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Frank Dazai作品集

OLD FASHION

2019.02.20 11:46

・エスプレッソとフランス煙草

  エスプレッソを啜りながらフランス煙草を吸っているような、男をチェーンの喫茶店で見かけたら、少し映画好きな貴方なら"痛い奴(so vain)"に思うだろう。

しかし、もし貴方がそんな男の小話を好き好んで聞くのなら、貴方も物好きですね(you're so creep)。

 何はともあれ、件の男も貴方も激しく愛しい闘いの中で生きている。 少なくとも"死んでいる奴等"に比べればね。

・貴婦人の台詞


長いシガレットホルダーを咥えた黒いドレスの貴婦人が言う


「そうよ、貴方はボギーの映画ばかり見ていた、そんな貴方に誰もついていけなかったわ」



・親愛なる禁煙家の皆様に御説明致します


 目の前にいる喫煙席で丈の長いトレンチコートを脱がずに、カップを左手に、右手の人差し指と中指の間に両切り煙草挟んでいる男はたいして面白味のない、窓の外の景色を眺めている。

 

 煙草廃絶主義者の方に説明すると、現在この国では手巻き煙草でない限り、公式には両切り煙草のパッケージは二種類しか流通していない。

一つは国産の伝統的安煙草であり、もう一つは仏国舶来の煙草で、もし彼が後者の煙草を吸っていた場合、喫煙室は独特の臭いで満たされているはずだ、これは電子タバコを嗜む若い社用族の若者にしてみれば、迷惑に感じるだろう、作業着に臭いが染み付く。

  

  と、ここで電話だ

件の男のスマートフォンがトレンチのポケットの中で揺れる。


・Charles Mingusと離婚

 「久し振り、最近どうなの?」

 「今は窓の外の乳母車牽いた婆さん視てる」

 「は?」

 「喫茶店でコーヒー飲んでるんだよ」

「なら初めから、そう言いなさいよ、貴方って本当、気持ち悪い」

「だから別れたんだろ」

 この女と初めて出会ったのは、この喫茶店の、この喫煙席だった。 彼女は赤いワンピースのドレスを着ていて、でかいサングラスを掛けていて、長いストレートヘアーが肩を越して背中まで伸びていた。

  別に一目見た瞬間に恋に落ちたとか、忘れ時の美女を思い出したとかではなかったが、一種の完成されたスタイルが目にはいった。

要するに、ストレートヘアーにサングラス、そして赤のワンピースのドレスを着るというのは、自分の中で自分の形を理解しているだろうということなんだろう。

なんというか、そういうのは今時な社会では希有に感じた。

 先に話しかけてきたのは、彼女の方だった、つまりオセロの先手は相手だ。

その時、店ではTiny grimsとColeman howkinsのApril in Parisが流れていた。

 ところで、いつも思うのだけど、チェーンの喫茶店にしろ居酒屋にしろ、最近はJazzが流れている。

 しかし、きっと店側も客も誰一人としてJazz好きはいないのだろう。

JazzがBGMに成り果ててしまったのは悲しい。アル中で薬中の音楽の巨匠達は何のための演奏していたのだろう?

このように考えると気持は重くなる。自分もこんな世界の住人なのだから、突然巨漢のCharles Mingusに殴りかかられて半殺しにされても、仕方ないかなと思う、少なくとも結婚生活と離婚よりは楽なはずだ。

 まったく、色恋に灰色の法律が足されると面倒だ、大抵の場合、男は責められるだけ責められ、金を払わされるだけ払わされる。

"いったい俺が何をしたっていうんだ?こう見えて俺だって努力したんだ、それにきっかけを作ったのは女の方じゃないか"




・フランク シナトラは川端康成の夢を見る

 しばらくして

 「嗚呼、わかったよ」 

 「本当にわかったの?」

 「なんなら、小指を切断して、写真贈ろうか?」

 「あー本当に貴方って気持ち悪い。なんで貴方なんかと結婚してたんだろう」

 「君は悪くないよ、全部、俺が悪い、すまないと思ってる」

  

 そこで相手は通話を一方的に切った。

   別に構わないよ、なにも話すことなんて無いんだ。

二人の会話は北欧の湖に沈んで、氷河期の訪れのせいで、凍結された。

二度と溶けることはないんだ、

少なくとも灼熱の太陽が地球を呑み込むまでは。

  そういえば、数年前に彼女と東北の雪国に行った、"トンネルの先はなんとやら"で雪国は確かに白銀に輝いていた。

凍った湖の上に立つ彼女は絵画の中の動かないヒロインのようだった、美しくていとおしい。そんな彼女が一時期は僕の胸の中に居たんだ。

幸せな時代の思い出、懐かしさに胸が痛む。

 そう、それで彼女とは南の果てにも行ったことがある、その時は.....

 「すいません、S先生でしょうか?」

若い艶の有る声が耳に降り注いだ。

振り向くと、そこには女子大生であろう、若い少女(この年になれば、女子大生も31才のアパレル店員も少女に違わない)が立っていた。

 「ええ、一様ね、君は?」

 「私、T大学の学生なんですが、昔から先生のファンでして、すみません声かけてしまいました」

彼女は緊張からか挙動不審に見えた。

 目鼻立ちのはっきりした、綺麗な顔をした少女だった。頬がプッくらと膨らんでいて、昔(古代)のアイドルの誰かに似ていた。

それに胸も大きくスタイルもいい、背も高すぎず低すぎずだ。

 「そう、それは有り難う。まぁ、そんな緊張せずに、ここの席に座ったらいいよ」

「いや、でも、お邪魔ではないんですか?」

 「いや、今、新しい話の構想を練っているんだけど、中々、難しくてね。でも、ここは喫煙室だから移動した方がいいかな」

「いえ、私も煙草は少し吸うので」

「以外だね」

「そうですかね、先生の影響かもしれません、先生の作品には煙草の描写が多いですから」

彼女は笑いながら言った。

「はは、それは悪い癖を付けてしまった責任は、僕に有るのかな?ところで君はさっきの僕の電話は聴こえていた?」

彼女は少し申し訳なさそうに言った

「ええ、少し聞こえてしまって、何か少し言い争っているようでした」

   男は白々しく答える

「編集者と上手くいってなくてね、楽な仕事なんて無いよね、まったく」

 

 

 

 

 


・something

 こんなに愛しているんだ。

色鉛筆は何色も必要ない。

ハサミは錆びてて構わないよ。

 最近の君の仕草からは未来が見て取れる。僕は君を手放したくないけど、精一杯強がるよ。

 今となっては美しい未来は全てフィクションに成ってしまった。僕の足元には使われない画材道具が転がる。

 サンディー君は今どんな気分だい?新しい作品は書けそうかい?

 僕は朝、下らない朝刊を破り捨てたよ。

君は破り捨てられた朝刊を拾いい集めて、「適当に文章を繋ぎ合わせても、芸術に成るんでしょうね」といったね。

 そうだねきっと、誰かは芸術だと思うだろう、そして誰かは再び破り捨てるだろう。

  僕らの愛が滲んだコーヒーに破り捨てられた朝刊と一緒に混ぜられても、誰かに滑稽話にされても、少なくとも僕らは、あの頃"反骨ノ抵抗者"だったね。

 僕は誇りに思っているんだよ、本当にね。