スペシャルタレントのためのセミナー&相談会 (2) 報告
2019年2月17日 (日) に行われたセミナー&相談会のご報告です。
ご参加者の皆様、ご来場頂きまして誠に有難うございました。
今回から、みなとバラの会 (港区精神障がい者家族会) の皆様もご参加頂き、対談形式でセミナーを行いました。さまざまな事例が出る中で、参加者全体で解決策を一緒に話し合う時間もたくさんありました。各方面から専門的な意見もあり、非常に有意義な機会となったのではないかと思います。
プライバシー保護のため、詳しい事例は省略させて頂きますが、今回のお話のポイントをまとめました。
① こころの病には、スペシャルタレントの特性が隠れていることも
多くのこころの病は、大きなストレスによって発症することが多いものです。通常は、ストレスを感じると、趣味など好きなことをしたり、気分転換したりと、ストレス処理を行うものです。なるべくストレスを溜め込まないように、切り替えしながら、少しずつ発散しているのです。
しかし、スペシャルタレントの人たちは、このストレス処理が非常に苦手であることがほとんどです。記憶力が良いために、嫌なことを忘れることができなかったり、原因を探ったり余計なことにこだわってしまうために、なかなか抜け出すことができません。これは、ストレス脆弱性とも言われますが、スペシャルタレントの人が、他の人よりもこころの病にかかりやすいのは、ストレス処理が極端に下手なことが原因のひとつとして考えられます。
また、この特性を正しく理解していないがために起こった、2次障がいとして考えることもできます。これは重ね着症候群とも言われますが、根幹のスペシャルタレントという特性の上に、上着を重ね着するように、さまざまな病や障がいを抱えている状態です。こうなると、一番上の見える症状についての治療はされるものの、一番下にあるスペシャルタレントの特性に気づかずその対策をしないため、根本的な解決には至らないことが多いのです。治ったと思っても、また別の上着を羽織るように別の病を患ったり、何度か繰り返すのはこのためでしょう。根幹にあるスペシャルタレントの特性に対する対策が必要です。
② 2次障がいの原因には、日本の文化や風潮が関係している
日本は、個性を尊重するよりも、協調性を重視する国です。「普通が一番、みんなと一緒がいい」。常に周りに同調し、同じ服を着て同じ髪型をする、流行に乗る、そうすると安心できる国民性なのです。しかし、スペシャルタレントの人は大抵、そういったことが苦手です。集団が得意ではなく、みんなと一緒はイヤ、ごまかして同調することができないし、自己主張が正しいと思っている人が多いのです。これは海外では有利に働くことが多いですが、日本で、こういった特徴は決して有利ではありません。
評価されるはずのスペシャルタレントの個性は、日本では無視されたり、ないがしろにされたりすることが多いのは事実でしょう。こうして子どものころに個性を否定されると、大きなネガティブな感情を生み出します。「自分は何か変だ、何か違う」というモヤモヤしたものが次第に大きくなります。こうしてマイナス面だけに注目してしまうと、自己肯定感が低下し、あらゆることに対してネガティブになります。周りも、つい褒めることより叱ることが多くなってしまうことでしょう。
こうしたことがきっかけで、学校や社会で生きづらさを感じてしまう。こころや身体に不調をきたすようになる。これが2次障がいなのです。つまり、特性に対するマイナスな印象や感情を生み出す、周りの環境も大きく影響しているのです。
③ スペシャルタレントについて
スペシャルタレントの特徴については、配布した資料や過去のブログ記事を参考にしていただければと思います。
(知人や家族など、スペシャルタレントの傾向があるか、有名人の例などを挙げてディスカッションとなりました)
④ スペシャルタレントの特性が良くない方向に進んでしまった事例
前述のように、2次障がいとして、こころや身体の不調が現れることもあります。また、考え方や行動パターンに偏りが見られるために、対人関係などでトラブルが起きやすい、パーソナリティー障がいと言われるケースも、スペシャルタレントの特性の方向性に問題があることに起因していることがあります。
例えば、こだわりが強すぎて、家族や他人にそれを強要してくることがあります。それが通らないと怒りが爆発したり、暴言や暴力につながることもあります。周りから見ると、急に怒ったり気分が変わるので「一体なんなの?あの人変」としか思われませんが、実際は本人なりのこだわりのルールが存在するためなのです。この特性を自覚していないために、他人とのズレの中に不満や怒りを感じます。それは結果として、考え方や行動パターンにある偏りがより顕著になることで、パーソナリティー障がいなどと診断されることもあるのではないかと考えています。
つまり、こういったパーソナリティー障がいと言われる人たちの中には、スペシャルタレントの特性が隠れていて、本人も苦しんでいる状態かもしれないということは知っておいた方がいいでしょう。さらに、本来であれば、本人の自覚が最優先ですが、もちろん難しいこともあります。その場合、家族など周りの人が特性について理解することが近道です。お互いにいざこざを避けるために、一定の距離をとり、対処方法を学ぶ必要があります。それでも対処が難しい場合は、無理せずに第三者に任せるなどの判断が重要です。家族など近しい人であればあるほど、事情を複雑に悪化させていることも多々あります。
(経験談として、参加者の方から具体的な事例をお話して頂きました。職場での対応、また家族としての本音などに対して、皆さんで解決策についてディスカッションとなりました。)
⑤ クロスエデュケーションという考え方
スペシャルタレントという特性に対して、当事者のみならず、家族や周りの人も意識していただきたいのは、クロスエデュケーションという考え方です。こちらについては配布資料、過去のブログ記事を参考にしていただければと思います。
(具体的な取り組み方法について、家族、同僚、教育者としての意見がありました。)
⑥ アニマルセラピーについて
現在、こころや身体のさまざまな病において、アニマルセラピーが非常に有効であるとされています。こころの病を抱える人たちの中には、いわれのない差別や偏見を受けることもあり、また、有効な治療法もなく、社会復帰や自立が困難であるケースが目立ちます。こういう中で、動物とのふれあいは大きなメリットを生み出してくれます。前向きになったり励まされたりするだけでなく、治療の一環として、QOLの向上や社会的スキルのトレーニングとしても活用されています。くわしくは、ブログ記事を参考にしていただければと思います。アメリカでは実際に、アニマルセラピーによるサポートで、こころの病を抱える人がたくさん救われており、その研究も進められています。
日本でも、こころや身体の病や障がい、そして悩みを抱えるスペシャルタレントの人に、こうした専門的なアニマルセラピーが早く普及するように、私たちERRCや、みなとバラの会が積極的に働きかけていきたいと思っています。
★ カウンセリング
ERRCでは、土日に無料カウンセリングを行っています。みなとバラの会でも、毎月第2水曜日に家族会の中で無料個別相談を受けています。
悩んでいることが少しでもありましたら、できるだけ早く誰かに相談することが重要です。とりあえずお話して、少しでも楽になって頂ければと思います。お気軽にご相談ください。
お電話:080-3345-1370
Eメール:errcjapan@gmail.com