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映屋(うつりや)のひとりごと - 公演後記にかえて

2025.10.16 16:18

 アニメ化はしません。


 公演お疲れ様でした。映像の創世風満智留です。宮島さんです。

 パンフレットに、役者より上にクレジットされてたりしていました。見方によっては座組内で、春さんに続く2本目の柱だったのかも知れません。買い被りすぎかも?


 バラしが始まってから、座組のみんなへの苗字呼びを徐々に辞めようと思いました。というのも、バラシの時にやや疲れが出てきていたら、苗字呼びをやめている自分がいて、やっと馴染んできたなという自覚が芽生えました。それなのに、関係値の変化に公演の終了が追いつかないほど今公演はあっという間でした……京都と山口、仕込みの長さの違いは文化の違い。


 初回のにっきで「世界をいい映像で満たしたい」と記しました。今公演はどうでしたか?少なくとも公演中はいい映像で満ちていたと思います。そうさせてください。私、報われたいです。今公演で本当に、今までやっていたことは全部やって、もっとアクロバティックに新しいことにも挑戦しました。映像のきっかけ数も、私が担当した劇中映像の中で過去最多数でした。本当に、劇中映像を創る者として間違いなくターニングポイントとなった公演です。だから今は、いい映像で満たしたことにさせて下さい。将来の私はもっと超えていきます。


 春さんの過去公演では、劇中に作曲された音楽について解説していらした方もいらっしゃいました。なので私も、今回つくった映像を紹介していきます。


 技術にあんまり興味ないよ!それよりお前の所感を聞かせておくれという方、結構下までスクロールして下さい。後半で触れます。そしてごめんなさい!今回は鬼ほど長いです!


【映像のコンセプト決定の経緯】

 今公演のコンセプトは言わずもがな「水槽投影」でした。当初、春さんからのオーダーは「地面に投影」でした。ネットには載ってない用語ですが「ランドプロジェクション」とも言うそうです。8月末の序盤の稽古に私がお邪魔したとき、読み合わせが線香花火のシーンに差し掛かったあたりで「水槽の中に線香花火があったら素敵だな」と思ってしまったのがはじまりでした。今年の初めに京セラ美術館で行われていた、蜷川実花さんの展覧会の入り口が水槽投影で、いつかやりてぇなぁと思ったのですが、まさか半年ちょっとでやることになるとは思わず、「本当にそんな御技が為せるものか?」と、自信家のわたしにしては珍しく不安になりました。


 でも、ここは春さんのユニットです。


 「頭で想像できたものは、大抵実現できる」


 ……やってやろうじゃないの。


 そうして始まった、大学生の夏休みの自由研究。目指せ!メディアアーティスト。まずはホームセンターで水槽を買ってきて、取り敢えず大学の練習用のホールに置いて、プロジェクターを吊って当ててみる。水なので全く光が映らずに透けていく。……そりゃそうです。作業に夢中で中学理科の知識がすっかり抜けていた。コピー用紙を水槽の前面に貼ってみる。映るけど光の屈折の関係で上半分が全然映らない。ダメだ。うーん、どうしよう。

 そこで気を紛らわすため、後輩をホールに連れ込んでみる。「おもろいことしてますね。これ前後をひっくり返したらいけるんとちゃいます?」コピー用紙が水槽の背面に来るように置き直してみる。……光の屈折を受ける前に投影するから、水槽の全てを使って投影できる。完璧だ!!

 こうして、わずか1日の実験で実証。ここからはもう早いです。コピー用紙を透過スクリーンフィルムに置き換えたらよいのですから。取り寄せました。

 ……こうして、水槽投影は決まりました。さて次の問題は、その投影する中身です。


 その前に、ネタバレ注意報!ここから先は、ネタバレを含みます。


 配信をネタバレなしで楽しみたい!という方はブラウザバック。



配信用の映像も絶賛編集中です🎬️





 もういいですか?




