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2月21日ズクナシ・ラストワンマンライブ@渋谷クアトロ 笑顔と感動の再出発点。

2019.02.24 03:21

 長い時間をかけて、苦楽を共にしてきたバンドが終止符を打つ。言葉にするのは簡単だけど、それはバンドメンバーにとって大きな決断に他ならない。なぜ解散というピリオドを打つのか。休止でもいいのではないのか。ファンの心理として、そんなことを思ってしまう。

 女性ソウルバンドのズクナシが、2月21日の渋谷クアトロのライブで、バンドとしての活動を終えた。2002年にボーカル&ギターの衣美、ベースのpicy-marico、ドラムスの茜、キーボードの238の4人組として活動をスタート。2014年に238が脱退した後も、残った3人で活動を続けた。結婚や出産を経たうえでのバンドの継続は、本当に苦楽の連続だったと想像する。

 ラストライブは、誰かがゲストが入るわけでもなく、メンバーだった238が加わるわけでもなく、3人だけで完結させた。彼女たちが演奏したのは28曲。20時前にはじまったライブは、アンコールが終わったときには23時をすぎていた。渋谷クアトロでこんなに遅くまでライブをしていたのは、もしかしたら初めてなんじゃないかと思う。

 楽しさに包まれて、センチになって、そして感動して。そんなズクナシの物語が、すべて凝縮されているような時間だった。そこにいる時間を、そこにいるすべての人が大切にする。そんなライブだったと思う。開演時間より30分程度早めに会場に入ったけれど、その時間でかなりの混雑で、ライブがスタートした頃には、後ろまでびっしり人が入っていた。全国各地から渋谷に集ってきたファン。それだけ3人の新たな旅立ちをみんなで見送りたいと思ったのだろうし、3人がいかに17年のバンドの歴史のなかで、いろんな場所で素晴らしい時間を作ったきたのかを証明していた。アンコールで3人を再び迎え入れるとき、みんながグロースティックを灯した。それはみんなのズクナシに対しての感謝の印だった。

 休止ではなく解散。それはメンバーが、それだけバンドを大切に思っていたからの結論だったに違いない。ズクナシという3人でしか生み出せないライブという時間。バンドのマジックはきっとそこにある。誰かが欠けてしまったのでは、どうしても補えないもの。

 ズクナシの解散は、ファンにとっては寂しくてしょうがない事実だ。だって、これから先にはズクナシとの新しい体験ができないのだから。一方で3人のまったく新しい道をまた共有できるという喜びもある。もっともっとズクナシのライブを見ておけばよかったと後悔している。日本では稀有な女性のソウルバンド。ズクナシは終わってしまうけれど、ズクナシの音楽は3人が音楽を続けていくことで紡がれていく。

写真 = 寺川昌宏