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アンフェア。〜依頼者と受託者の関係性〜

2019.02.21 23:08

先日投稿した内容によって、僕には工業側からの少なくない向かい風にさらされている。これは想定していた。むしろ、リアクションがあることは嬉しい。

事実として向かい合ってもらいたいから、そして意識を負から正へ移していってほしいから、僕も向かい風に対してきちんと向かい合っていく。


さて、昨日は夕方から尾州は岐阜羽島に来ている。このあたりも繊維産地としては有名だ。

莫大小業も結構ある。僕の古巣もこの地域の素材を多用している。

前職時代から、この地域と付き合う時は注意が必要だと警戒していた。誤解を恐れずに言えば、『必ず納期遅れする』というネガティブイメージがあった。尾州の製造加工業の方々は少なからず自覚はあると思う。


ところが、昨日岐阜に向かう道中、和歌山のニッターさんと一緒に移動していて話している最中に、ある無意識の確信犯が存在していることに二人で気がついた。


素材の生産期間を事前に確認される時、どのタイミングでオーダーが入るかわからないのに、生産期間を伝えるのは意味が無いのではないか?

例)

アパレルメーカー(以下ア)

「この天竺はリードタイムどれくらいかかりますか?」

生地屋(以下生)

「だいたい1.5ヶ月くらいです」

「わかりました!」


〜4ヶ月後(天竺生産繁忙期)


「例の天竺オーダー入れました!ちょっと納期無くて、3週間くらいでなんとかなりませんか!?」

「ちょっと確認してみます」

生→(工場へ確認電話)

「天竺のオーダーが入ったんだけど、今だったら最速でいつになりますか?」

工場(以下工)

「いま混んどるし、2ヶ月くらいかかるんちゃうかな?」

「いやいや、そこをなんとか挟んでください!お願いしますね!」

「考えてみるけど、期待はせんといてね」



さて、このやりとりの後に何が起こるかは想像するのに難しく無い。

この時、工業は確かに曖昧な回答をしている。そして生地屋も、なんとも曖昧なやりとりで完了している。


いつもなら1.5ヶ月で生産可能でも、繁忙期は生産キャパが埋まっており、当初の期間では生産出来ない可能性が高い。しかし無情にも依頼者は普段以上のスピードを求める。そして曖昧なやりとりの結果、依頼者はその『普段以上のスピード』で納品されることを信じて疑わず、受託者は『普段より時間がかかるのでその期間の生産は無理なのは伝えた』と思い込んでいる。


そして、本発注者には『納期遅れ』という事実だけが残される。


工場の返答が悪いのか?生地屋の押し込みが雑なのか?アパレルメーカーの発注時期が悪いのか?


では、工場がキチンと「いや、2ヶ月かかるから無理やで!」と伝えたらどうなるか?

生地屋は2週間で作れる工場を探し方々を当たるだろう。それでも繁忙期はだいたいどこもいっぱいである。泣く泣く本来依頼しようとしていた工場へ改めて押し込みにいく。

押しに負けた工場は仕方なく今仕掛かっている他社の現物を退かしてその依頼を挟み込む。すると、その仕掛かっていた他社の納品がズレ込む。これは良いのか?


じゃあ生地屋も工場が言ってきた通りに、「今いっぱいで、2ヶ月かかります」と素直にアパレルメーカーに伝えたらどうなるか?

ア「いやいや、1.5ヶ月って言ったじゃないですか!」ってなる。その時はな。確かにその時はそれでいけたかもな。ただ、その時はそれで、「時期によって変動します」とも伝えて無かったから、いつだって1.5ヶ月だと思われても仕方ないな。そこへ「急ぐから3週間でなんとか」という圧縮も入って、感情的には既に納期遅れの沙汰である。

これは果たして、どうしたら解決できるのか。


工業のキャパシティは有限なので、受注120%では確実にどこかで誰かの分の指定日渡しが出来なくなる。そんなことはこの業界の人達なら日常の事なので不思議とは思わないかもしれないが、こうやって文字に起こしてみるとなんとも不思議なやりとりをしている。


確かに、残念ながら怠慢な部分があり、納期にルーズな人たちも存在はしている。

でも、皆が皆、悪意ある製造者ではない。


現場に近い人間は強い。無茶な納期設定をされても、その場で動いてる物をどかして押し込む事ができる。

尾州は生地も製品も振り屋が多く居て、工場から工場へ体を使っては乗せ替え組み替えを繰り返して顧客さんの厳しい納期要望に必死に応えようとしている。

この繰り返しで誰かの分が遅れたり、振り回してる内に結局どこもスペースがなくて、なんともならずに遅れたり。


これを総じて『尾州は納期遅れする』とイメージ付けてしまっていた僕は、昨晩心から反省した。

原因は受託者では無い。全体的な習慣の問題だ。


依頼者も、今一度振り返ってわが身に覚えがないか考え直して欲しい。

そこで起こった金銭的問題を工業の遅れを理由にして工場へヘッジしてないか?

「遅れたのはそっちだから、クレームは受けて当然」と思ってないか?

曖昧な返答をしている工場も責任が無いとは言わないが、無理矢理押し込んできて一方的に「遅れた」とぶん投げてはいないか?


そうやって工場を疲弊させてはいないか?