アスベスト調査義務化の経緯とマンション管理組合の対応
2022年から工事規模を問わず必須となったアスベスト事前調査。1970年代からの規制の経緯と、管理組合が注意すべきポイントを解説します。
かつて「奇跡の鉱物」と呼ばれ、耐火性・断熱性・防音性に優れていたアスベスト。しかし、その健康被害が明らかになり、2006年には全面的に使用が禁止されました。
アスベスト問題は、単なる「建物の老朽化対応」ではなく、人の命に直結する安全管理の課題です。そのため、国は段階的に規制を強化し、2022年からは「事前調査結果の提出義務化」という形に至りました。
※ 建物設備の修繕・更新については、
「マンションの建物設備と修繕の基本|管理組合が押さえる実務ポイント」
に整理・統合しています。
1.アスベストが使われた可能性のあるマンション
築年数の目安
1990年頃までの建物 → 含有の可能性が比較的高い
1990年~2006年 → 使用は減少傾向だが一部残存の可能性あり
2006年以降 → 原則として新規使用なし
使用されやすい場所
吹付け材(天井裏・機械室)
断熱材、保温材(配管まわり)
内装材(床材、ビニルタイル、接着剤)
外壁の仕上げ材(ボード類)
2. 健康被害とリスク
アスベストの飛散が問題
建材として固まっている状態ではリスクは低い
改修工事・解体工事で飛散することで吸入の危険性
主な健康被害
石綿肺
中皮腫
肺がん
3.事前調査の法的義務化
2014年 石綿障害予防規則の改正
解体・改修工事前にアスベストの使用有無を確認することが規定された。
2020年 石綿則・大気汚染防止法の改正
調査対象を拡大(レベル3建材=成形板材・ビニルタイルなども含む)
工事の規模に関係なくすべての建築物で事前調査が必須に。
*事前調査が必要な工事の範囲(2022年4月から)
・建築物や工作物の 解体工事(規模に関係なく対象)
・改修工事(壁・床・天井の張り替え、設備更新など)
・建築材料の 取り外し・切断・研磨 を伴う工事
つまり、たとえ小規模なリフォーム(例:浴室リフォーム、内装張替え、配管更新など)でも、アスベスト含有建材を扱う可能性があるため、事前調査が義務付けられています。
2022年4月から
事前調査結果を労働基準監督署や自治体に届け出ることが義務化。
調査は原則として「石綿含有建材調査者」という有資格者が実施。
4. マンション管理組合・居住者が押さえるべき点
・工事発注時のポイント
業者に「事前調査の結果報告書」を必ず提出させる
「資格者による調査」かどうかを確認
調査結果に基づき、安全対策や追加費用の有無を把握
・工事後のトラブル防止
調査を怠った場合、管理組合や理事会が「安全配慮義務を果たさなかった」と責任を問われる可能性あり
調査結果を保管し、居住者にも情報を共有することが安心につながる
👉「事前調査結果を工事業者に提出させる」というのは、法律で定められた義務であり、居住者と工事関係者の健康を守るために不可欠な手続きということになります。
▲規制の歴史