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Ueda Lab (心理療法研究室)

『「飛ばない教室」を生きる_スクールカウンセラーは何ができるか』(教育評論社)

2025.10.12 03:00


 ようやく出来上がりました…。


 少し大げさな題ですが、中身はそれほど堅苦しいものではありません。


 本書は、心理職の人たちだけでなく一般の人たちに向けて、例えば「現代の教育現場はどういった問題に直面しているのだろう?」、「スクールカウンセラーっていったい学校の中で何をしているの?」、「そもそもカウンセリングって何なの?」といった疑問に答えつつ、学校臨床という営みのもつ可能性を伝えたいという大きな目的をもって書きました。

 果たして目的通りに書けたかどうかー。正直に言うと、自信はありません。その割にいつもながら時間だけは人一倍かかってしまいまして…。


 読んでいただいた皆さんの率直な感想をお聞きしたいです。




 私はこれまで本を執筆するときには、その都度意識的にチャレンジする課題を決めてきました。それによって少しずつ自分の「長い文章を書く力」も上がってきたように思います。

 最初の本は、まず自分の関心のあることを伝えられるように、長い分量の文章を常体で論理的に書けるようになることを目指しました。

 二冊目の本は、簡単に答えの出ない専門的かつ難しいテーマを取り上げ、かつそれを敬体で書き上げることに挑戦しました。


 そして三冊目の今回は、自分の専門領域について一般の方に伝わりやすいように工夫して書くことにトライしました。

 これは一番難しかったです…。臨床心理学や教育学の専門用語をほとんど使わずに、できるだけ具体的に書いたつもりですが、振り返ってもまったく自信はありません。


 そもそも本書は知り合いの編集者の方から「スクールカウンセラーのような仕事は知られているようで実はきちんと知られていないのではないか。多くの人に知っていただく必要があるように思う。ついては学校臨床について専門書と物語の間のようなものを書いてみないか。」と勧められたものです。


 「専門書と物語の間のようなもの?」


 仕事上、論文は書くことがあるにしても、当然物語などは書いたことがありませんし、どのように書いたらよいかもわかりませんでした。そこで編集者の方からアドバイスをもらいながら、悪戦苦闘し、結果かなり変わった書き振りになりましたが、なんとか書いたものが今回の本になります。

 面白いもので、むしろ今回チャレンジした書き方と文体によってこれまで伝えづらかった学校臨床の姿が伝えられるようになった気がします。




 さて、本書は二部構成になっています。

 第Ⅰ部は、現代の学校現場がどのような課題に直面しているか(すなわちそれは子どもや教師や保護者のぶつかっている生きづらさといった話になるのですが)を私なりの視点でまとめ、そしてそれに対応しようとする学校臨床という実践領域がどのように発展してきたのかを整理しました。やや教科書的になっているかもしれません。

 第Ⅱ部は一転して物語になっています。ある子ども、ある教師、あるカウンセラーを登場させ、3人が学校場面でかかわりながら変わっていく様子をおよそ1年にわたって描いた(つもりです…)。これによって、教科書や専門書ではなく、「おはなし」としてよりありありと、立体的に、学校臨床の実際をイメージしてもらえるのではないかと思います。

 

 本書は、第Ⅱ部の物語の部分はもちろん、それ以外の部分の短い例示も含めて基本的に創作で全体が構成されています。創作と言っても、いくつかの現実の相談例をベースにして、その中から「肝」の部分を抜き出し、そこから新たに展開しながら出来上がったエピソードやお話なので、例示や物語は相当程度真実を含むもの、すなわち実際にありうる出来事と考えていただいて構いません。

 このように書くと、なんだか劇的な展開や面白いやりとりを想像されるかもしれませんが、読んでいただくとわかるのですが、物語自体は全然劇的(ドラマチック)なものではありません。実際の学校臨床の現場でも決して劇的なことが起こっているわけではないからです。むしろ非常にささやかなエピソードの積み重ねで物語は終始しています。結末も決して多くの人に納得してもらえるものではないように思います。自分でもそのようなものを書こうと意図していたわけではありません。最初におおよその人物のイメージがあって、あとは学校臨床の場面にその人たちを置いて書いていくと自然にこうなったというのが正直なところなのです。

 それでも、意外にというか結果的にというか、振り返ってみるとむしろ学校臨床のいろんなリアリティがよく入った物語になったような気がします。心理職の方、教師の方、保護者の方など、教育に関心のある人たちに届くとよいな...。きっと学校臨床のもつ可能性をどこかに感じ取ってもらえるのではないかと思います。


 いずれにしても、これまでのカウンセリング関係の専門書とはちょっと違った本になっていると思います。

 

 よかったら、ぜひ手にとって読んでみていただきたいです。

 どうぞよろしくお願いします!