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ほととぎす

2025.09.25 06:02

https://www.ffpri.go.jp/snap/2025/7-hototogisu.html 【自然探訪2025年7月 ほととぎす 鳴きつる方を】より

初夏から盛夏の森林に良く響くホトトギスの声は、昔から人々に親しまれていました。ホトトギスの声は夏の訪れを感じさせるものとして古くから詩歌に読まれています。

 ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる

小倉百人一首にある後徳大寺左大臣のこの和歌は、明け方にホトトギスの声を聞いて、その方向を見たけれども、鳥の姿は見えなかったというもので、季節感にあふれるものです。

後徳大寺左大臣は藤原実定(ふじわらのさねただ)のことで、平安時代後期の歌人です。また、それよりも古い時代の歌集である万葉集では、ホトトギスの和歌は150首以上も詠まれていますが、これは万葉集に出てくる動物の中でもっとも多いものです。

ホトトギスはカッコウ科に属す全長28cm程度の鳥で、翼と尾が長く、スリムな姿をしています(写真1)。頭部と背中は灰色、翼と尾羽は黒褐色で、胸と腹は白色に黒い横縞があります。日本では北海道から九州までの森林に夏鳥としてみられ、5月中旬ごろに南方から渡来します。早朝から日中によく鳴き、夜間にも鳴くこともあります。鋭い短音が5音か6音連続するキョッキョッキョキョキョキョという声(注1)を「天辺かけたか」や「特許許可局」などと聞きなしますが、「ホトトトギス」と聞くこともでき、これが名前の由来となっていると考えられます。漢字では、杜鵑、不如帰、子規、郭公など、多くの表記がありますが、5月半ばに渡ってきて、田植えの時期を告げるということで「時鳥」と書かれることや、「卯月鳥」(うづきどり;旧暦4月に鳴くことから)の別名もあります。

私たちが森林性の鳥類調査をする際にも、ホトトギスの声はよく聞くけれど、樹木の茂った枝葉の中で姿を見かけることがそれほど多くないので、冒頭の和歌もこれをよく表しています。

ホトトギスはカッコウと同じく、他の種類の小鳥の巣の中に卵を産みこんで、育てさせる「托卵」という習性をもっており、ホトトギスはおもにウグイスの巣に卵を産みます(写真2)。ウグイスの巣の中で卵からかえったひなは巣の主であるウグイスの卵を背中で押し出して巣の外に捨てて、ウグイスの親鳥から与えられる餌を独占して成長します(写真3)。ホトトギスは自ら子育てをせずに、産卵にエネルギーを集中して投資するため、一夏に10個から15個も卵を産むと推定されています。秋になるとホトトギスは南方へ渡り、東南アジアなどで越冬します。

なお、小倉百人一首にはこれ以外に鳥を詠んだ歌が4首あり、ヤマドリ、カササギ、チドリ、鳥(ニワトリ)が出てきますが、これらは鳥そのものを見たり聞いたりして作られた和歌ではなく、鳥に関わる知見、伝説、故事などからの創作のようです。また、万葉集では30種あまりの鳥が詠まれ、ホトトギスと同様に季節を感じさせる題材として扱われているものもあります。万葉や平安の時代の人々が直接的・間接的に鳥を見知って和歌に詠んでいたことが伺われます

https://kanjimemo.com/all-hototogisu/ 【ホトトギスの漢字一覧! 由来まで紹介!】より

 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の性格を表す俳句として登場するホトトギスという鳥。

 漢検1級の大問5の「熟字訓・当て字」にて出題される可能性のあるホトトギスは10種類ほどですが、漢検1級でも出題されないような漢字を使ったホトトギスを含めれば、なんと15種類以上にまで上ります。

 どの表し方もホトトギスの特徴や伝説が元となっていますが、起源を辿れば5種類に分類できます。

 それらの特徴や伝説についてを解説したうえで、15種類以上のホトトギスの漢字表記の由来について一覧にまとめました!

ホトトギスってどんな鳥?

