東海村の将来を考える東海村長選
4年前の東海村長選で,私は,「いのち輝く東海村の会」から立候補し,「ジェンダー平等,東海第二原発の再稼働反対」を訴えました。対する現職・山田修氏のスローガンは「理想のまちづくり」「持続可能なまちづくり」で,さらなる開発を訴えました。その山田氏が3選されました。
今年の東海村長選は,6月議会で再稼働を明言した山田村長と,対話を通して再稼働を考えよう,住民合意をつくりあげようと訴える大名章文氏が闘っています。
東海第二原発の再稼働問題は,村の将来にかかわる最重要問題です。なぜなら,経済,教育,福祉など村民生活にとって大切な課題も,村民が安全な環境で生活が営めることが前提で,原発事故が起きれば元も子もないからです。
東海第二原発再稼働問題の背景にある国政とエネルギー政策を見ておきたいと思います。
自民党は,去年の衆議員選挙につづいて今年7月の参議院選挙でも負けて,両院とも過半数を失いました。しかし,自公議席が過半数を割ったにもかかわらず,野党には政権を取るための結束力はまったくありません。
国のエネルギー政策は,運転中二酸化酸素を出さない原発を,ゼロカーボン政策にとって有効なエネルギー源だとみなし,今年2月,エネルギー基本計画で,原発を「最大限活用」するという方針が明記されました。野党が政権をとり,エネルギー政策を転換させる見込みもないなか,原電は,既定の再稼働路線にしたがって準備をしています。
自民党政権のエネルギー推進政策と原電による既成事実づくりの上に,山田村長は,議会で村長選への出馬を宣言し,「再稼働は必要」と明言しました。山田氏は,勢いのある勝ち馬を自認し,再び村長になって再稼働を実現したいという願望をあらわにしたのです。
山田村長に村民の安全を委ねていいのか,それとも村の将来のありようを慎重に考えようという立場をとるのか,今年の村長選は,村の将来を決める重要な選挙になりました。
再稼働問題について考える材料として,東海村と同様,エネルギー生産を地域産業としてきた都市は,どんな問題を抱え,どのように切り抜けたのか,それは成功したのか,見ておきたいと思います。
ひとつは,旧産炭地域です。1960年代以降,石炭から石油への転換を進める「エネルギー革命」政策で,旧産炭地域は,炭鉱を強引に閉山させられていきました。夕張市は,地域再生に失敗し財政破綻したことで知られていますが,茨城県の炭鉱都市・高萩市も苦しみました。1980年までにすべての炭鉱が閉山させられ,その後,国の支援を受けながら工場を誘致し,高戸海岸のリゾート開発にも挑みましたが,リゾート開発は失敗し海辺の環境は荒廃しました。
もうひとつ,原発の廃炉都市があります。日本では,福島第一原発と第二原発の立地地域があります。大熊町と双葉町の過酷事故炉周辺は,環境汚染がひどく安全に住めなくなりました。それでも,国は,年間20mSvの汚染地域に人々を定住させるという非道の政策を取っています(写真)。
写真 双葉駅前の復興公営住宅(2025年5月撮影)
海外にも,通常の廃炉ですが,地域の主力産業の原発がなくなった都市がいくつもあります。いずれの都市も人口の流出,税収急減,行政サービスの低下など,市民生活に著しい影響が出てきます。一方で,工業団地で成功したドイツ・ルブミン村の例もあります。
原発は国策産業ですから,東海村だけは悪い影響を受けないということはありません。村の原発がいつまでもつづくこともありません。村の未来を考えて投票しましょう。
「浜ぼうふう」2025年盛夏号