鈴木竜「AFTER RUST」横浜赤レンガ倉庫1号館 3F
横浜ダンスコレクション2019「ダンスクロス(Dance Cross)」として上演された2作品のうちの1つ。
日本初演。
昨年30歳を迎えた鈴木竜氏が、踊るよりも振り付けやダンスを教えることが増えた自分の身体が「さびて」いくのを意識したことから創作したソロ作品。
プログラムに鈴木氏が、金属はピカピカの状態が本来の姿ではなくさびているのが自然な姿なのだから、自分の体も自然な状態に戻ろうとしているだけで、そうだとするとさびた感覚は劣化ではなく進化なのかもしれない、と書いているのが面白い。「さびついた体の方が自然な状態」なのは、体を使うことをしないで過ごしている者にとっては自明だが、ダンサーにとってはそうではないのか、という驚きを覚えた。その「さび付いた体」を「進化」と捉えようとする意識もとても興味深い。
創作のコンセプトは興味深いのだが、ダンスとして深く感動するところまではいけなかった。おそらく、見る側の私の感覚が研ぎ澄まされていなかったことにも大きな要因があるだろう(眠かったのだ・・・)。
だらしなく垂れてしまう腕、情けなく床に転がってしまう体をあえて見せようとするのが面白い。ユーモラスにも見える。「artificial(人工的な)」という言葉が音声で流れるところでバレエの腕のポジション「アン・バ」をしているのには笑ってしまった。その言葉が早口で連続して流れると、腕の動きが追い付かなくなる。いやあ、体がついていかないですよねえ(笑)、と、一流のダンサーなのに素人の観客に親しみを覚えさせてしまう。そう考えると、なんだか新しいような気がするし、勇気もある気がする。自信があるからこそ、こういうダンスもつくれるのかもしれない。
さびた鉄のように見える短い棒が床にたくさん挿してあり、動き回って踊りながらそれらを倒してしまって、金属音がするのも面白い。最後に生け花のようにその棒を丸いオブジェのようなものに挿していた。自分の身体の中の「さび」を集めて、よく見つめてみようとする態度の表れだろうか。
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振付・出演・美術・テキスト:鈴木竜
協力:eltanin、NPO alfalfa、リリュー・ラ・パプ国立振付センター
2.15 [fri] 19:30 2.16 [sat] 15:00 2.17 [sun] 15:00
「ダンスクロス」は、横浜ダンスコレクション「コンペティションⅠ」の「若手振付家のための在日フランス大使館賞」受賞者と、2018年度ヴィラ九条山レジデントのフランス人アーティストによる作品を上演するもの。
アンスティチュ・フランセ日本とのパートナーシップによって開催。
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※下記画像は下記サイトより。