 ホトトギスというのは、以下のような鳥です。

ホトトギス(鳥)

(出典:Ron Knight from Seaford, East Sussex, United Kingdom, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

 漢字表記につながる特徴や逸話として、以下の5つがあります。

カッコウと似ている  口の中が真っ赤である  田植えの時期に鳴き始める

靴職人の逸話がある  蜀の君主の生まれ変わり

 1つ1つの項目についてと、それが由来のホトトギスの漢字について見てみましょう。

カッコウと似ている

 カッコウもホトトギスもカッコウ目カッコウ科に属する鳥で、日本に渡来する時期や托卵(他の鳥に自分の卵を育ててもらうこと)の習性まで同じです。

カッコウ(出典:Tim Peukert, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 鳴き声や托卵相手、大きさや体色に違いはあるものの、よっぽど見慣れている人でないとその違いには気づきづらいのでしょう。

 ホトトギスがカッコウと似ていることに由来するホトトギスの漢字は、以下の2つです。

郭公、霍公鳥

口の中が真っ赤である

 ホトトギスの口の中は真っ赤という特徴があります。

 明治時代の歌人である正岡子規は、結核を患っており、自身が血を吐いて口の中が真っ赤になったことで、ペンネームを「子規」にしました。

正岡子規(出典:See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons)

 ホトトギスはもともと漢字で「子規」と書くことができ、この由来は中国からのもの。

 正岡子規の本名は「常規つねのり」であり、一文字重ねて自分の病の様子をホトトギスに例えてしまう表現力には驚きです。

 口の中が赤いことに関連するホトトギスの漢字表記は、以下の1つです。

子規

田植えの時期に鳴き始める

 ホトトギスが日本に渡来するのは4~6月頃で、ちょうど田植えの時期と重なります。

 ホトトギスの鳴き声で田植えの時期を知ることができたため、「時を知らせる鳥」ということで「時鳥」と表されるようになりました。

ホトトギスがカッコウと似ていることに由来するホトトギスの漢字は、以下の3つです。

時鳥、田鵑、卯月鳥

靴職人の逸話もある

 源俊頼が著した『俊頼髄脳』の中に、ホトトギスに関するこんなお話がありました。

 現在モズ(百舌、鴃)と呼ばれている鳥が、当時はホトトギスと呼ばれており、モズは靴(沓)職人であった。ある鳥が靴を注文したところ、モズが「4月頃に届けます」と言い、代金をもらって去っていった。

 約束の時期になっても靴が届かなかった鳥は、毎年4月頃になると「ホトトギスはどこだい?」と探し回るようになった。あくまで逸話なのですが、このことに由来するホトトギスの漢字表記が3種類ほどあります。  沓手鳥、沓乞、鶗鴂

蜀の君主の生まれ変わり

 古代中国の蜀の杜宇とうという君主がおり、農業を推進して蜀の治世に成功しました。

 彼は望帝杜宇と名乗り、その後も蜀の発展に貢献した後、側近に位を譲ります。

望帝杜宇(出典:Kcx36, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 杜宇とうの死後、その霊魂が眠る山でホトトギスが鳴く姿を蜀の人が見て、「帝が蜀に帰りたがっている」や「帝が農業に励むよう指示している」などと伝えられるようになりました。

 この伝説にまつわるホトトギスの漢字は多く、7種類ほどあります。

不如帰、蜀魂、蜀魄、杜宇、杜鵑、帝魂、催帰

ホトトギスの漢字一覧

 漢検の辞典に載っているホトトギスと、そうでないマイナーなホトトギス、さらに鳥ではないホトトギスの漢字までリストアップしてみました。

(略)

 こちらは、より情報量の多い漢字辞典である『新潮日本語漢字辞典』等に登場しているホトトギスです。

漢字 由来・備考

田鵑 田植えの時期に鳴き始める「鵑ほととぎす」の意味。

卯月鳥 卯月(4月)頃に鳴き始めることから。

沓乞 沓くつの作り手だった鴃もずを、もう一度会いたいと乞う鳥の話から。

鶗鴂 「テイケツ」とも読む。「鴂」は鴃のこと。

帝魂 古代中国の蜀の第4代君主・望帝杜宇の魂がホトトギスに宿ったことから。

催帰 望帝杜宇が死後、蜀へ帰りたいという気持ちを催したことから。

鳥ではないホトトギスもある

 実は、同じ「ほととぎす」という読みでも、鳥ではなく植物のホトトギスも存在します。

ホトトギス(植物)(出典:Qwert1234, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 ユリ科の多年草であるホトトギスには、以下の3つの表記があります。

