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村上春樹の問題提起と“ダイアローグ”

2009.07.14 12:27

今日のクローズアップ現代によると、
村上春樹さんは、
現代社会に起きる様々な問題の原因の一つに、
「システムの力」に注目しているとのことでした。

システム(組織や集団)に、
自分を預けてしまっているために、
システムが間違った場合に、
その個人は、本人が認識しない間に、
間違った方向に進んでしまう危険性が、
あるということです。

これは現代において特に特徴的なことではなく、
人類の歴史で、組織というものができたときから、
常についてまわってきた問題でもあります。

現代は、既存のシステムに加えて、
メディアが発達したために、
多くの人がメディアの発する情報に、
自分を預け、流されていることのほうが、
より深刻な問題を含んでいると思います。

1Q84が異常な売れ行きをしているのも、
皮肉なことに、
まさにその顕著な現象の現れです。

いずれにしても、
自分で考えて判断することを放棄し、
外部の組織や情報に自分をゆだねてしまうことは、
下に支えがあるかどうか分からない、
橋を渡っているのと同じく、
とても危険な状態であることに違いはありません。

その点で、
自分の意見を大事にしつつ、
それと同じくらいに他者の意見も、
尊重して受け入れるプロセスを経る、
“ダイアローグ=対話”こそ、
人類がこれまで抱えてきた呪縛から逃れられる、
唯一の道具となります。

ダイアローグは、
お互いを十分に理解することから始まります。
そしてかつ、主体性を持った自分、
も大事にします。
従って、大人数では不可能です。
研究者によっては、
6人くらいが最適と言う人もいれば、
より多様性が必要とのことで、
十数名程度が丁度良いという人もいます。

しかし、お互いの理解度によって、
その適切なサイズは異なってきます。
何十年も一緒に仕事をしてきて、
家族以上にお互いを知り、信頼している集団なら、
きっと数十人でも大丈夫でしょう。

ダイアローグで大事なのは、
何よりも相手の意見を受け入れること。
これ抜きには、何も始まりません。
自分の意見も言い、相手の意見も受け入れる。
皆がそのシンプルなルールに沿っていれば、
必ず合意に至ります。

大人数の集団の場合には、
まずは、
その中で小さなグループを形成して合意形成を行い、
次に、
適切な数のグループ間で合意形成をしていくことで、
最終的に全体の意見の集約ができます。
これは、先日の、
【シリーズ】新しい社会の基本がわかる その7
「境界を意識する」
に書いた、
細胞などの「個」の集合体が境界を作り、
臓器として協調的な働きを行い、
さらに臓器同士が協調的に働き、
生物が生きているといった、
生命システムのしくみと全く同じです。

ダイアローグの場には、
リーダーも、フォローワーも不要です。
ただし、参加者が不慣れであったり、
協調的な対話がまだできない状態であれば、
それを促すファシリテーター(推進役)は必要です。

10年前は、果たしてこのような社会が、
来るのだろうかと不安でしたが、
近年、にわかにダイアローグへの関心が高まり、
ちょっと希望が持てるようになりました。
この10年の社会の変化の様子からすると、
多分これからは、
加速度的に社会は変わっていくと思います。

私たちの毎日の時間の流れでは、
その変化は捉えにくいかもしれませんが、
何百年、数千年の、
人類の歴史をたどる尺度からすると、
それは、まるで一瞬にして変容する、
ドラマティックな出来事となるに違いありません。