竹澤恭子ヴァイオリン・リサイタル@大分 別府・しいきアルゲリッチ・ハウス 19/02
先日、大分・別府にあるしいきアルゲリッチハウスで行われた素晴らしい室内楽リサイタルを聴きに行ってきました。
日本の誇るヴァイオリニストの一人 竹澤恭子さんとそのレコーディング・パートナーでもあるピアニスト 江口玲(アキラ)さんというDUOによるこの豪華な演奏曲目は、別府アルゲリッチ音楽祭の教育的イベント「しいきアルゲリッチハウス室内楽シリーズ」ならでは。
とても楽しみにしていました。
この初めて行ったしいきアルゲリッチハウスという会場は、円形に近い平らなスペースの奥にあるピアノを中心に椅子を扇型に並べていった感じで、サロンというよりは録音スタジオ?
ピアノのpppの響きが辛うじて立ち昇る程度と極めて響きの薄い空間で、ヴァイオリンのpppの響きが美しく天井に立ち昇っていく様等は聴き取ることが出来ず、残念でしたが、逆に演奏者のやりたいことがクリアに明快に聴こえる環境。
1曲目から、生誕250周年という節目を来年に控え、盛り上がっているベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの最後の曲、第10番。
やわらかい美しさや力感のこもった歌いまわし等、聴かせ所を押さえつつも、この二人の名手が繊細な緊張感を持って繰り広げた対話は、私にとって、かなり衝撃的。。。というのも、ヴァイオリンが主体でピアノが伴奏という古いスタイルの演奏しか知らなかったため、所々のヴァイオリンとピアノのバランスに違和感あり。苦笑
でも恐らくこれが、ヴァイオリンのオブリガード(助奏)付ピアノ・ソナタという様式を正しく表現した演奏なんだと理解すると共に、この聴き応え満載の名曲を改めて認識させてくれた素晴らしい演奏に、ブラヴォー!もうこの一曲だけで、満足してしまいました。
今回のプログラムでもう一曲、考えされられたのは、後半2曲目のブロッホの「ニーグン」。
このユダヤ的な情熱的な祈りの曲を全身で奏でられた竹澤さんと江口さんを聴いて、浮かんだ疑問。
このDUOの繊細で緊張感を伴った美しさ・強さ・優しさは、日本人演奏家ならではの特質が最大限に生かされたものではないか?
それだけにこの全般にさらっとしたやわらかい肌感覚、ほのかな温かさは、西欧人演奏家からは得にくい感覚では?
2曲目のブラームスの名曲ヴァイオリン・ソナタ1番「雨の歌」、最後に据えられた超名曲フランクのヴァイオリン・ソナタは、そんな彼らが意思を込め、自由闊達に対話を積み重ねながら見事にその世界観を築き上げた円熟の演奏。特にフランクの第3楽章の最後から最終楽章にかけての凄まじいばかりの集中力・気合には、客席全体が完全に惹き込まれたほど。
しかも、ヴァイオリンが主体でピアノが伴奏という馴染み深い演奏スタイル全開だったので、私としても何の違和感もなく(笑)、酔わせていただきました。
アンコールの2曲目の「愛の悲しみ」では、思い切りウィーン風にアクセント、リズムをつけた竹澤さんのヴァイオリンも楽しく、リサイタル終了。大満足。
これまでフランク等は大ホールで聴いたことがありましたが、この狭い空間ならではの距離的な近さが生み出す感動は格別(注)。。。そして、しみじみと思ったこと。やっぱり一流の演奏はいい。わざわざ別府まで聴きに行った甲斐がありました。感謝。
また、この日のお客さんはほぼ満席の110人程度でしたが、わざわざ室内楽のリサイタルを聴きに来られるような方はかなりのクラシック愛好家ということでしょうか?演奏後の反応がちょっと控え目過ぎるとも思いましたが、全般的に素敵なステージ・マナーで好感が持てました。
ということで、この「しいきアルゲリッチハウス室内楽シリーズ」、初めて聴きに行きましたが、超おススメです。
【追記1】今年度は「ベートーヴェンがつむぐもの」と名づけられたシリーズで、演奏会の前にピアニストの伊藤京子さんが「人のつながり」をテーマにレクチャーされたのですが、クラシック音楽を地道にこの地に根づかせていきたい、この活動のDNAを次世代に伝えていきたいという熱い想いも感じられ、頭の下がる思いがしました。
(注)「狭い空間ならではの距離的な近さが生み出す感動」と言えば、かんまーむじーく のおがた主催の直方谷尾美術館室内楽定期演奏会。。。こちらも楽しみです。(前回のクァルテット・エクセルシオ「わが生涯」等の感想はこちら)
【追記2】話は音楽から離れますが、ラグビー・ワールドカップ2019開催で盛り上がっている大分県。
別府駅前のピカピカのおじさんこと、油屋熊八さんの銅像までラグビー・ジャージ姿でびっくり。
別府市が作ったこの応援動画は、50秒辺りからかなりいい出来です。是非ご覧ください。