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Tomi Ungerer

2019.02.14 09:30

2019年2月9日に、トミー・ウンゲラーさんは逝去されました。

著名な人が亡くなったときに、その名前を口にするのは自分には何処か後ろめたい気持ちがありました。

本屋をやっていて、新刊書店で働いている時からそうだったのですけれど、追悼のコーナーを作る時にも、生きている間にもっと、この作家のことを多くの人に読んで欲しかったという思いと、自分ももっと、その人が生きている間に、その魅力を人に伝えることが出来たんじゃないかと、悔しいような、後ろめたいような、そんな思いがあったんです。

でも少し前に、ある人が亡くなった際、その遺族の方が、こんな時にでも話題にしてくれるのは、あの人のことをみなが思い出して話してくれるのは、とても嬉しいものです、そう言っていたのを聞いて、考えが変わりました。

みながその名前を口にしているのは、その人の死を悼んでいるのだと、それが何だかちょっとしたお祭りのように見えても、それで良いのだと、思えるようになりました。自分が死んで、それを悼んでお祭りをしてくれるなんて、嬉しいですよね。

きっとこれから、少しのあいだかも知れませんが、全国の、いや世界中の本屋さんで、ウンゲラーの作品がいつもより多くのスペースを取って展開されることと思います。彼の死を悼んで。

そこで並べられる本はきっと喪服です。

あなたと、あなたの作品に対する敬意を、道行く人と天国のあなたにそっと示す、そしてあなたの本をそばに多く置くことで、寂しさを忘れようとしている、喪服なんです。

喪服のような真っ黒な服を着た三人組のお話「すてきな三にんぐみ」の原題は「the three robbers」(robber(強盗)の語源はたぶんrobe(ローブ)だと思うのですけれど…)。

この絵本が、きっと世界中で多くの人の目に触れると思います。

その絵本を読んだことのある人は思い出して、まだ読んだことのない人はなんだろうと、手を伸ばして。

行為だけがあり、その目的を持たなかった喪服の三人組に、美しい目的を授けたのはひとりの女の子でした。

みなしごたちの楽園をつくった彼らは称えられ、その楽園は大きくなっていきます。


むらひとたちはだれもかれも、

あかいぼうしにあかマント。

そしてみっつのたかいとうをたてた

みんなのすてきなさんにんぐみをわすれないため。


多くの寓意を含むかのように読める絵本です。

喪服のような真っ黒な服を着ているのは三人だけ、みなしごたちは赤い服。

彼らの服が喪服であるなら、彼らが喪ってしまったもの、つまり失くしてしまった「目的」を悼む服だったのでしょうか。

そして目的は取り戻され、喪服は脱ぎ去られました。

世界中の本屋から、ウンゲラーの本がまたいつもと同じ場所に収まる頃には、わたしたちは喪服を脱ぐ事ができるのでしょうか。

この美しい本を、より多くの人に知ってもらい、その心の中に「みっつのたかいとう」を建てることができて。

トミー・ウンゲラーの死を偲び、当店もウンゲラーの本を多く、オンラインストアに並べております。

日本ではあまり見る機会の少ない絵本作品ではないものも多く、30冊近くは並べております。ご覧頂ければ幸いでございます。

当店のウンゲラーの本はこちらです。


トミー・ウンゲラーさんのご冥福を心からお祈りします。