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ZIPANG-10 TOKIO 2020「2025年7月下旬の記録的高温は、地球温暖化の影響がなければ 発生しなかったレベル」 ~分析結果を発表~【極端気象アトリビューションセンター(WAC)】

2025.08.19 02:25

極端気象アトリビューションセンター(WAC)が、2025年7月下旬の記録的高温イベントをWAC手法により分析し、人間活動による地球温暖化の影響が確認されたことを発表しました。


アマゾン 温暖化の影響であろう…地球の至る所で森林の火災が発生…  編集局イメージ


2025年7月下旬の記録的高温について

● 7月22日~30日の日本全域および、北海道などで顕著な高温となった7月18日~26日の北日本の1500m平均気温は、7月の同時期としては1950年以降で観測された第1位の高温であった。

● 日本全域の高温イベントは、2025年の気候条件下では、約31年に1度の割合で発生し得る(約3.2%の発生確率)が、人間活動による地球温暖化の影響がなければ発生し得ないレベルだった。

● 7月18日~26日の北日本の高温イベントは、地球温暖化の影響によって発生リスクが約34倍に高まった。

● 2025年の海面水温などの自然変動も高温イベントの発生リスクを高め、特に北日本ではその影響がより大きい傾向にあった。


極端気象アトリビューションセンター(WAC:Weather Attribution Center)は、日本各地で発生した極端気象について、人間活動による地球温暖化やその他の気候変動がどの程度影響しているかを「イベント・アトリビューション(EA)」という科学的手法で迅速に分析し、その結果を公表しています。この度、2025年7月下旬の記録的高温イベントに対して、WAC手法を適用した結果を示します。


1. 分析対象イベント

2025年7月下旬は全国的に記録的な高温となり、7月22日~30日平均の日本上空および、北海道などで顕著な高温となった7月18日~26日平均の北日本上空1500mの平均気温は、いずれも7月の同時期としては1950年以降で観測された第1位の高温となりました。


この要因として、ヨーロッパ方面から日本付近へかけて亜熱帯ジェット気流に沿った波の伝播(図1a)と、北西太平洋域(フィリピン東海上)の熱帯低気圧を含む活発な対流活動により(図1b)、日本付近で背の高い太平洋高気圧が強まったことが考えられます。特に北日本では、これらの状況が顕著となりました※1(図1補足資料)。


図1 イベント期間中の大気の状況


2025年7月22日~30日平均の(a)850hPa(上空1500m。対流圏下層に相当)の気温(陰影)と500hPa(対流圏中層に相当)の高度(実線:高気圧、破線:低気圧)、(b)対流活動の指標(陰影:外向き長波放射量。負の値ほど活発)と850hPaの高度(実線:高気圧、破線:低気圧)平年値からの偏差を示す。


図1補足 図1と同じ。ただし、2025年7月18日〜26日平均(北日本高温期間)。


2. 分析結果

WAC手法※3を2025年7月22~30日の日本域高温イベントに適用した結果、この時期の1500m気温が実況の気温(19.4℃)を上回る確率は、2025年の現実的な気候条件では約3.2%であり、これは約31年に1度の頻度で発生することを意味します。平年(1991~2020年の30年)を基準とした場合、この高温イベントはおよそ172年に1度(発生確率約0.58%)という稀な現象に相当し、2025年の条件下では、直近の30年間よりも発生頻度が5倍以上高まっていたことが示されました(図2の赤実線と薄い赤色の山型の差)。


さらに、人間活動による地球温暖化が無かったと仮定した(非温暖化)気候条件では、この発生確率はわずか約0.0087%(およそ11472年に1度の頻度)となり、地球温暖化の影響がなければ、このレベルの高温現象は発生しなかったことが示されました(図2の赤実線と青実線の差、図3a)。


同様に、2025年7月18~26日の北日本の高温イベント(実況の気温は19.2℃)について同様の分析を行なった場合、平年を基準とした場合は約0.75%(およそ133年に1度)、2025年の現実的な気候条件では約3.6%(およそ28年に1度)、非温暖化気候条件では約0.10%(およそ955年に1度)となり、地球温暖化の影響によって、この高温の発生リスクが約34倍になっていたと推定されます(図2b, 図3b)。


また、2025年の海面水温などの自然変動も、日本の高温イベント発生リスクを高めたことが分かります(図2の青実線と薄い青色の山型の間の差※2、図3)。特に北日本では、この影響がより大きい傾向が見られました。


図2 WAC手法によるEAの結果


(a)日本全域(東経130-146度、北緯32.5-45度):2025年7月22日~30日、(b)北日本(東経138.75-146.25度、北緯37.5-45度):2025年7月18日~26日の記録的高温イベントに対して、WAC手法を適用した結果を示す。


