胸部の触診
胸全体を触ってみると、緊張したところと柔らかいところがあるのがわかります。
緊張しているところは、盛り上がっている感じになります。
押さえてみると圧痛があります。
また、力を抜いて触診した時と息を吸って胸を膨らませた時の状態も違いがあります。
息を吸っていない時(通常時)に触ると緊張している部位というのは、吸って息を止めた時に緩くなってしまいます。
これは、筋肉の緊張が逆転している状態なのではないかと推察しています。
息を吸って胸壁が膨らんだ状態では、抵抗が出て当たり前です。しかし、異常部位は胸に呼吸を入れても、抵抗がありません。あきらかに異常でしょう。
肺は独自に膨らんだり縮んだりしません。胸部の筋肉が収縮したり弛緩したりすることで呼吸は行われている訳です。
筋弛緩剤を大量に投与して、筋肉を働かせられなくすると呼吸筋が働かないので、換気ができなくて、やがて呼吸全体ができずに死んでしまいます。
つまり、胸部の筋肉の状態を知ることは、呼吸の入り口である換気の状態を詳しく知ることと言える訳です。
そこで、重大な疾患のない人でも、換気の状態をよく観察してみると、胸部の一部分のみの機能が落ちているのを観察できます。
換気全体の低下は僅かしかありません。しかし、風邪をひいた時も、このような変化がおこります。
またアレルギーなどのような炎症反応も換気システムの一部の異常と無関係とは言えません。
長く咳をしている人も左右どちらかの胸部の中心が異常な緊張をしていることが殆どです。
咳は反射です。異物を取り除こうとして起こる自然なものです。しかし、換気機能の一部(特に胸部の中心)で機能が落ちることによって、咳をしても、完全に異物を排出する咳ができない為に咳が続いていると考えられます。
今年の始めに長引く咳の人は多かったように思います。インフルエンザであっても発熱せず、咳をうまくできない為にウィルスや菌を排泄できない状態になり、粘膜に生息しやすい状態になっているのではないかと考えられます。
西洋医学的には、咳を止めようとする対処療法が主体ですが、咳の原因である胸部の緊張をなくさなければ、余計に長引かせてしまうこともあります。
胸部の緊張を起こしている原因を調整することで、自然に咳も治まっていきます。
これらの現象を数値化することができないから受け入れられないのかもわかりませんが、換気に関しては、胸部の触診をすることがとても重要な診断になります。