 それではいきますよ。



【劇中映像解説】

①ウォーターエフェクト

 読んで字の如く、水面です。京都の方では、ウォーターエフェクトには照明機材を使うことが多いのですが、今公演では映像が担当するということで、モーショングラフィックで色々と試行錯誤してみました。

 モーショングラフィックを作るソフトといえば、AdobeのAfter Effects(AE)が有名ですが、私はカラリスト(映画編集の色彩効果担当)出身であることからDaVinci Resolveをずっと使っています。そのためResolveのFusionで作っています。Fusionはノードベースなので扱いやすいですよ。皆さんも是非。

 試行錯誤の結果、これは意外とすんなりできました。


②オープニングダンス『星の収穫祭』

 新井ふゆさんの『星の収穫祭』に合わせた、篠田さんのダンス。春さんが新井さんと交渉して許諾をとってきました。すごい、よくこんなぴったりなものを……。

 実は映像に限らず、曲そのものを3分半に仕立てたのも私だったりします。3分半といえばフィギュアスケートの女子フリー。手慣れたものです。

 映像はというと、実は最近のFusionのアップデートで星空を作れるテンプレートが追加されたので、それの数値をちょくちょく弄ってフィニッシュだったりします。ただ、青めに星を光らせたりとか、大きめの星々の前景と、小さめの星々の後景で二つ重ねて、前景の方にだけグローエフェクトをかけたりなど、立体感を出すようにはしました。


③シナプス

 「血じゃなくて銀河が流れてる」というところ。当初は映像のオーダーではなかったのですが、湯田のやよい軒にて、


私「ここ映像あった方が良いですよね」

春さん「はい!!」


 「技術的には可能です」案件も自分から演出に言っちゃったらやるしかなくなる。だって自分が演出だったとしたら確実に入れたいじゃないですか。良い外面をした手前、映像人格の宮島が「お前はなんてことをッ……!!」と喧嘩する、いつものやつです。でも今回は私のなかの小林賢太郎が「頭で想像できたものは、大抵実現できる」で映像人格を黙らせました。さぁ作りましょう!フリー素材の神経をモノクロにして、フラクタルノイズを重ねて、最後に銀河っぽい背景を合成する。問題なのはこの銀河の色です。あとに出てくる流れ星のシーンと、トンマナを合わせたかったんですが、さて綺麗な宇宙の色はなんじゃろな。水色と黒は使っちゃったぞ。しばらく考えて出てきたのが、立芸版の『新説・銀河鉄道の夜』で使っていたビジュアルの色。青から紫にかけて、夜明けのイメージのグラデーション。絶対にこれだ。採用。


④流れ星

 後ろの星々は基本的に②+③です。これをループ素材にするだけです。

 前の流れ星たちは、かつて私が作ったことのある白い流れ星を一旦持ってきて、若干黄色を混ぜました。さらに、1回の流れ星につき2本の線を若干遅らせながら重ねて流すことで、それらが重なった、流れ星の先端がきらりと光るようにしました。春さんから、『ハウルの動く城』の流れ星イメージだといわれたので、


私「ハウルやと、地面に着く瞬間に砕け散るみたいなのっていります?」

春さん「そんなことができるのですか…⁉️大変じゃなければ欲しいです…!」

映像人格「お前はなんてことをッ……!!」

小林賢太郎「頭で想像できたものは、大抵実現できる」


 もう察してきたと思いますが、今回の映像、いえ、私の人生はだいたいこの繰り返しですね。諦めて手を動かしましょう。パーティクルを出すチュートリアル動画を見て、だいたい英語なので何回か繰り返して聞きつつ理解して、パラメータをいじいじして調整。できた!


 あとはこれらを4本ぐらい作って、散りばめて、同じくループ素材にするだけです。星々と流れ星をOBSで合成すればOK。こうしたら流れ星の位置も小屋入り後に自由に変えられます。


⑤線香花火

 かつて立芸で、線香花火を鴨川で撮ったものを流したことがありました。あれをそのまま使っています。


⑥金魚撩乱

 今回の劇の核にして、劇中映像最大の試練でした。

 私は絵が描けないので、同じ立命館大学の、立芸とは別の劇団、劇団月光斜さんで普段から仲の良い、右に同じさんに手伝ってもらいました。本当にありがとう~~

 水槽に投影するに当たり、当初は白い金魚に、①朱色 ②翡翠色 ③藤色 ④墨色 ⑤黄金色 各色の斑点を付けてもらっていました。ところが!水槽に投影すると、金魚は小さいし、水槽に映せる画質は粗いしで斑点が全然見えない。これは……金魚ごと色を変えるしかない。そうして大きな変更でしたが、色々ラリーして調整して、最終的に出来上がったのは本番当日の朝。ゲネの時は斑点verの金魚だったので、ぶっつけ本番でした。うわぁ!


