V.笑い合う誕生日
「はぁ…疲れたな…」
不滅隊兵舎の更衣室で、ヴァルはため息を吐いた。
ここ連日、GC任務に明け暮れていた。
一人でこなす任務なら、ここまで疲れないのだろうが、GC任務となると、隊を率いたり、数人での任務が当たり前だ。
いつも以上に気を張り、慎重に指揮を執る事で、余計な疲労が蓄積されていた。
「早く帰ろう」
そう呟いて、ヴァルは急いで着替えを始めた。
***************
「ただいま。…………?」
テレポで帰宅したヴァルは、首を傾げた。
いつもなら返ってくる“おかえり”がなかったのだ。
エーテルの香りがするので、家にいるはずなのだが、何かに集中していて聞こえてないのだろうか?と考える。
そのままダイニングの扉を開けた瞬間。
「ハッピーバースデー!」
「!?」
ガウラの言葉と共に鳴るクラッカー。
突然のことに、ヴァルは驚いたまま固まった。
その様子を見たガウラはしてやったりといった表情を浮かべる。
「その顔、自分の誕生日を忘れてたろ?」
「あ、あぁ。もうすぐガウラの誕生日だって頭しかなかった」
「だと思ったよ」
そういってガウラは笑った。
改めてダイニングを見渡すと、テーブルにはケーキと、さまざまな手作りの料理が並んでいた。
「この量の料理を手作りしたのか?」
「誕生日だからな。作ったことのないものもレシピ見ながら作ってみた。味は…保証しないけど…」
少し自信なさそうに言うガウラ。
それを見て、ヴァルは笑顔で言った。
「こういうのは気持ちが大事なんだ。というか、この量を作るのは大変だったろ?」
「まぁね。でも、ヴァルはいつも、記念日や私の誕生日に豪華な料理を作ってくれるだろ?だから、私もこれぐらいはと思ってさ」
「ありがとう。嬉しい」
「さすがにケーキは買ってきたものだけどね」
「いや、十分すぎるよ。急いで着替えてくる」
「うん!待ってる!」
***************
手料理を食べ終え、ケーキに舌鼓を打っていた時だった。
「ヴァル、これ」
ガウラが差し出したのは大きめのプレゼントボックスだった。
「これは?」
「誕生日プレゼント」
「プレゼントまで…ありがとう。今開けても?」
「どうぞ」
丁寧に包みをとり、ボックスを開ける。
そこに入っていたのはサマーフォーマル・ドレスとドレスシューズだった。
よく見ると、タグにはガウラの銘が入っていた。
「これ…」
「手作りのHQ。お姫様にピッタリだと思ってね」
ニヤリと笑みを浮かべるガウラに、ヴァルは複雑そうな表情だ。
「似合うと思うか?」
「もちろん!ヴァルは何にでも化けるだろ?」
「ま、まぁ、そうだが…」
「嬉しくないかい?」
「いや、嬉しいが…。そのしてやったりの顔を見てると、からかわれてるように思うんだが」
「ふふふ。どうかな?」
ニヤニヤしてるガウラ。
ヴァルはドレスを見つめる。
「ほら、さっそく着てみたらどうだい?」
「え?」
「絶対に似合うと思うから!」
「…お前、フロンティアドレスの時の仕返しをしてないか?」
「さあね?てか、いいから早く着て来い!」
「…わかった」
なんだか腑に落ちないと言った表情でドレスとシューズを持って自室に向かうヴァル。
その姿が見えなくなった途端に、ガウラは隠してあった自分用の衣装を着替え始めた。
それは、エターナルシリーズのタキシード。
着替えを終えて戻ってきたヴァルは、それを見て目を丸くした。
そして、ガウラは紳士のようにお辞儀をし、手を差し出した。
「一曲お相手してくださいませんか?お姫様」
そう言ってウィンクをすると、ヴァルは顔を赤らめた。
「っ!やっぱりからかってるだろ?!」
「私はただ、お前の夢を叶えてやりたいと思ってるだけだよ?」
「………っ」
ほら早くと言わんばかりに、差し出した手で手招きをするガウラ。
ヴァルは赤面したまま、その手を取った。
そして、ワルツを踊り始める。
慣れない動きに二人して躓き、それに笑い合ったのだった。