横軸は日本上空(図1、図1補足資料の黄色枠内)約1500m(850hPa)の平均気温、縦軸は頻度を示す。


赤実線は現実的な(地球温暖化がある)イベント期間の気候条件下、青実線は、地球温暖化が無かったと仮定した場合(非温暖化)のイベント期間の気候条件下の頻度。薄い赤色と青色の山型は、平年30年間(1991~2020年)の(a)7月22日~30日、(b)7月18~26日の現実的な気候条件および非温暖化条件下における出現頻度をそれぞれ示す。


実測値を示す黒破線の値を超えた面積が、今回の高温イベントの発生確率を表す。


図3 WAC分析のまとめ 2025年7月下旬の高温イベント発生確率に対する地球温暖化と自然変動の影響
※1 https://www.jma.go.jp/jma/press/2508/01a/julytemp_20250801.html

※2 現実気候の平年には、近年の温暖化影響が含まれており、2025年の自然変動の影響だけを見積もることは難しいため、非温暖化気候条件の平年と2025年の山型の差から自然変動の影響を見積もります。
※3 https://weatherattributioncenter.jp/methodology/


■WAC参加研究者共同コメント

「気候変動への意識が高まるきっかけとして、まずは身近な異常気象を通じて現状を正しく知ってもらうことが重要です。日本は気象災害が多いにもかかわらず、それを気候変動と結びつけて考える習慣があまり根付いていません。今回のようにタイムリーに分析結果を発信することで、こうした認識が社会全体に広がることを期待しています。」


■研究者コメント

【渡部 雅浩 東京大学大気海洋研究所 教授】

「2023年以降、世界平均気温が異常に高い状態が続いており、この夏も猛暑になることは予想していました。従って、記録更新となる高温イベントが発生したこと自体はさほど驚くことではないと考えています。猛暑の影響は、熱中症などの健康リスクにとどまらず、農作物(コメなど)や畜産(豚、鳥など)にもみられており、来年以降も同レベルの猛暑が頻発するようであれば、即急にリスク軽減の社会対応が求められると思います。日本の天候はエルニーニョなどの自然変動にも影響を受けやすいため、短期的には猛暑にならない年も出てくることが予想されますが、温暖化傾向が続く(あるいは加速する)限り、中長期的に猛暑のリスクは増えてゆくと見ています。」


【今田 由紀子 東京大学大気海洋研究所 准教授】

「7月の日本の月平均気温は、6月に引き続き、統計開始(1898年)以降最も高くなりました。地点別では、7月30日に兵庫県柏原でこれまでの史上最高気温を上回る41.2度を、さらに8月5日には群馬県伊勢崎で41.8度を記録しています。7月後半には、北海道で40度に迫る記録的高温となり話題になりました。下層から上層まで背の高い高気圧が日本を覆ったことが直接的な要因ですが、その強化には、この時期に日本の南に存在していた台風も影響していたと考えられます。


WACでは、7月後半の日本全国と北日本を対象に、即時的なイベント・アトリビューションを実施しました。この分析には、スーパーコンピュータで過去に作成された「現実の地球」と「温暖化が起きていない仮想の地球」の実験データベース、および観測データに基づく統計情報をもとに、極端高温の発生確率を統計的に算出する、日本に特化した新しい手法を用いています。


分析の結果、7月下旬の日本上空の気温は、直近の30年に比べて発生確率が5倍以上に高まっていたこと、また、地球温暖化の影響がなければ、このレベルの高温現象はほぼ発生し得なかったことが示されました。北日本の高温についても、直近の30年に比べると2025年は発生確率が4倍以上となっており、地球温暖化がなかった場合と比較すると、発生リスクが約34倍になっていたと推定されました。


直近の30年に比べて2025年の発生確率が高くなった要因としては、ここ数年の地球温暖化の影響に加えて、2025年の海面水温等のゆっくりとした自然変動が影響を与えていたことも分かりました。


これらの数字は科学的根拠に基づいて算出された結果になります。地球温暖化の影響を実感し、正しく理解する一助となることを期待しております。」


極端気象アトリビューションセンター(WAC:Weather Attribution Center)は、日本各地で発生した極端気象について、人間活動による地球温暖化やその他の気候変動がどの程度影響しているかを「イベント・アトリビューション」という科学的手法で分析し、その結果を公表しています。


WACは気象学、気候科学の専門家らによる中立なブランドです。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)にならい、政策や意思決定に資する(policy relevantな)知見を提供することおよび、極端気象の様相と背景にある地球温暖化や自然の気候変動との関係を広く市民に知っていただくことを目的としています。WAC自身は特定の政策や意思決定の示唆(policy prescriptive)はせず、極端気象に対する気候変動の影響を「見える化」し、気象予報士やリスクコミュニケーションの専門家とも協働して、科学的な分析情報を迅速に発信します。


