【水曜の自分語り】突風とアカペラと一体感
2025.08.19 20:00
ある夏の日のホテルのプールサイド。
陽も落ちてきて、キラキラと揺れる水面にはライトが照らされています。
BBQの香り、笑い声、グラスの氷が鳴る音。
そんな中、私たちはギターデュオで音楽を届けていました。
何曲か演奏して、お客さんも盛り上がってきた頃、
曲の途中、突然「ギュッ」という小さな音がして、伴奏が止まりました。
私は歌を続けながら、何が起きたのか瞬時に探ろうと少し振り返りました。
視線の先では、ギタリストがギターを抱えたまま動けずにいました。
実は台風前の突風で、鉄の譜面台が彼のほうに倒れてきていたのです。
反射的にギターを守る形で受け止めたため、そのまま弾くことができなくなっていました。
さらに突風は譜面をも巻き上げ、飛びそうになる紙を必死に押さえる彼。
慌てて異変に気付いたアシスタントの子が駆け寄り、
重たい譜面台を元に戻し、散らばった譜面を拾い集め、
最後にチューニングを確認して…数分間の小さなドラマが繰り広げられていました。
私はその間、アカペラで歌い続けました。
お客様は状況を察して、自然と手拍子で盛り上げてくれます。
声と手拍子だけの会場は、妙に一体感があって…正直、胸が熱くなりました。
ギターが復活し、曲を最後まで歌い切った瞬間、
大きな拍手と指笛が響き渡りました。
「すごかったよ!」と笑顔で声をかけてくださる方もいて、
ハプニングすら思い出に変わった夜でした。
突発的な出来事の中で、空気が変わる瞬間。
それは、ライブという生ものだからこそ味わえる醍醐味なのかもしれません。