Pole Vault Summit 2019③「The Importance for Future Success」
2019年1月18・19日、アメリカのネバダ州リノで開催された棒高跳サミット現地レポートの第3弾!
今回はアメリカ棒高跳界を代表する3名のコーチによる対談『The Importance of Developing the Run and Pole Drop for Future Success』を紹介したいと思います。
このセッションはコーチと学生選手を対象に行われたもので、やや専門的な内容になります。
ここでは17ft(5m20)程度の記録ではなく、さらにその先、世界で戦うためには欠かすことのできない技術について、ジュニアの時期から身につけておくべきだということで対談が勧められます。
【The Importance of Developing the Run and Pole Drop for Future Success】
by Brian Yokoyama, David Butler, Bob Fraley
Brian:
多くの選手が抱える問題として、助走中に手(保持の手;右利きの場合左手)が下がるという点が挙げられます。これによって、助走の途中からポールが倒れ、ポールの傾きが大きくなります。
この動作は選手の使用するポールが長くなったり、重くなるほどに、選手の助走に影響を与えます。(助走中における選手の余裕をなくします。)
皆さん知っているように、トップ選手にとって最も重要なことは”助走”です。
良い助走かどうかは姿勢、ストライド、ピッチ、踏切角度から分かります。
まずは指導の際にこの助走、ポール降ろしが上手くいっているかどうかはどうやって判断すると良いでしょうか。
David:
まずはポールの先端を確認しましょう。
ポールと体が分裂していないことも重要です。
ポールを降ろし始めて、途中でポールの動きが止まるということは、良い助走が出来ないことに繋がります。
Bob:
私は水平種目や短距離種目のコーチでもあります。
私の考えでは、棒高跳と三段跳の助走は同じです。
”Red Zone”を重視して見ます。Red Zoneとは踏切から48ft~28ft(14.6~8.5m)前の区間です。
ここで体の姿勢に注目します。
Brian:
実際に跳躍中に助走を合わせる際はどこを見ていれば良いでしょうか。
多くのコーチは踏切位置を見て、助走距離の調整をしていますよね。
David:
踏切6歩前(中間マーク)とその時のポールの先端の高さを見るべきです。
踏切位置が近い場合に助走距離を遠ざけるというのは、必ずしも良い行動ではありません。
私の場合、指導の際に踏切位置を見ることはほとんどありません。中間マークの位置があっているかどうかが最も重要です。
(ちなみに、アメリカはコーチがデビッド・ジョンソンコーチが作成した中間マークチャートを使っている姿をよく見ます。グリップの位置にによって、適切な中間マークの位置を決定していきます。以下にリンクを貼っておきます。)
Bob:
私もその通りだと思います。
先ほども述べたように、Red Zoneが重要です。
踏切位置を合わせるためには、この区間のステップ位置と姿勢を見る必要があります。
また踏切についてですが、しっかり体が伸びきった状態(Full Extension)で踏み切ることが理想です。これこそが自由踏切(Free Takeoff)です。
Brian:
踏切中にお尻が進んでいくような踏切です。
自由踏切については、多くの皆さんが誤解していると思います。
踏切後にポールの先端がボックスの壁につくというのは、完全に翻訳のミスでしょう。
自由踏切というのは、体が伸びきっている時にポールの先端がボックスの壁にきます。
この時、踏切は離地する前です。ここで既に踏切が完了していては、それは踏切が遠すぎです。
Bob:
また踏切の速度について話をさせてもらうと、踏切時に最高速度であることが重要ですよね。
ただこの最高速度になる距離は選手によっても異なります。
私は選手にタイムトライアルをさせますが、タイムトライアルの際に10mごとにタイムを取ります。
選手ごとに、どこで、何歩目で、最高速度になるのか見つけていきます。
またこの時に、ストライドも重要です。
どのストライドだと早く走れるのか、調整する必要もあります。
David:
ここでポール降ろしについてもう一度話をしたいと思います。
私は『ポールスピードはポールドロップによって作られる』と考えています。
昔はポールを傾けて走ることで、その重さを利用してより速く走れると考えられていました。
しかし、ペトロフコーチが”Pole Drop”をブブカに教えました。
ここで以前までのようなポールを傾けて保持することは、助走中のストライドや姿勢に影響して、十分な踏切に繋がらなくなると気づかされます。
私は選手たちに、Pole Dropを教える際に、ポールが降りることと、助走のリズムが上がること、そして両方が上手く連動するためのポジションを見つけることをさせます。
また、ハンドシフトでの跳躍は、踏切で体が伸びきる姿勢を生み出すのに効果的です。
Brian:
自由踏切はこのPole Dropが出来ていないとできないです。
Bob:
このリズムをあげて行くときの動きは、ハードル走の動きからも知ることが出来ます。
しかし、今の多くの選手は棒高跳だけをやっている。
ハードルや走幅跳を一緒にやることで、助走の改善に大きく繋がります。
Brian:
またここで出たハンドシフトや、狭いグリップでの練習は、身体が伸びきる動作を知るのに効果的です。また、下のグリップでポールを曲げることが大きな間違いであることにも、気づくと思います。