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東欧とバルト三国の成長性

2019.02.15 07:06

今後の成長市場として東欧、バルト三国は非常に重要だ。

ASEAN諸国と比べれば人口は少なく、交通インフラも既にかなり進んでいるため、GDPを急激に押し上げる要因は期待出来ないが、その分安定性も高く、そして西欧、中央アジア、中東、ロシアという巨大市場に隣接している地理性もあり、日系企業含め多くの製造業が進出している。

自転車、LRTなどの公共交通機関、徒歩の融合が極めて高いレベルで達成されているのはやはり欧州諸国、そしてアメリカのポートランドが有名である。

LRTは欧州で非常に発展しており、例としてハンガリーやポーランドは1日券などの乗車券を提供しており、都度乗車券の提示が不要であり利便性が極めて高い。

もちろん無賃乗車には高額の罰金制度が課されるため、駅員がいなくとも抑止力として効果が高く、車掌も不要であり運営コストも低減可能である。

欧米では早い段階でモータリゼーションが到来し、路線バスなどの公共交通手段から自家用車に移動手段がシフトしたが、近年では環境対策や少子高齢化などの社会情勢により市内中心部回帰が顕著になっており、自転車専用レーンの整備やLRTの導入など交通機関が大きく発展している。

欧州の鉄道人気は日本よりも更に一般市場に浸透しており、その市場も大きいため、日本の鉄道沿線を欧州の鉄道愛好家に宣伝することで新たな観光需要を掘り出す事が可能かもしれない。


東欧最大の国土を誇るポーランドの首都ワルシャワ

中国の一帯一路プロジェクトもポーランドを通過するためシルクロード物流の重要拠点でもある。農産物の生産量が多いヨーロッパにとって、中国市場は輸出市場として大きな市場であり、またポーランドは小麦などの農産物に加えて銀の生産地でもある。

東欧諸国は1990年代の社会主義体制からの移行を機に市場開放が進み外資の誘致により大きな発展を遂げて来た。

ポーランドは地理的にドイツに隣接するため、西欧諸国や日本、韓国などを含めた多様な国からの自動車をはじめとした製造業の誘致に成功し、工業化が進んだ。

東欧最大の人口と国土を有し、安価な労働力と地理性を武器に、生産、流通拠点として発展し、東欧諸国間ではハンガリーと同様に非常に高い経済水準に達している。

以前は物価の安さに定評のあった東欧諸国だが、現在はすでにポーランド、特にワルシャワの物価は東欧諸国ではブタベストと並んで高く、日本とさほど物価の違いは見られない。もちろんそれでも西欧、北欧よりは安価な事は間違いない。

特に欧州では良く見られる傾向だが、ワルシャワの宿泊施設は供給数もさほど多くないため、東欧の物価の安さをイメージして訪問すると都市の素晴らしい発展度も含め驚く場合が多いだろう。

ポーランドは欧州の中でも随一の親日国として有名であり、日本語学習者の数が多く、そうした面も日本企業の進出の一因になっている。

英語の通用度ではブダペストやバルト三国の方が通じる感はあるが、人は皆親切で非常に良い印象が強い。

ワルシャワと日本間では直行便が就航しており、10時間ほどで行き来可能になっている。

ワルシャワ以外にも観光地として絶大なる人気を誇るクラクフや北部の港湾都市グダニスクなどへは高速列車で簡単にアクセス可能であり、オンライン予約も提供されている為、外国人観光客にとってもストレスなく鉄道予約が可能になっている。

また工業以外にも農業が盛んであり、広大な面積を誇る農業地からは砂糖の生産とライ麦が有名だ。

実際、ポーランド、特に北部のグダニスクなどではパン屋が非常に多く、豊富な種類が驚くほど安価で販売されており、国内の質の高いライ麦を使用するからか、どのパンも値段からは想像もつかない高品質である。

寒冷な気候で栽培される小麦の産地としてヨーロッパは有名であり、パン食文化は広く根付いているが、その中でもポーランドのパンの豊富さは素晴らしい。

エネルギーにおいては石炭の生産が豊富であり、火力発電によって国内電力の大部分が賄われている点は、ロシアからのエネルギー資源輸入の割合が大きい他欧州地域と異なる点だ。


東欧の真珠と呼ばれるハンガリーの首都ブダペスト

その街の美しさは実際に訪問すると想像を遥かに超える素晴らしさであり、市内中心部のLRT導入による交通利便性の高さは居住者、観光客問わず訪問者に快適な移動を都市環境を提供している。また、温泉の街としても有名で、地熱発電が盛んな地域だ。