WACが用いる分析手法は、WACに参画する研究者らが独自に開発したもので、その詳細については学術論文として公表しています。本手法では、観測データや客観解析データの解析に加え、文部科学省の温暖化研究プログラム( https://www.jamstec.go.jp/sentan/ )で創出された大規模気候シミュレーションd4PDF( https://www.miroc-gcm.jp/d4PDF/ )のデータを活用することでイベント・アトリビューションを実施します。
https://www.weatherattributioncenter.jp


【分析手法について】

WAC手法について詳しくは、下記の「分析手法について」をご覧ください。
https://weatherattributioncenter.jp/methodology



鎹八咫烏 記
石川県 いしかわ観光特使
伊勢「斎宮」明和町観光大使


協力(敬称略)

紅山子(こうざんし)


※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。



アーカイブ リンク記事をご覧ください。


アマゾンの森の現状をレポート


熱帯森林保護団体(RFJ)は、アマゾン熱帯林の保護とその地に暮らす先住民族の支援に取り組む、国際協力団体(NGO)です。


当団体スタッフは毎年現地を訪れ、先住民と生活を共にしながら、現場で何が必要とされているかを考え、様々な支援事業を展開しています。


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ZIPANG-7 TOKIO 2020『アマゾン先住民族から南研子へ 深い絆と感謝のアート展 Ⅱ 』 9月8日より開催 帰国したばかりの南研子が語る!アマゾンの森の現状をレポート
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「海洋ごみ(ビン・ガラス)」の再資源化

瀬戸内海の地域共生と豊かな彩りを目指して


瀬戸内海の地域共生と豊かな彩りを目指して
海洋ごみ問題解決に向けて活動するNPO法人クリーンオーシャンアンサンブル


海洋ごみ回収にかかる課題

海洋ごみは、生態系を含む海洋環境の悪化、漁業や観光への影響など、様々な問題を引き起こしており、世界全体で取り組むべき課題となっています。


2022年の経済協力開発機構(OECD)の報告によると、2019年には170万トンのプラスチックごみが海洋に流出していたとされています。


また、2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超え、2060年までには世界で排出されるプラスチックごみの量は約3倍となり、そのうちリサイクルされるプラスチックごみは5分の1以下になると予測されています。


(詳細・画像は下記のURLからご覧ください。)


ZIPANG-7 TOKIO 2020「海洋ごみ(ビン・ガラス)」の再資源化について協働開始!瀬戸内海の地域共生と豊かな彩りを目指して
https://tokyo2020-7.themedia.jp/posts/50008804



温暖化の報道をより身近に

異常気象を当たり前にしない


この度、日本における極端気象について人間活動による温暖化やその他の自然変動の影響を迅速に定量化し、従来にない圧倒的な早さで社会に発信することを目的として、「極端気象アトリビューションセンター(WAC:Weather Attribution Center)」が発足し、2025年5月20日(火)に発足発表会を開催されました。


【WACメンバー(敬称略、登壇順・五十音順)】

渡部 雅浩 東京大学大気海洋研究所 教授

2000年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。ハワイ大学研究員、北海道大学准教授を経て現職。専門は気候科学。日本気象学会学会賞、日本地球惑星科学連合西田賞、文部科学大臣表彰など受賞多数。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書執筆者。著書に『絵でわかる地球温暖化』(講談社)など。


今田 由紀子 東京大学大気海洋研究所 准教授

2010年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。東京大学や東京工業大学での研究期間を経て2014年より気象研究所に所属。季節予測モデルを用いた予測可能性研究や水文分野への応用研究、異常気象研究、気候変動・地球温暖化に関する研究を専門とする。日本気象学会の賞や日本地球惑星科学連合西田賞など受賞多数。国際的には、WCRPのLight House Activityなど複数の委員を務めている。


高橋 千陽 東京大学大気海洋研究所 気候システム研究系 特任助教

名古屋大学大学院環境学研究科博士課程修了。博士(理学)。気象予報士。海洋研究開発機構や東京大学での研究員を経て現職。専門は、極端気象や気候変動に関する研究。


森 信人 京都大学防災研究所/横浜国立大学 教授

岐阜大学工学研究科博士課程修了。博士(工学)。電力中央研究所主任研究員、大阪市立大学講師、京都大学防災研究所准教授を経て現職。日本気象学会学会賞、土木学会海岸工学論文賞、文部科学大臣表彰など受賞多数。IPCC第6次評価報告書日本政府査読者。専門は極端災害の評価。


(詳細・画像は下記のURLからご覧ください。)


ZIPANG-10 TOKIO 2020日本における極端気象について迅速なEA分析と情報発信を目指した「極端気象アトリビューションセンター(WAC)」が発足!~異常気象・温暖化の報道をより身近に~
https://tokyo2020-10.themedia.jp/posts/56904581/



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