Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

「第二の家」ブログ|藤沢市の個別指導塾のお話

課題「桑田佳祐」

2016.02.26 03:26



曲名ごとのオムニバス形式です。

本日は桑田佳祐さんのお誕生日。おめでとうございます。





「白い恋人たち」



「初めて来たよー」

横浜の赤レンガ。駐車場に車を停めての歩き出し。


雪がちらつくせいか、君がいつになくはしゃぐ。

せっかく手をつないでゆっくり歩こうかと思ったのに、

君は海沿いまで先に走って行ってしまった。


「走って転ばないようにね。この後観覧車にも乗るんでしょ?」

「観覧車は今度にするー。ゆっくり歩きたい」

「あ、そう」

ゆっくり僕は後を追う。


「綺麗だねー」君は先に横浜の夜景を楽しんでいる。

いつもこんなペース。なかなか僕の思い通りには進まない。

だけど、なんだかいつもすごくそれが心地いいんだ。


「ありがとう」

やっと手をつなげた君が嬉しそうに言った。

「そんなに喜ばれるなら、この先何回だって連れてきてあげるよ」

僕は冗談のつもりで言葉を浮かべた。

君も僕も生まれは神奈川だから、

赤レンガなんていつでも来れるのに。そんな気持ちだった。


「私ね、夢だったの」

「え?」

「大好きな人とここを二人で歩くこと」

「それは一応喜んでいいのかな」

「そうだよ。来年もまた絶対に連れてきてよね」

僕らは他愛もない話を浮かべながら、ゆっくり、海沿いの公園を歩いた。

幸せってこういうものなのかな。そんなことを考えていた。



もう、あれから3年がたつ。

時間の流れは残酷で、

どこにも君が居なくなったこの世界も、

ずいぶん変わったんだよ。

いつも一緒に行ってた駄菓子屋は去年潰れてしまったし、

あの桜並木の公園にもマンションが建った。

僕は、君との思い出が溢れるぐらいいっぱいの、

川の流れるあの街から引っ越しをした。


でもね、

変わらない場所も確かにあったよ。

赤レンガの停車場。

ここを歩くとさ、あの日の君を思い出す。


♪「夜に向かって雪が降り積もると 悲しみがそっと胸にこみ上げる」

路上のギター弾きの歌が聞こえてきた。

どんなに時が流れても、

悲しみは決して変わらない。癒えない。

辛くて、切なくて、何度も何度も思い出す。


♪「二度と帰らない誰かを待ってる」

あの時、

君は言ったよね。

もう自分の命がそんなに長くないって知りながら、

それを僕には隠しながら、

「来年もまた絶対に連れてきてよね」って。

あれは君の祈りだったのかな。


♪「今も忘れない恋の歌」

何回でも連れてきてあげるよって、

そんな簡単な約束すら守れなくてごめんね。

君はちゃんと幸せだったのかな。

僕と一緒でよかった?

君と歩いた道。君とした話。君の声。つないだ手のぬくもり。

全部忘れられない。ちゃんと覚えてる。

会いたいよ。君の笑顔が見たい。

何でもない話でも、喧嘩でもいい。君と話したい。

僕は、君が大好きだった。


♪「聖なる鐘の音が響く頃に 最果ての街を夢に見る」

ねぇ、驚くかな。

あれから3年がたって、

こんな僕にもね、

好きになってくれる人が出来たんだ。

でも、僕は君が忘れられなくて、

どうしたらいいか、ずっと悩んでる。

そのことを君に伝えようと思って、

久しぶりに、君との最後の思い出のこの場所に来てみたけれど、

結局、余計分からなくなった。


赤レンガの、ギター弾きの前をうなだれながら通り過ぎる。

その時だった。

空から、

雪が降ってきた。


♪「天使が空から降りてきて 春が来る前に微笑みをくれた」

やさしく。

それはまるで、温かい日差しのように。

君がくれたメッセージだとわかった。

「幸せになるんだよ」きっと君は、

残された僕にそう言う。それは最初からわかってた。

わかってたけど、僕が信じ切れなかった。


♪「今宵涙こらえて奏でる愛のSerenade」

僕だって、

いつも君の幸せを願っているから。

きっと、同じ気持ちなんだよね?


