略式起訴って何?−刑法・刑事事件をわかりやすく−
こんにちは。リーガルライターの法崎ゆいです。
このシリーズでは、刑事事件に関する用語や犯罪の基本などについて、なるべく簡単に、簡潔に、解説しています。
今回は「略式起訴」についてです。
略式起訴とは
略式起訴(りゃくしききそ)とは、かみくだいていうと、軽い事件を速やかに終わらせるために、有罪になるであろう事件でも、公開の刑事裁判を開かずに済ませる特別な方法です。
(そもそも「起訴」って何だっけ?という方は、「起訴って何?−刑法・刑事事件をわかりやすく−」の記事で書いたので、こちらもぜひ読んでみてくださいね)
通常、起訴されると裁判所で公開の審理が行われます。そして、証拠や証言に基づいて有罪・無罪が判断されます。
でも、略式起訴では、裁判官が書面だけで判断して、罰金や科料の額を決めるんです。
つまり、公開の裁判=口頭でのやりとりや審理を省き、書面で処分を言い渡すという感じです。
略式起訴となる条件
略式起訴ができるのは、比較的、軽い事件に限られます。たとえば、罰金や科料で済む程度の傷害や窃盗などが対象になることが多いです。刑務所に入る拘禁刑が想定される事件の場合は、使えません。
軽めの事件を扱う、簡易裁判所の管轄であることも条件の1つです。
それから、被疑者本人がこの手続きに「異議がない」ことも略式起訴の条件です。
なぜ被疑者本人の意思が必要かというと、略式起訴は有罪を前提に処理されるからです。略式起訴で罰金や科料が決まれば、前科がついてしまいます。
「やっていない」「事実と違う」と、反論できないわけです。そのため、そもそも本人が罪を認めて裁判を望まない場合に限って略式起訴を選択できることになっています。
ただし、略式起訴の結果に異議を申し立てれば正式裁判に進むことは自体はできます。
略式起訴の特徴
略式起訴の最大の特徴は、早く処分が終わることです。
略式起訴で決められた罰金や科料を期限までに支払えば刑の執行は完了します。通常の刑事裁判に比べると非常に早く終わる手続きなんですね。
でも、 “早く終わる=軽く済む”とは限りません。略式起訴は裁判を省く代わりに有罪が確定する手続きでもありますし、前科がつきます。
処分の内容を理解せずに同意してしまうと、後で取り返しがつかないこともあります。
逮捕されて略式起訴の話が出たら、自分で判断して署名せずに弁護士とよく相談してから進めることが大切です。
まとめ
早く処分が終わるからといって、必ずしも略式起訴が適しているわけではありません。示談の成立や反省の伝え方によっては、略式起訴ではなく不起訴になることもありえます。
そのため、まずは弁護士の助言を受けて、どう対応するのが適切かを相談することが大切です。
ちなみに、不起訴については「不起訴って何?−刑法・刑事事件をわかりやすく−」もご覧ください。