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スピード駅伝を制した、國學院の覚悟と結束

2025.10.14 15:09

― 第37回出雲駅伝2025 ―

学生三大駅伝の開幕戦・出雲駅伝2025は、スタート時25.9℃、湿度69%という厳しいコンディションの中、全中継所で先頭が入れ替わる前代未聞の激戦となった。スピード駅伝の名にふさわしいハイレベルな攻防の末、國學院大學が2年連続、3度目の優勝を果たした。

前半戦 ― 駆け引きと挑戦の序盤区間

1区は駒澤大学と東京国際大学が先行。下り基調ながら1km通過2分49秒とハイペースの展開となる中、國學院の青木が仕掛けて集団が動く。終盤で抜け出したのは中央大学の岡田開成。夏に鍛えたロングスパートを武器に初の区間賞を獲得し、中央大を首位でスタートさせた。

岡田は「全国の駅伝で初めて区間賞を取れて素直に嬉しい。1年生の濵口が少しでも楽に走れるようにという思いでタスキをつなぎました」と笑顔を見せた。最短区間の2区(5.8km)では、中央の濵口が先頭に立つも、駒澤の帰山、そして早稲田大キャプテン・山口智規が猛烈な追い上げを見せる。10位で受け取ったタスキをトップで渡し、早稲田を一気に首位へと押し上げた。「“全部抜かす”と言っていたので有言実行できてよかった。主将として1秒でも前へという気持ちで走りました」と語る山口の走りが、チームを勢いづけた。


中盤戦 ― 留学生と新星が交錯

3区のエース区間では、留学生ランナーたちが火花を散らす。早稲田の鈴木がトップを守るも、東京国際大のリチャード・エティーリが41秒差を15秒まで縮め、さらに城西大のビィクター・キムタイが逆転。キムタイは3年連続の区間賞を獲得し、「暑かったけど、いい走りができた。チームの仲間と高め合っていきたい」と充実の表情を見せた。


國學院の覚醒 ― 辻原が区間新で流れを変える

4区でレースが大きく動いた。國學院大學の辻原輝が序盤から積極的に飛び出し、早稲田・城西を突き放して独走態勢へ。「世間の評価は低かったけれど、区間新を出すと決めていた」と語った辻原は、その宣言どおり17分20秒の区間新記録を樹立。「前の区間の野中の走りに勇気をもらった。彼のおかげで記録が出せた」と感謝を口にし、チームの結束を象徴する走りを見せた。5区では高山豪起がリードを守り抜き、冷静な走りでアンカー・上原琉翔へタスキを託す。駒澤大は伊藤蒼唯と主将・山川拓馬が粘りの走りを見せ、追撃を試みた。


終盤戦 ― 結束でつかんだ栄冠

最終6区は、國學院・上原琉翔と早稲田・工藤慎作のエース対決。工藤はワールドユニバーシティゲームズ・ハーフマラソン金メダリストの実力で43秒差を一時20秒台にまで縮めたが、上原は落ち着いたペースでリードを守り切った。國學院が連覇を果たした瞬間、チームの歓喜が爆発した。


新時代の幕開け ― 群雄割拠の学生駅伝へ

早稲田大学は15年ぶりの表彰台となる2位でフィニッシュ。2018年の箱根駅伝3位以来の快挙となった。3位には創価大学が入り、アンカー野沢悠真が終盤でアイビーリーグ選抜をかわして過去最高順位を更新。青山学院大は主将・黒田朝日がアンカーで3つ順位を上げて7位、中央大は序盤のアクシデントが響き10位に沈んだ。


平林清澄卒業後、エース不在の不安を抱えた國學院だったが、上級生たちが一丸となり、その穴を埋めた。勝因は「走力」だけでなく「覚悟」と「結束」。スピードと意地、そして世代交代が交錯した2025年の出雲駅伝は、まさに“新時代の幕開け”を告げるレースとなった。


PHOTO:YoshiharuUehara/SportsPressJP