♪「せめてもう一度だけこの旅立ちをCelebrate」

君以上に、

誰かを好きになれるのか、

今はわからないけれど、

頑張ってみるよ。


♪「ただ逢いたくて、もうせつなくて、恋しくて…」

いつか天国の君に、

ちゃんと胸を張って追いつけるように。

「ありがとう」って、今度は僕からちゃんと言うから。


♪「涙」

空から舞う白い雪は、勇気を僕にくれた。

そして、

少しだけ僕は泣いた。




「波乗りジョニー」



♪「青い渚を走り 恋の季節がやってくる」

カーラジオから流れる季節外れの歌で、君を思い出す。

いつも助手席に座ってた君。笑ってた君。

脳内に君が再生されて、少し体温が上がったのか、手が無意識に暖房を弱める。

わかってる。どんな出会いにも必ず別れが訪れる。

ちゃんと自覚しなくちゃな。もう君は僕のそばには居ない。


君とは大学の飲み会で知り合った。

君は茅ヶ崎。僕は藤沢。地元が近かったからか、すぐに意気投合した。

「顔も喋り方もタイプじゃなかったけど、なんとなく」

なんで僕と付き合ったのか、友達に聞かれて彼女はそう答えてた。

腹も立たない。最初は間違いなく僕だってそうだったから。


僕の理想は、長い黒髪の清楚な女性。

君の理想は、筋骨隆々のスポーツマン。

お互いの遺伝子はどこをどう勘違いしたのか、

ほとんど真逆の相手を選択した。

幸か不幸か。でも、君といて退屈はしなかったし、きっと君も同じだと思う。

だんだん好きになっていく感じ。

デートはいつも君のペース。

だけどそれが心地良かった。君とは行きたい場所のチョイスも合ったから。


学生時代、大学を挟んで反対側の町で、

僕らはそれぞれ一人暮らしをしていた。

ちょっと足を延ばせば東京はすぐだったから、

二人でデートといえば有名スポットへはどこへでも行けたのだろうけど、

僕らはあえてそれをしなかった。何でもない景色や場所を好んだ。

川沿いの桜が綺麗な公園。秋になると銀杏並木が彩る川沿いの坂道。

二人のデートコースの終わりは、いつも赤に染まった夕焼け空だった。

普通の大学生にはきっと物足りなかっただろうけど、僕らには十分だった。

だって、君と話すことが一番楽しかったから。

でも、そのせいで遅れたこともある。


♪「君を守ってやるよと神に誓った夜なのに 弱気な性と裏腹なままに身体疼いてる」

聞こえてきたフレーズに相槌をうつ。まさに。

そんな個人的にやりきれない(?)夜を何回か経験し、

太陽が昇り落ちていくのと同じぐらい他の大学生カップルが自然に行うその行為を、

僕らは出会って2年目の夏にやっと経験した。


♪「出逢い別れの度に二度と恋に落ちないと 誓う孤独の太陽が涙で滲む」

よくよく考えてみると、

君との大切な思い出の記憶は夏が多い。

付き合ったのもそう。お別れをしたのもそうだ。

君が僕の前から居なくなって、

もう恋なんてしないって確かに思った。それは今も変わらない。

いくら君を忘れようと思っても、それは無理だって僕は知ってるし、

そもそも忘れる気もない。君はどうなのかなぁ。同じだと嬉しいな。


君との付き合いが長くなると、

卒業を控えた僕は将来を考えるようになった。

そんな時、君からある場所へデートへ誘われた。珍しいな、ってその時は思った。

その場所が持つ雰囲気は、僕らには似合わなそうだったから。

思えばそれが、君の最後のワガママだった。


♪「夢を叶えてくれよと星に願いを込めた日も 二人の海に夜明けは来ないと君は気付いてた」

そう。あの時、君はもう知ってたんだよね。

僕らには未来がないこと。時間がないこと。

だから、ずっとずっと行きたかった場所へ僕を誘った。

横浜の、赤レンガ。僕と君の、最後のデート場所。

君はあの時言ったね。「大好きな人とここを歩くことが夢だったんだ」って。

確かに君が選んだだけあって、すっごく素敵な場所だった。

あの時は幸せだったなぁ。本当、よく笑った。

手をつないで、まだ寒い冬空の下、くだらない話をいっぱい浮かべた。

そしてその年の夏、君はこの世を去った。


♪「いつも肩寄せ合って 僕に触って 涙を拭いてもう一度」

陽気な歌のリズムに反して涙がこぼれた。

なんで居なくなっちゃうんだよ。

自分が一番辛かった癖に、愚痴や文句も言わず、

いつも僕を気遣って、最後までやさしいまんまで居なくなって。

最後に君は言った。「私のことは忘れていいからね」。

でも、無理だよ。忘れられないよ。

僕はずっと、きっとこれからもずっと、君のことが好き。大好き。


♪「だから好きだと言って 天使になって そして笑って もう一度」

いつか、また君に会えるかな。いつか、また君と話せるかな。

この声は聞こえる?ちゃんと君に届いてる?


♪「愛よ もう一度」

願いも祈りもすべて、君の為に捧げるから。もう一度だけ君と話したい。

天使の姿でも、どんな形でもいいから、君と会えたらいい。

叶わないと知ってる、そんな希望を浮かべながら、僕は車を走らせる。

君の眠る場所へ、君の大好きだった花を添えに。


♪「今 蘇る」

何度でも蘇る。鮮やかに、はっきりと。何度も何度も蘇るその思い出を抱きしめながら。

僕はちゃんと生きてみせよう。僕はちゃんと乗り越えてみせよう。

いつか、いつか君が、僕を見つけてくれるように。





「君こそスターだ」



営業帰りは今日も雨。

齢40を超えて、より雨男になった気がする。

電話越しの上司の怒声。くたびれたYシャツ。

嫁からの「ネギ買ってきて。あと自分の晩飯」のメール。

俺は何のために頑張ってるのか。

なんだか馬鹿馬鹿しくなった。


俺の一番輝いていた頃はいつだろう。

ビニール傘で横殴りの雨をしのぎながら考えてみる。

学生時代にバンドやってた頃か?