漢字 由来・備考

郭公花 花の斑点が、郭公ホトトギスの胸の模様と似ていることから。

杜鵑草 花の斑点が、杜鵑ホトトギスの胸の模様と似ていることから。

油点草 花の斑点が、油染みのように見えるから。

 由来のほとんどはホトトギス(鳥)と関連がありました。

ホトトギス(植物)の花の斑点(出典:Qwert1234, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

(略)


https://www.niigatashi-ishikai.or.jp/newsletter/contribution/201904242654.html#:~:text=%E6%BC%A2%E5%AD%97%E3%81%AF4%E2%88%925%E4%B8%96%E7%B4%80,%E6%BC%A2%E5%AD%97%E3%81%AF%E6%B6%88%E3%81%88%E3%81%A4%E3%81%A4%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82 【日本の漢字文化に関する一考察:『漢字民族の決断─漢字の未来に向けて』から学ぶ】より

山﨑 芳彦

平成31年1月の新潟県医師会報に、橋立英樹先生が、中国からの留学生に黄疸について説明しようとして、jaundiceと書いたりしたがなかなか通じなくて、日本語で黄疸と書いたら一発で理解されたと書いておられたが、これこそが漢字の優れた効用である。

著者から贈呈されたが、なかなか難解で途中で投げ出したままになっていた本であるが、新たに読みなおしてみると、日本語の成り立ちや漢字の歴史、漢字の優れている理由など未知だったことが多く、目からうろこの思いであったので感想を述べてみたい。いささか古くなるが、昭和61年、日本の著名な言語学者である次頁最後にある3人の著者が中心となり、中国、韓国、ベトナムの漢字圏から各々言語学者を招き、“漢字民族の決断”と題して国際シンポジウムが開かれた。この時の討論を纏めたものが本著であり、内容は今でも全く色あせていないと思う。

漢字は4−5世紀に仏教とともに中国から日本に伝わったといわれ、これを大和言葉に融和させ、平安時代の初め頃、ひらがな、カタカナを作り、複雑だが豊かな表現ができる日本語として発展させてきた。同じ漢字民族でも、朝鮮は500年前から、漢字にハングル文字を併用するようになり、今はほとんどがハングル文字になり漢字は消えつつある。ベトナムはベト・ムオン語に漢字を加えたベトナム語になり、10世紀から19世紀まで漢字が取り入れられたが、その影響は今でも多く残っている。しかし、今では文字はローマ字表記になっている。中国においても、漢字を簡略化しようと、簡体文字が取り入れられ、長い歴史の中で変化してきている。科学用語もローマ字での表現が検討されたことがあるが、現在では、漢字で新たな専門用語を作ってしまえば、文字からある程度内容が理解できるので、ローマ字にしようという試みは消えたという。漢字圏の一つの国として、今後、日本語はどのように発展していこうとするのかを2日間に渡り討論したものである。読み始めは、世界中の言語と漢字文化との相違など詳しく討論されており、その博識に圧倒され、難解な記述にこれは読みこなせないと思ったが、読みすすめてゆくうちに、なるほどと思わせることが沢山出てきた。