⑦青紫のリンドウ

 ザネリとカムパネルラの別れるところで、青紫のリンドウの花が、じつはひっそりと、水槽に咲いていたんです。リンドウは青ですが、春さんと私の頭の中にはなぜか「青紫色」のイメージがありました。私は恐らく、昨年行った宮沢賢治記念館のイメージがあったのかもしれません。いつかみんなで行きたいな。


⑧輸血

 これ……実を言うと、当初私がオーダーを取り違えていて……

 ゲネ前の段階で唯一、私も確認が甘かった素材。当初はシナプスに血が通っていくものを作っていて、ゲネ前日まではそれでした。ゲネの前夜、春さんから突然のLINE。根本的に違うものが出来上がっているので修正できるかどうか……で言うかどうか迷った末の、だと思います。自分が演出だったらすごく心がぎゅって締め付けられながらLINEするとおもいます。ゲネ前の演出にそんな思いをさせてしまって本当にすみませんでした。陳謝です。

 ただ、そこでまだ舞えるのが私です。信じて言ってくれてありがとうございました。点滴のフリー素材を探してきて、モノクロにする。シナプスの時にやりましたね。そして今回は、管の下地を作るためにエッジ検出を入れて、そこにグローエフェクトをかけるのが1枚。そもそもの色を赤に変えるのを2枚。赤に変えた2枚のうち、1枚は管に血が通っていくのをアニメーション。もう1枚は、血が既に通っているところのみを赤くして、アニメーションがつく部分は赤色を消す。こうして、ゲネ当日に差替えが間に合いました。今公演の映像を制作をするにあたって、腕を上げたおかげで、土壇場でも対応できました。結果オーライ。


【公演の感想】

 春さん、篠田さん、野口くん以外のメンバーとはお初にお目に掛かって、からの2日や3日なんかで解散だったんですが……こんな外様の私を受け入れて下さって本当に……と打ち上げで言ったら、どうやら逆で、私が馴染む力が強かったそうです。もしかしたらもっと前からみんなと演劇をしていたのかも知れない……という存在しない記憶をみんなの中に生成できたら勝ちです。こういうところが私の長所だから……私ったら……

 いいえ。自惚れるのはそこら辺で仕舞いにしましょう。

 真面目な話、我々はみんな「春さんと演劇がしたい」という共通のプロトコルで繋がれたからだと思います。我々は仲間だ。結局、ついていきたいと思う人の元に、人って集まってくるんだと思うんです。トートロジーですが、本当にトートロジー以外のなにものでもなくって。持って生まれた素質とか、尊敬される才能とか、そういうのもあるかも知れないけれどそれ以上に、「この人と一緒に居たい、何かしたい」と思わせる力、それこそが人の魅力なんです。きっとね。だから人を集めたが勝ちなんです。そのあとうまくいかないこと、無理を強いることがあったって、「こいつのためにやろうと思わせる力」、そこが一番大事なんです。そうしたら最後はいつだって良いモノができる。

 ソワレなんか、役者のみんなすごかったよ。オペ席から見てたのに意識をオペ卓から舞台に引っ張られてたもん。きっかけの台詞が近づいて我に返り、一通り終わったらまた舞台に意識が吸い込まれていく。こんなオペ体験は初めてでした。


 演劇ユニット・ロカイユは、もしかしたらこのユニット自体が一期一会だったかもしれない。だけど、これからまたみんなに会える気がする。会いたい。そう心から思える座組って希有です。私の中で美しい夢として、心のノートに刻まれています。





 いつまでも絶えることなく 友だちでいよう

 今日の日はさようなら また会う日まで








P.S.

 さて。しっとりとした別れの挨拶だと思ったでしょう。にっきにP.S.って何やねん。お手紙だったのかもしれない。


 こんだけ長いにっきをここまで読んだあなたは、わたし、いや我々のことが大好きすぎますね。そんなあなたに伝えたいブレーキングニュース。


 春さんと私は、もう一度組みます!!!!!

 続いていく私たちの冒険に、乞うご期待!!!!!