営業で賞をもらった時?

今の嫁と職場恋愛してた時かなぁ?

考えれば考えるほど、落ち込むから辞めた。


ぼんやりしながら電車に乗る。

もう会社は早退してしまおうか、そんなことを考えていたら、

「桑田佳祐、新曲発表」の中吊り広告を見つけて、

少しだけ心がはしゃぐ。

昔、好きだったなぁ。今も頑張ってるのか。嬉しくなる。


そこで思いついた。

そういえば昔のなじみが毎月第三金曜日にライブハウスで歌ってるって言ってたなぁ。

たしかサザンのコピーバンド。ちょっと行ってみようか。

意を決して、東横線に乗り換えた。


人は何の為に生きてるのか。

そんなこと、若い頃は考えもしなかった。

俺は何か残せているのか。何も残せていないんじゃないか。

自問自答する。最近、そんなことばかり考えてしまう。


大桟橋近くの小さなライブハウス。

昔はよく来てた街だ。場所はすぐに分かった。

聞こえてくる音。サザンの歌っぽい。聞いたことがあるようなないような。

少し新しめの歌なのかな。


♪「あの日に戻れたら」

そのフレーズに反応して、足が止まった。

仕事をさぼって、こんな処に来て何になるのか。

過去を羨んでばかりの、所詮自分はダメ人間。

テンションが下がって、駅に引き返そうとした。

その時だった。


♪「走りくる影は明日への追い風」

奴の声だと気付いた。

久しぶりでもちゃんとわかった。

若い頃、一緒になってミュージシャンの夢を追いかけた。

「いつか超満員、総立ちのステージで歌えたらいいな」

今は同じサラリーマン。そんなあいつが今、ここで歌ってる。


♪「永遠に見果てぬ夢」

思い切って中へ入った。

想像とは、あまりにも違う世界だった。

ステージには奴がいた。

俺と同じ姿。くたくたのYシャツで歌ってる。

ステージ前でノリノリの女性陣。パワフルに踊ってる。

響く手拍子。突き上げられた手。

みんな楽しそうだ。

若い奴からそうじゃない奴まで。

なんだか、みーんな幸せそうだった。


♪「夜空の花火はもう消えた 祭りは燃え尽きた」

俺は燃え尽きたのかな?

消えちゃったのかな?

でも、輝いてるお前を見て、嬉しかった。

少し誇らしくて、うらやましくもあった。

ちょっとだけ、なんだか自分にも、自分の過去にも、

ほんの少しだけ自信が持てたよ。

俺たちのあの頃は、決して無駄じゃなかった。


♪「だから生まれ変わらないと」

俺もお前みたいになれるかな?

まだ生まれ変われるかな?


♪「歩いていかないと」

一歩前へ踏み出した。

人込みをかきわけて、ステージ前へ辿り着いた。

目が合って、奴が俺を指差した。


♪「太陽が照らす道を」

スポットライトが照らす道の上で、

俺たちはハイタッチを交わした。


♪「うねりくる波に 乗るための勇気を」

お前がくれた。

高ぶった気持ち。抑えきれず。

いつの間にか、ステージ前の観客と肩を組んで踊ってた。

楽しいなぁ。楽しいよ。


♪「行くあてのないほどに つれぬ世の中だけど」

生きていれば色々ある。

辛いこと、苦しいこと、悲しいこと、やりきれないこと。

でも、確かに、楽しいこと、素晴らしいこともある。

ちゃんとある。


♪「頑張る君と生きた時代に万歳」

会場全体が一緒に万歳をして、

ボルテージは最高潮になった。

座ってる人間はもういなかった。

超満員、総立ちのライブハウス。

すげぇよ。

お前、夢叶えてるじゃんか。


♪「新しい旅が始まる」

次は俺の番、だよな。


♪「走りくる影は明日への追い風」

遅くはない。

いつからだって歩きだせる。

無駄なんかじゃない。

生きてきた全部が、いつでも自分の味方。

 


♪「今も忘れ得ぬ夢」

忘れてたまるか。


♪「終わりなき夏の情熱の物語」

俺の物語は、

まだ始まったばかり。

いつも、

そう信じてなくちゃ。


♪「さよなら」

弱ってんのはもう辞めだ。


♪「君がくれた未来に」

拳を突き上げた。

高々と、高く高く、お前に届けと。


♪「乾杯」

ありがとう。

何かが変わった夜。

俺はまだ、きっとこれからだ。

何かを残すのは、これからだ。




【教育・道徳的観点から】


歌詞の解釈というのは、

一人ひとり違っていいものだと思います。


むしろ、色んな解釈があるように、

歌詞を書く歌手やライターの方も多いのではないでしょうか。


それは、なんだか文学的。

村上春樹さんの作品のように、

少し曖昧だけど、だからこそ「ああじゃないか、こうじゃないか」と語り合える、

空想の余地のある、「隙間」のある文章なのかもしれません。