歴史上、日本語から漢字が消えてしまいかねない2回の危機があったという。1回目は、明治維新の頃、西洋文化文明は絶対的に優位で、非西欧のそれは劣っているという偏った構図のもとに、当時の知識人が、日本の文化の遅れは、複雑な漢字を使う日本語にあると考え、西洋の知識を取り入れて追いつくためには英語にすべきであるという討論がなされたという。2回目の危機は、第二次世界大戦で日本が敗れ、米国の支配下に置かれた時、やはり、複雑な漢字文化が知識や経済の進展を遅らせたと考え、漢字を制限して当用漢字を制定したり、文字はローマ字にすることが検討された。タイプライターも、欧米のものは文字数が少ないため簡単に小型化できるが、日本語のタイプライターは非常に複雑であり、活版印刷でも多くの活字を拾う必要があるため莫大な時間がかかり、これが経済の発展を遅らせたと考えた。しかし、日本経済の発展は、1970年代になると目覚ましく、漢字文化の影響ではないことが証明された。コンピューター時代になり、日本語ワープロが発展した現在、文字の多寡はほとんど関係なくなった。漢字の長所として、例えば、血液に関連した医学用語、赤血球、出血、白血病、貧血、造血、吐血など文字を見ただけで、専門家でなくともその意味をある程度理解できてしまう。英語では血液はblood、赤血球はred blood cell とこれは一般人にもわかるが、hemorrhage、leukemia、anemia、hematogenesis、hematemesisなどの医学用語をはじめとする専門用語は、一般人には理解が難しい。これは、ドイツ語は一般的な用語を組み合わせて専門語を作るが、英語では多くを、ラテン語やギリシャ語から取り入れているためで、これらの知識が乏しいと理解困難という。他にも、日本語では、例えば英語の多くのシラブルが、パソコン(computer)、合コン(company)、生コン(concrete)、マザコン(complex)、リモコン(controller)、エアコン(conditioner)などという具合に、コンに縮約されてしまう傾向がある。これらはひとつひとつコンの意味が異なっているので、どういったコンであるかはそれぞれ知識がないと理解できない。一方、漢字では、今、近、昆、根などいくつもコンという文字があるが、漢字を一見すればその意味はほとんどわかってしまう。漢字の作り方にも、水と関係ある文字を氵の付く漢字、汁、江、池などとまとめることができ、こういったことは英語では見られない。これらが日本語や漢字の最大の長所で、英語との違いである。中国語の書物をみて、発音することは難しくとも、文字を見るとある程度内容を理解できることが多い。英語は26の文字を組み合わせて作るが、日本語のように、文字を見ただけでその意味を理解することができない。すなわち、日本語や漢字は文字自体に意味を含んでいるのである。そのため、一般の日本人でも専門書の内容を理解しやすいが、欧米人には、各専門用語の意味を理解していないと読むのが難しい。平均的な日本人の頭がよいと言われる一因は、ここにあるのではないかという。たとえば、PEG(Percutaneous

Endoscopic Gastrostomy)は、一般の英米国人にはどういう意味か理解が難しいが、経皮的内視鏡的胃瘻造設術と書けば、一般の日本人にもその意味を容易に説明できる。

日本語も、明治の初めまで、方言など、各地方により話す言葉が異なり、東北と九州では互いに会話が通じないことが多かったという。しかし、東京を中心とした言葉に統一する機運が次第にすすみ、全国的に通じるようになった。中国でも、方言が多く、地方同士では言葉が通じないことが多いが、漢字は共通なので文字を見れば内容がわかるという。また、漢字は数百年の間変化が少ないので、話し方は不明でも古い時代の書物の内容も理解できるが、英語では、古い文献は一般の人には全く理解できないという。

日本が、大和言葉に漢字を取り入れ、さらにひらがなカタカナを導入し、しかもすべての文字を、1回だけ用いて、和歌を作るといった信じられないような離れ業をやってのけ、豊かな表現が可能になった。英語では、かたいことを表すのに、hard、firm、fix、stiff、solid、tough、rigid、tight、strong、serious、sureなど多くの単語があり、内容により使い分ける。日本語では、堅い、固い、硬い、難いなどがあるが、英語のように種類は多くなく、地盤が固い、鉄のように硬い、信じ難い、など前後に他の用語を付け加えて表現する。このように、漢字そのものに多くの表現があるわけではない。

世界には数千の言語があるが、言葉の伝播にも言語学者は注目している。スーパーマーケットはスーパー、デパートメントストアはデパート、リハビリテーションはリハビリと短縮され、日常の会話に取り入れられている。長い言葉は短縮されて使われる傾向は世界共通だが、誰が言いだしたかではなく、言いやすければ自然に広まってしまう。著者のひとり橋本は、妻の叔父であるが、彼は、南太平洋に多くの島々があることに注目し、これらの島々の間でどのように言葉が伝播し、どのように変化していったかを調べるため、自ら水上飛行機の免許をとり、これで島々を巡り実践に移そうとしていた。しかし、50歳代の若さでがんのため亡くなってしまい、この目的を達成できなかった。東京の病院にお見舞いに行ったときは、がんの最終ステージにもかかわらず、ベッドの上で論文の校正をしており、頭が下がる思いであった。奥様もシアトルのワシントン大学教授で、世界的に著名な言語学者である。

日本や中国においては、先に述べた理由から、漢字は優れた言語であり、今後も消えることはないというのが結論である。今まで考えもせずに使ってきた日本語が、優れた言語であることを気付かせてくれた名著であると思う。