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上昇した後半の象徴が彼ら2人だった

2025.07.21 04:20

◆サッカー◇天皇杯3回戦 広島5-2藤枝 

(7/16 藤枝総合運動公園サッカー場) 

天皇杯3回戦 サンフレッチェ広島が藤枝MYFCに5―2で勝利し、4回戦進出を決めた。J1とJ2のカテゴリー違いの試合は、序盤その差を感じさせない内容となった。広島のミヒャエル・スキッベ監督は、試合後の会見で前半の出来を厳しく振り返る一方、後半の立て直しに手応えを示した。


試合開始早々、J2藤枝は高速なポジションチェンジと緻密なパスワークを展開。広島のプレスは序盤から迷走を余儀なくされた。誰が誰をケアするべきか判断が乱れ、受け身に追い込まれた広島は「前半は本当に良くない出来だった」とスキッベ監督自らが認める通り、苦戦を強いられた。


しかし、後半立ち上がりから広島の攻撃に新たな躍動感が宿る。転換点は、スキッベ監督の巧みな交代策だった。後半開始から投入された中村草太と田中聡が敵陣深くで躍動し、何度もチャンスを演出。

監督が「上昇した後半の象徴が彼ら2人だった」と称賛した通り、中村は後半9分に勝ち越しゴールを決め、チームの3点目を奪取した。田中とともに攻撃にダイナミズムをもたらし、「動きが良くなり、目指すサッカーを体現してくれた」と監督が絶賛するパフォーマンスを見せた。2人は東アジアE-1サッカー選手権から「中0日」の過密日程での出場だったが、最終戦を欠場しており、「コンディション的には問題なかった」とスキッベ監督の起用に迷いはなかった。 


一方の藤枝MYFCは、代表帰りのJ1戦士たちの鋭いプレスに波ができ、ボールは回らなくなり、守備のわずかな緩みが失点につながってしまった。「何でもないところから失点してしまう」という課題は、日頃の練習でいかに小さなミスを潰していくかが問われる部分。須藤監督が口にした「もっと広い視野のビルドアップ」は、個々の技術を応用した隙間の作り方だけでなく、配置転換やスペースを読むといった総合的な眼力を磨く必要性を示唆している。 


マネジメント面で浮き彫りになったのは「疲労と休養の綱渡り」である。広島は代表戦帰り6名を抱えつつも、最終戦に出場しなかった選手を巧みに起用し、延長を回避することで累積疲労を最小限に抑えた。あえて試合後半の消耗を見越したモードに切り替えた采配は、次戦へのアドバンテージを生むと言える。 

今回はカテゴリーの違い以上に、「組織運営」「修正力」「視野の広さ」「交代判断」の4つが勝敗を分けたことを示した。ピッチ上のミクロな動きから、ベンチワークというマクロな視点まで──。一つひとつの判断と修正の積み重ねが、勝利という結果に結びついた。技術や体力だけでは語れない、チームとしての“総合力”が問われた一戦だった。 


Photo:HiroshigeSuzuki/SportsPressJP