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周縁から中国を覗く

南北融和に前のめりになる文政権

2019.02.20 15:20

2回目の米朝首脳会談を控えて、南北融和に前のめりになる文在寅(ムン・ジェイン)大統領の姿勢が気がかりだ。2月11日、青瓦台で開いた首席秘書官や補佐官を集めた会議で、文大統領は「1回目の米朝首脳会談は、それ自体が世界史に残る明確な道しるべだった。今回の2回目の米朝首脳会談は、そこからさらに一歩踏み出し、すでに大筋で合意している韓半島の完全な非核化と新たな米朝関係、韓半島の平和体制をさらに具体化し進展させる大きな転換点になるだろう」としたうえで、「われわれにとって特に重要なのは、南北関係をより一層発展させる決定的な機会になるということだ。われわれの未来は、揺るぎなく固い平和の上にある」と大言壮語した。

さらに、「分断以来、初めて訪れたこの機会を生かすことこそ、戦争の脅威から完全に逃れ、平和な経済が未来になる。南北は戦争のない『平和の時代』を超えて、平和が経済の新たな成長エンジンになる『平和経済の時代』をともに切り開いていかなければならない」とし、バラ色の未来がもうすぐ目の前にあるような言い方だ。

KBS日本語ニュース「文大統領『2回目の米朝首脳会談は大きな転換点』」)

http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=71072

つい一年前までは、戦争の危機がいつ現実になって朝鮮半島で火が噴くか分からないような状態だったことを、よもやお忘れではなかろう。

金正恩がただ口約束だけで、核やミサイルの開発を放棄すると言ったからといって、北朝鮮の核・ミサイルの保有状況は何も変わっていないのである。

実の兄の金正男をマレーシアのクアラルンプール国際空港で化学兵器で暗殺したのは、ちょうど2年前の2017年2月13日のことだ。わずか2年で、金正恩は身も心も善人に生まれ変わzったとでもいうのか。

日本に対しては「恨みは1000年たっても忘れない」という人たちが、北朝鮮に対してはすぐにすべてを忘れ、許してしまうとはどういうことなのか?

たまたま衆院予算委員会の質疑で維新の党の下地幹郎議員が「文在寅は左派で北朝鮮寄り、親日・親米ではなく親北だ。日本で言うなら“福島みずほ”や“志位和夫”が総理大臣をやってるようなもの。それ位の認識を持つべき」と訴えていた。ネット上では、この例えは「非常にわかりやすい! 韓国政府はそれくらい異常だ」と評判になっている。

<南北交流の具体的な中身>

二回目の米朝首脳会議が行われる直前の2月12,13日、「南北共同宣言の履行に向けた新年の連帯の集い」と名づけられた民間の交流行事が北朝鮮の金剛山(クムガンサン)で開かれ、韓国からは労働組合組織や女性・青年団体など260人が韓国政府の許可を得て訪朝した。

(KBS日本語ニュース「韓国政府 民間行事の参加者260人の訪朝を許可」)

http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=71041

この中には、元慰安婦の支援団体で「挺対協」から名前を変えた「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」の尹美香(ユン・ミヒャン)理事長も含まれ、北朝鮮側で元慰安婦や元徴用工問題を扱う「朝鮮日本軍性奴隷および強制連行被害者問題対策委員会」のメンバーと接触し、情報交換を行うと伝えられている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は3・1運動100年に合わせた南北共同事業を呼び掛けており、これに呼応する形で、慰安婦や徴用工問題でも南北が連帯し、日本に対して過去の清算を強く迫る運動を展開する方針とみられる。

韓国の2大労組、韓国労総(韓国労働組合総連盟)と民主労総(全国民主労働組合総連盟)も代表を送り、北朝鮮の労働団体、職総(朝鮮職業総同盟)との代表者会議を開くという。これら南北の労働3団体は、去年2回にわたった南北首脳会談で発表された板門店宣言と平壌宣言の合意事項の履行に向けて、「2019年南北労働者統一大会」を開催し、労働分野での南北交流事業の推進について議論するという。北朝鮮に労働者のためのまともな組合組織があるとは思えないが、南側の労働団体は文在寅政権のお先棒を担ぎ、友好をあえて演出しているようだ。

(KBS日本語ニュース「南北の労働団体、12日から金剛山で代表者会議」)

http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=71069

休戦協定が、米朝首脳会談による終戦宣言を経て平和協定に変わったわけでもないのに、38度線付近のDMZ非武装地帯では、南北双方による監視所の撤廃が進み、すっかり平和ムードが演出されている。

これまでさまざまな軍事的な規制でDMZ非武装地帯一帯の開発が遅れてきたとして、南北を結ぶ平和道路の建設や軍事境界線付近での産業団地の建設、江原道鉄原(チョルウォン)に南北交流拠点としての「南北文化体験館」の建設、それにDMZ非武装地帯でのトレッキング・ルートの開発や展望台の設置など観光活性化事業に、今後13兆ウォン(1兆3000億円)あまりの資金を投入するという計画も発表されている。

(KBS日本語ニュース「DMZなどの開発計画 13兆ウォン投資」)

http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=71038

北朝鮮に対する見返りとして、今度の米朝首脳会談では、開城工業団地の再開や金剛山観光の再開など制裁の一部緩和措置が採られるのではないかという期待が高まっている。

そうした中、訪米中の文喜相国会議長と会った米国務省のビーガン北朝鮮担当特別代表は、「南北関係の発展は国際社会の対北朝鮮制裁の枠組みの中で進めるべきだ」と釘を刺し、同じくサリバン国務副長官も、文喜相議長らに対し、「完全な非核化を実現するまでは北韓に対する経済制裁を維持する」との姿勢を強調したという。(KBS日本語ニュース「訪米の韓国国会議長“平和進展のため、韓米同盟を強化すべき”」)http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=71077

南北融和に前のめりになる韓国は、アメリカから見ても危なっかしくて気が気でないのかもしれない。日本にとっても、北朝鮮が核兵器を保有したまま、反日・抗日の南北が統一するということは悪夢以外の何ものでもなく、憲法改正を含めた抜本的な対抗措置が必要になるだろう。