菅野翔唯、清水不在のU18を制覇。注目の対決は来季へ
2025年10月18日、U18男子100メートル決勝で、東農大二高2年の菅野翔唯(群馬)が10秒39(+0.3)を記録し優勝した。大会は三重交通Gスポーツの杜伊勢陸上競技場で開催され、菅野は9月末のU20日本選手権に続く今季2つ目の全国タイトルを手にした。
わずか1か月の間にU20日本選手権、国体、そして今大会と3連戦をこなした菅野は、疲労の色を隠さなかった。「もう連戦で疲れもあったし、あれが限界かな」とレース後に語り、右膝裏の筋を痛めていたことも明かした。痛みを抱えながらも「我慢して走った」と振り返る。スタートは予選よりも良かったが、中盤以降はインターハイや自己ベストを出した時ほどの伸びがなかったという。「中盤から後半がうまく走れなかった。今の全力があれだった」と悔しさを滲ませた。
ライバルの清水空跳(星稜高2年・石川)が予選で10秒37(-0.4)の大会タイ記録を出しながら決勝を棄権した中での勝利だったが、菅野は自身の記録に満足していない。「10秒3台じゃ全国ではもう1位を狙えるレベルじゃない」と語り、現状に危機感を示した。
清水については「国体終わってからもう出ないって言ってたけど、なんか昨日出たくなったから出るみたいな。でも予選だけって言ってたんで、昨日の時点で決めたらしい」と明かした。清水が棄権したことで、決勝は事実上の独走となったが、菅野は「1人になって申し訳なかった」と複雑な心境を見せた。
今季の自己ベストは10秒22。更新を狙って臨んだが思うように伸ばせなかった。「もっといけると思っていたけど、なかなか更新できずに終わってしまった」とシーズンを振り返る。来季は「10秒0台を出して、1台を安定して出せるようにしたい」と目標を掲げる。
冬季練習では「後半の詰め」を課題に据える。長い距離が苦手だと自覚しており、「もっと走り込んで後半も強くして、前半も強くして、もう負けない高校生になりたい」と意気込む。200メートルにも挑戦するが、それもあくまで100メートルの強化のためだ。「上位に入れるようなタイムを出して、100のために走りたい」と話す。
今季の広島インターハイでは、自身が「完璧」と評する走りを見せた。「中盤から後半まで力まずに走れて設置もうまくいった。あの走りを再現できずに悔しい」と語り、その再現が来季のテーマとなる。
陸上界全体の注目度の高まりについても、菅野は実感を口にする。「結構話しかけられたりして写真とかもお願いされる。そういうのがいいモチベーションになって、もっと速くなってもっと有名になって、もっと人が集まってくれたらうれしい」と笑う。一方で、「お客さんも多かったけど、清水選手との対決を見に来た人が多かったと思う。自分1人になってタイムも渋かったので、来てもらって申し訳ないなとは思った」と、ファンへの気遣いも忘れない。
長いシーズンを走り抜いた菅野は「これで一旦休んで、またトレーニングに戻りたい」と語り、さらなる飛躍へ向けて静かにオフに入った。
取材:TomoyukiNishikawa/SportsPressJP