ブダペストの地下鉄車両は老朽化が著しかったが、デザイン性に富んだ新型車両が導入された。

東欧のハンガリーはヨーロッパの中央に位置し、近年はWizzAirなどんLCCが多く就航している事から中東からのアクセスも良く欧州のハブ都市として存在感が増している要注目都市の一つ。

ポーランド同様外資系自動車産業、部品メーカーが多く進出し、自動車産業はハンガリーの基幹産業の一つとなっており、多くの日系企業も進出。

ハンガリーは温泉地としても有名であり、早朝からオープンしている店舗もあり、市内中心部は外資系資本も多く、国内外の観光客で活気付いている。

又公共交通機関24時間乗り放題などのパスも販売されており、市内を縦横無尽に走るトラムが観光客及び地元民の交通利便性に大きく寄与している。

空港で24時間券を購入し、そのままバスと地下鉄で市街地へ行き、中心部はトラムを利用、全てパスで乗り放題なのは観光客への利便性としても非常に優れていると言える。

又観光に加えて、高い歯科医技術と安価な医療費のために、近隣ヨーロッパの他の国から多くの歯科治療患者を引きつける事に成功しているようだ。

シェンゲン圏内なので、出入国手続き不要で行き来出来れば例え航空券代を払っても十分メリットが享受できるという事だろう。

しかも、欧州のLCCはライアンエアーや WizzAirなど国外便でもほんの数千円の便も多数ある為、歯科治療で海外へ行くという選択肢も十分に合理的な選択となり得る。

ハンガリーは日本同様国民皆保険制度を提供しており、また積極的に海外から多くの医学部生を誘致している点が挙げられる。


ウクライナ

ウクライナは人口4500万人と広大な国土を持ち、ロシアに次いでポーランドと同様に東欧最大規模の国であり、穀倉地帯として知られ、農業生産ではひまわり油、小麦、とうもろこしなどの豊富な生産力を誇る。

農業以外にも林業、鉄鋼業が発達し、石炭の算出もあり、エネルギーでは石炭及び天然ガスによる火力発電が国内エネルギー消費で原子力と並んで大きな割合を占めており、エネルギーの多角化のため、太陽光発電を含めた再生可能エネルギーに対する投資も進んでいる。

また安価な労働力と優れたIT産業の発展から、近年ではソフトウェア開発含めIT産業のアウトソーシング及び開発拠点としても存在感を高めている。

首都キエフ以外にも黒海に面したビーチリゾート都市オデッサ、世界遺産都市リビウなどを有し、今後の経済成長が期待される国の一つだ。

日本からのアクセスはロシアや北欧経由が主であり、中東、東南アジア経由だとバンコクからでも10時間ほど、ドバイからだと4時間程必要になり、アクセス面が訪問時のネックでもある。

政情不安などから通貨が暴落したが、豊富な穀倉地帯を要する他ファンダメンタルの経済力は決して弱くはなく、通貨価値は将来的には回復するだろう。

実際キエフを訪れると、国産品の生産が豊富からか、スーパーなどの品揃えも極めて豊富ですし、滞在中には通貨暴落の影響はほぼ感じられない。

交通インフラも地下鉄、路線バスと整備されており、どう考えても暴落後の通貨価値が経済力を反映しているとは思えない。

また8月終盤になると北欧、欧州北部は気温が下がり、曇りがちになる一方、ウクライナは天候が良いのでそうした面からもウクライナの地理的重要性は大きい。

ウクライナと日本企業の関わりとして、ウクライナの地下鉄整備事業において、伊藤忠商事は、ブレーキシステム他鉄道部品の供給などを担当

住友商事は農業肥料、農薬などのウクライナにて農業資材市場の圧倒的シェアを誇るSpectr-Agro社の主要株主である。


トルコ

アフリカ、中東、欧州の中心地に位置し、商業の中心地として昔から現在も基点となっているトルコ

上記の地域に渡航する場合、非常に多くの航空路線がトルコ経由になっていることからもトルコの地理的優位性が強く感じられる。

イスタンブールに要する2つの空港、特に国際線の就航が多く、市内中心部から地下鉄直結でアクセスの良いアタチュルク国際空港の利用者数は膨大であり、市内近隣に位置する立地性から空港の拡張が困難であり、以前からキャパオーバーが問題となっていた。

同じくアジアのハブ空港であるタイバンコクのスワンナプーム空港の現状と似ている点がある。

アタチュルク空港を利用した経験があるが、深夜着でも入国審査の行列が凄まじく、自身の膨大な渡航経験の中でアタチュルク空港が最も時間がかかった記憶がある。

バンコク同様、多様な地域からの訪問者が多いため、訪問目的も多様になりビザの種類も複雑多様化するため、訪問者数の多さに加え、一人当たりの書類チェック時間に時間がかかる事が長蛇の列の一因だろう。またもう一方のサビハギョクチェン空港も相当な利用者数で賑わっており、トルコの訪問者数の多さがわかる。

