正置友子先生による絵本の講演会2018
英国ヴィクトリア時代の絵本作家
ウォルター・クレインに魅せられて
ーいくつになっても、学びと旅立ちをー
主催 河内長野 子どもと本の連絡会
日時 2018年10月30日(火)
場所 河内長野市立市民交流センター キックス
講師 正置友子(まさきともこ)
昨年の10月に行われた講演会ですが、もみの木文庫のスタッフも出席し、英国ヴィクトリア時代の絵本、今ある絵本の原点について勉強してきました。
講師の正置友子先生はイギリスでウォルター・クレインの絵本に出会い、その絵本のデザインの美しさに衝撃を受け、以後6年間イギリスに留学されて、約150年程前のヴィクトリア時代の絵本を研究されて、A history of victorian Popular Picture Booksと言うタイトルの博士論文をイギリスのローハンプトン大学に提出されました。ヴィクトリア時代の絵本について研究された初めての本と言えるでしょう。その後絵本に関する研究を重ねられ、絵本についての何冊かの本を出版されています。
赤ずきん 1875
今から145年前に作られたこの絵本はウォルター・クレイン(絵)、エドマンド・エヴァンス(彫刻、印刷)による傑作と言えるでしょう。
これらの絵本は全て 多色刷りの木版で一枚一枚印刷された絵本であるということから、コンピューターのない時代に当時の印刷技術がどれほど優れていたのかがよくわかります。只々驚くばかりです。
イギリスの歴史の本 1485,1864
エドマンド・エバンスによる華やかな素晴らしい挿絵です。
おかしなABC 1874
バックが真っ黒という斬新なデザインの絵本です。今の感覚ではそう思いますが、当時は背景をブラックにする技法は珍しくなかったそうです。背景を書き込む手間が省けるからです。
クレインはバックをブラックにすることによってマザーグースが持っている楽しさや不思議さ、怪しさ、可笑しさ、グロテスクさを表現していると思われます。文字は金色を使っています。
アリババと40人の盗賊 1873
それまでは絵本に絵を描くという仕事は全く評価されていなかったが、この年より“Walter Crane’s Toy Books”と、表紙に作者名を印刷して出版するようになった。絵本の絵が芸術的に評価され「絵本画家」が絵本の歴史上初めて登場した。
イギリスの古い庭園の花の幻想
ウォルター・クレイン(詩と絵) エドマンド・エヴァンス(印刷)
古いイギリスの庭園の中で、詩人、画家が夢想する。草花たちは、自分の名前に由来する人物に変装する。言葉にも絵にも、クレインのユーモアが溢れています。
150年程前の貴重な絵本の数々を見せていただしました。
コルデコット賞
アメリカ図書館協会の下部組織である児童図書館協会が、アメリカ合衆国でその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に毎年授与している賞(メダル)です。
このメダルのデザインとなったのがこの馬にまたがったジョン・ギルピンと子どもやアヒルたちです。1878
デイル初等読本 1899
当時の小学校の教科書として作られたものだそうです。
小型ながらも絵もカラーで、文字の発音に気をつけるところがカラーになっていて、見ていて楽しいです。
正置友子先生
木版画のお話をされているところです。
柘植の硬い木を掘って、いくつかのパーツをつなぎ合わせて一枚のページを小口印刷するそうです。
(正置先生にはホームページへの掲載の許可をいただいています)
ミルクしぼりの娘さん 1882
一枚の絵のために 6色、6枚の版木を使ってカラー印刷をしました。
拡大鏡で見てみると
1ミリの中に三本ほどの線を掘ってあります。
色の濃淡や、立体感は線の幅を変えて掘って表現してあります。
素晴らしい印刷技術です。
グリム童話集 1882
ルーシー・クレイン英訳 ウォルター・クレイン絵
このグリム童話は白黒印刷ですが、ページのトップを飾るビネットや飾り文字など、全て物語と関わりを持たせ、全体を緊密にデザインされています。
このような絵本の原点となった素晴らしい絵本を知っていくうちに、
今出版されている絵本への関わり方が変わってくるような気がします。
絵本て奥が深くて、なかなか面白いものです。