入るとか…?
アヤさん「くだらんな」
ざきさん「だな。喉乾いたから何か飲むか」
さ、さっきから人のことを馬鹿にして…っ!!
アヤさん「そして、もう一つ問おう。騙された、嘘をつかれたということは、他に真実があるということだな?」
え、まぁ、確かにそうなりますが
アヤさん「じゃあ、その真実とはなんだ?」
え?
ざきさん「その真実はどこにあるんだ?」
アヤさん「そしてその真実はどこの誰が保証してくれる?」
ざきさん「更にそいつの正気をどこの誰が証明してくれる?」
そ、そんなの…っ!!
アヤさん「そう、そんなのありはしない」
え?
ざきさん「どこの誰に聞いて調べて教わっても、真実なんてありゃしねーよ」
その時、何故かふと何かが変わった気がした
例えるなら、崩れた足元の真っ暗の深淵に、光が見えたような...
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