アタチュルク空港の運営を引き継ぐため完成後は世界最大規模となる予定のイスタンブール空港の運営が開始されており、今後は国際線の利用時はこの新空港がメインとなる方向だ。

広大な国土の為、農業が盛んであり、かつ地域により気候が異なる特色を生かし多様な農産物が生産されている。

また製造業では自動車産業が盛んであり多くの外資系自動車製造会社が同地域の地理的優位性も踏まえて進出

トルコリラの急激な下落によって、トルコの割安感が際立ち、観光業および自動車輸出にとっては好材料だと言えるが、逆に対外債務の支払い負担、エネルギーの輸入コスト、自動車基幹部品の輸入コストなど増加するコストが経済成長を妨げる懸念もある

地下鉄、路線バス、市内中心部はトラムなど交通インフラの整備は申し分なく、更に国内の人口も8千万人弱とトルコ市場の優位性は非常に大きく、通貨安を機に不動産などのトルコ国内資産への投資資金が流入しそうだ

トルコの医療水準は非常に高く、メディカルツーリズム市場も注目されており、日本の双日はイスタンブールの巨大医院の運営に参画


バルト三国

日本から遠い印象のあるバルト3国だが、隣国のフィンランドやポーランドには日本からの直行便が就航している為、両国を通してのアクセスは意外にも容易だ。

三国とも人口が少なく製造業などの労働集約型産業での発展は難しい為、情報産業、医療、バイオなどの高付加価値産業の創出に積極的に取り組んでいる共通点が見られる。

シェンゲン協定に加盟済みであり、通貨もユーロを導入している為、バルト3国間の移動も国内移動感覚で行える。


エストニア 首都タリン

電子国家エストニア 

世界中から起業家を惹きつける電子国家としてエストニアが知名度を急速に増している。

実は日本から北欧は欧州地域でも最短距離であり、フィンランドと東京間などで直行便が就航しており、今後も需要が拡大するであろう航空路線である。

エストニアは社会主義からの離脱意向、積極的に市場を開放し、また国内リソースを情報産業に集中投資した結果、IT立国として世界中から注目される電子国家となり、小国ながらバルト3国では抜きん出た経済力を誇っている。

フィンランドからは高速フェリーで僅か1時間半前後で行き来が可能であり、北欧諸国との物価の差から海外からの多くの消費と投資を呼び込み急速に発展してきた。

またエストニアはシェールオイルの生産が同国の強みの一つとなっている。

エストニアの魅力としてシェンゲン協定加盟国の為、当然圏内地域の行き来は自由であり、西欧や北欧と比較して物価も安い魅力がある。

EU市場を見据えてエストニアに拠点を構える企業や起業家が続々集まり、クラスター効果で存在感を急速に高めている。

人口で言えば沖縄とほとんど同等であり、都市、自然環境は全く異なれど、人口密度が低く、行政管理効率の上昇を見据え電子化が進んだエストニアの背景は沖縄も参考になる点があるのかもしれない。

治安も良く、英語の通用度も極めて高く、空港から市内中心部も近くコンパクトな為、ビジネス以外の居住環境面なども多くの移住者を惹きつける要因の一つだ。

E-residency保有者であれば外国人でもエストニアでの法人設立はオンラインで僅か20分足らずで完了、登記費用も格安、税率はフラットタックスで20%の配当課税のみである。

効率化つ透明なビジネス環境を求め世界中から企業が参入するのは当然とも言える。

E-residencyを所得し、法人設立をしても就労には別途ビザの申請が必要であるし、口座の開設も現地銀行での対面申請が必要な様だが、スタートアップビザなど多様な制度を用意している様なので今後も迅速に時代のニーズにあった柔軟な制度を次々と打ち出す事が期待される。

またラトビアやリトアニアへもバスで低価格で簡単に行き来が可能であり、両国もエストニアの後を追うように多様な政策を実施し、国力を高めている。


ラトビア リガ

ラトビアはバルト3国最大のRIGA空港および港湾を誇り、ロシアとをつなぐ鉄道網の整備など欧州とロシア間の物流拠点としてその存在感を持っています。また製薬産業も国際競争力を持っている主要産業の一つ。エストニア同様英語の通用度が高く、ロシア語を話せる人材が多い点もラトビアの大きな優位性として挙げられる。

またラトビアもリトアニアも金融危機の影響及び不動産バブルを経験しており、緊縮財政を強いることによって危機を乗り越えた経緯をもっており、安定した市場環境は海外からの投資を招く要因になっていると推測できる。