偉人『エミール・ガレの発想力 』
今回は提案記事『発想力の要素 No.3広げる力』(記事はこちら)を受けてエミール・ガレの発想力の広げる力について記事を記していく。以前記した偉人『エミール・ガレ』(記事はこちら)についても一読されると良いだろう。
さて『発想力の広げる力(一つの考えを発展させる)』は1つのアイデアに留めずに、そこからさらにどうなる?」と展開していく力を指します。1つのアイデア・言葉・出来事から、連想をどんどん増やしていくこの力は「そこから他に何が考えられるのか?」「もっと別の可能性はないのか?」と発想を拡張していかなければなりません。発想力の4つの要素(視点を変える力・組み合わせる力・広げる力・疑う力)の中で一番伸ばしやすいのは、この広げる力である。その広げる力を最大限に活かしたのが、フランスのアール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家であり工芸デザイナー、陶芸家、家具デザイナーとして活躍したエミール・ガレである。今回はガレの広げる力とはどのようなものなのだろうか。
本題に入る前にエミール・ガレの他の発想力の凄さを見てみよう。発想力の中の1つ目である「視点を変える力」は人並外れたものを持っていた。自然を深く観察して本質を捉える力を持っており、花や昆虫をただ美しいと見るのではなく、「なぜこの形なのか」「光でどう見えるのか」「季節でどう変化するか」などを観察し、単なる模様ではなく自然の生命感や空気感を作品に表現した
そして2つ目の「組み合わせる力」もずば抜けており、ガレは科学的なガラス技法を使いながら、詩のような感情表現を行うなど植物学、化学、文学、哲学、工芸技術を1つの作品に結びつけていた。つまり「技術」と「感性」を分けずに考え作品に反映させていたのである。
例えばガレの晩年の作品に下の写真の『ひとよ茸ランプ』は、技術面ではガラスの層を削り分けるカメオ彫刻で光を透過させる色彩計算と電灯時代初期の照明設計が駆使され、感性面では夜にのみ現れる「ひとよ茸」の幻想性と儚さへの象徴として自然界の神秘的まなざしが込められ、灯りを点けると単なる工芸品ではなく「詩的空間」がそのまま広がっていると言われている。
それでは今回の本題であるガレの発想を広げる力とは何かを述べていく。
ガレは「自然や学問、技術、思想を自由に結びつけ、見たことのない表現へと変える力」があったが、その中でも突出して優れていたのが素材の可能性を広げる力である。こう記すとガレが単にガラスを加工することを考えていたと捉える方もいるだろうが決してそうではない。ガレはガラスという素材そのものの性質に着眼したのである。「この素材なら何ができるか」を深く考え、素材の特徴から新しい芸術表現を生み出した。ガレは当時の「決まった形を作る工芸」から一歩前進し、素材そのものを創造の出発点にした点がガレの最大の特徴である。
ではなぜ彼がこのような考え方ができたのか。それは一重に家庭環境が大きく影響している。ガレの父はガラスや陶器を扱う工場を経営していた。ガレは幼い頃から父の工房に出入りし、ガラスが溶けたり形を変えたりする様子を身近に見て育った。そのため素材そのものへの興味が自然に育まれたと考えて良いだろう。またガレは小さいころから植物採集や自然観察が好きで、花びらの色の変化や昆虫の細かな形などを観察する中で「自然は一つひとつ違う」そして「素材もそれぞれ個性がある」との感覚を持つようになった。さらに読書や科学の勉強も好み、芸術だけでなく植物学や化学にも関心を持って学んでいたことが彼の作品に反映されたのだ。そのため「素材を研究しながら作品を作る」というガレ独自の姿勢に繋がった。
つまり、ガレが幼い頃から工房に出入りして父の働く姿を通して、ガラスや陶器を扱う様子を見聞きして培った経験と自然観察の習慣、科学への興味が合わさって「素材の特徴を生かして新しい表現を生み出す」という事が身を結んだのだ。これがエミール・ガレが唯一無二と言われる所以である。子供の頃の過去の経験が現在の能力に繋がる事があることをエミール・ガレから学べることである。ガレのような発想を広げる力を身につけさせたいならば、単に経験を積ませるだけではなく、観察眼と創意工夫を行えるような機会を設ける事がどうも必要らしい。